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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第百七十六話


「……条件? なんだ? また、姑息な手を使おうとでもいうのか?」

 同等の立場になったと考えているドラネスは嫌な笑みを浮かべながらアタルのことを中傷する。

「その前に確認しておくが、対決した結果俺たちが負けた場合はどうなるんだ?」

 まさか、ただ強さを示したいだけではあるまいと思い、すっと目を細めたアタルはドラネスに問いかける。


「お前たちが負けたら、虚偽の報告をして王を筆頭に我々を騙した罪を償ってもらおう」

「具体的には?」

 成り行きを内心緊張しながら見守る周囲。淡々を聞き返すアタルの質問に、ドラネスがしばし考え込む。


「ふーむ、これだけの大ごとになっていることを考えると、懲役刑もしくは鉱山作業に数年従事が妥当ではないか。盗賊団の仲間の嫌疑もかかっているわけだからな」

 アタルたちをあざ笑うかのようなドラネスの発言に謁見の間はひと際大きくざわついた。


 アタルたちは自分たちから捕まえたことを喧伝したわけではない。バリム、そして王が来るよう依頼したため、ここにやってきた。それがいつの間にか罪人扱いになっている。

 そんなことは普通に考えればありえないことであり、それを誰かが指摘するのも時間の問題であった。


「了解した」

 しかし、その前にアタルが飄々とした態度で返事をする。近くにいたキャロやバルキアスも黙って頷く。

「わかってもらえたなら幸いだ。それでは早速騎士団の修練場に……」

 ドラネスはアタルの了解をとれたならと、少しでも油断するとニヤリと緩んでしまいそうになる表情を抑えつつ、決闘する場所へと案内しようとする。


「ちょっと待ってくれ、それはないんじゃないか?」

 だがそれはアタルの言葉によって止められる。ざわめいていた謁見の間が彼の一言で静まり返った。

「……なに?」

 何の問題があるんだと言わんばかりにドラネスの片方の眉がピクリと動く。


「俺は……いや、俺たちは盗賊団のやつらを連行してもらうように依頼した。犯罪者を捕まえて、ほうっておくわけにはいかないからな。そして、バリムが来てやつらを連行してくれた。ここまでで数日かかっている」

 何を言いたいのかわからないドラネスは顔をしかめながらも真意を探るようにアタルの話へ耳を傾ける。


「俺たちは本来旅の途中で、彼から来て欲しいと要望を受けたため、この街に戻ってきた。更に、報告だけで済むかと思ったのに、こんな形で王との謁見なんて騒ぎになった。つまり、こうなったのはそちら側の言うとおりにしたからだ」

 肩を竦めてため息交じりに語るアタルの言葉を聞いて、列席している者の中には怒りを覚える者、確かにそのとおりだと納得する者など、反応は様々だった。


「……何が言いたい」

 冷たく言い放ったドラネスはアタルが結局のところ何を言いたいのか、それが読めずに苛立っている。

「俺たちが負けたら罪人、だったら俺たちが勝ったらあらぬ嫌疑をかけたあんたたちにも何かしてもらうのが筋というもんじゃないのか?」

 それを聞いたドラネスは驚きの表情を見せる。彼の内心では煮えたぎる怒りがこみあげてきていた。


「な、何を!?」

「ふむ、そうじゃの。難癖をつけられた側は負ければ罪人落ちというデメリットを抱えている。それを提案した側だけ何もなしでは納得がいかんだろう」

 アタルの問いかけに対し、低く唸るように謁見の間に響くのは王の言葉、これにはドラネスも反論することはできない。ドラネスは苦虫を噛み潰したように顔をしかめて押し黙った。


「アタル、お主は何を望む?」

「……そうですね、俺たちが満足する品物を用意してほしいです」

 しばし考えたのにアタルはにっこりと笑みを浮かべてそう答える。


「はっ、満足するものだと? そんなもの金をせびりたいだけの口実だろ!」

 金目当ての貧乏冒険者、それが吐き捨てるように叫んだドラネスのアタルたちに対する評価だった。

「いや、金はいらない。それなりには持っているからな。ちなみに言っておくと、武器も防具もいらない。もちろん家や土地なんてものをもらっても困るし、人もいらない。あとは知恵を巡らしてくれ」

 まるでなぞかけのようなアタルの言葉に、ほとんどの人間がポカーンとしていた。


「ふ、ふざけるな! だったら何を用意しろと言うんだ!」

 だが当のドラネスは怒りに満ちている。彼は回りくどいことが我慢ならないと大声を出す。

「負けなければいいだけだろ? ……なんだったら、懲役刑でも鉱山従事でも構わないんだぞ? それを品物を用意するだけでいいと言っているんだ。破格の条件だと思わないか? いや、そもそもあんたが正しければ負けるのは俺たちなんだからどんな条件でも構わないだろ?」


 確かにアタルの言うとおりではあったが、それでもやはりドラネスは不満があるようで、アタルのことをきつく睨み付けている。

「……ドラネス、お前は勝つ自信がないのか?」

 そんな彼に視線を鋭くした王が静かに尋ねる。


「い、いえ、決してそのようなことは!! 必ず王に勝利を捧げます!」

「なら、良いではないか。彼の条件を飲んでも」

「は、はい……」

 王にそう言われては飲むしかない。そんな心境で不承不承ながらドラネスは頷き、頭を下げた。


「そうそう、俺たちには旅に出るという目的があるから、品物をすぐに用意できないなら滞在費用はそっちでもってもらうからな。……言っておくが、本当に納得できる物を用意できたらそれに難癖はつけることはないから安心してくれ」

 相手の先を塞ぐようなアタルの言葉に、何も言えないドラネスは悔しさから歯ぎしりをする。


「はっはっは、良いだろう。お主らが勝った場合、ドラネスが物を用意できるまでの間の滞在費はわしが出してやる。街一番の宿に泊まると良い」

 大きく快活に笑う王は当然アタルたちが勝つだろうと予想していた。それでもドラネスの愚行を止めないのは鼻っ柱の強い彼に、一度壁にぶち当たってもらいたいという思いがあったからだ。


「っ……お前たちが宿に泊まることはない! さあ、条件も決まったんだ修練場に行くぞ!」

 大股で苛立ちを隠さずに早足で進むドラネスの案内にアタルたちはついていくことにする。もちろん王たちも観覧するつもりであるため、ちょっとした大移動になっていた。


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