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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第百五十七話


 ドワーフについて思い出せる範囲でアタルが話していくと、ブラウンも徐々にアタルたちに心を許し始めたようだった。

「……それで、クライブからこれを預かってきたんだが」

 話がひと段落したところで、頃合いかと判断したアタルはクライブから預かった手紙をブラウンに手渡した。


「ふむ、手紙か……なになに……ほうほう、なるほどな……はあ!? なんだって!」

 手紙を読むブラウンの表情は真面目な表情から、懐かしむ表情、疑問の表情、そして驚きの表情へと変わっていった。読み進めるごとに手紙とブラウンの距離がくっつくんじゃないかと思うくらいに接近する。


 手紙を読み終えたブラウンはガバッと顔をあげる。

「持ってるのか?」

 それだけの問いだったが、迷うことなくアタルは頷く。何を、と聞かずとも素材のことを言っていることはわかっていた。職人の顔色を変えるほどの内容、それは扱う装備や素材であるだろうことは容易に想像できる。


「キャロ」

 アタルに名前を呼ばれたキャロは笑顔で頷くとぱっと立ち上がる。馬車から降りる際に素材を持ってきており、部屋の隅に布をかけて置いてあった。

 それを両手に抱えて持ち上げると、テーブルの上へと運んでくる。


「これがその素材だ」

 目線でキャロに感謝を伝えると、アタルはぱっと布を取り払って素材をブラウンに見せる。

「こ、これは、すごい! この触り心地……この硬度! これなら色々と装備が作れるぞ! 盾、鎧、武器にも使えるかもしれない!」

 驚き一杯に表情を満たしたブラウンは玄武の甲羅を手にして想像力を爆発させていた。興奮交じりに息荒く甲羅を撫でまわしている。


「……ごほん」

 あまりの彼の興奮ぶりにアタルはわざとらしく咳払いをする。

「はっ! ……す、すまないな。ついつい素材に興奮してしまった……念のため確認するが、この素材の主を倒したのはアタルとキャロなのか?」

 二人の実力を確認するようにブラウンが質問してくる。品定めするような視線にもアタルたちは意に介さなかった。


「信じられないのはわかるが、俺とキャロ、それとバルの三人で倒したのは事実だ。俺たち以外でこの素材を持っているのはクライブたちだけだろうな」

 静かな口調でのアタルの回答にブラウンは首を横に振る。

「いやいや、疑っているわけじゃない。そういうわけじゃないんだが、これほど強固な装甲を持つ魔物の素材だから一応確認したくなってしまったんだ。すまない」


 途中で自分でも失礼なことを聞いたと思ったブラウンは真摯に頭を下げる。

「いや、気にしないでいいさ。俺たちの装備を見ても強くなさそうだし、見た目も強そうってわけじゃないからな」

 肩を竦めたアタルは自分たちの装備を省みてあっけらかんと返事をした。いまの二人は最低限の装備でいるため、本気の装備ではなかった。


「それよりも、これを素材に俺たちの装備を作ってもらいたいんだが……できるか? もちろん報酬は見合うだけの金額を支払うつもりだ」

 アタルの真剣な眼差しを受けたブラウンは再び首を横に振った。

「ダメ、ということか?」

 クライブの紹介であるから、その実力を信じられると思っていたが、こうあっけなく断られては職人を探すところから始めなければならなかった。アタルたちの表情が曇る。


「いやいや、そういうことじゃない! すまない、わかりづらかったな。……報酬はいらない、それよりもこの素材を使っての装備をぜひ作らせてもらいたい!」

 慌てたように取り繕ったブラウンは職人としてのプライドから、この素材を使って良いものを作りたいと心の底から思っているようだった。


「おぉ! それは助かる、実はこの甲羅以外にも素材があるんだが……」

 ブラウンからやる気の感じられる発言を受けたアタルはぱっと表情を明るくして立ち上がると、部屋の隅に置かれた別の袋を持ってくる。

「これなんだが」

 袋からごろごろと出されたそれらは玄武の爪、牙、骨などだった。


「おー! その魔物の別の部位か! ……うむ、うむ、これも強度が高いな、これなら武器を作るのに使えるな!」

 更に心くすぐられる素材が出てきたことで、ブラウンの職人魂はより一層刺激され、新たなアイデアが浮かんできていた。


「使えるなら、これも使ってくれて構わない。俺たちの武器と防具を作ってほしい」

「承知した!」

 改めて依頼を口にしたアタル、それに対してやる気に満ちた表情で頷いたブラウンは力強く胸をドンッと叩いてその依頼を請け負うこととなった。





「その前にいくつか説明が必要だな。俺は鍛冶職人だが、主に防具を専門に取り扱っている。だから、武器は俺が信頼している職人に頼もうと考えているんだが……構わないか?」

「あぁ、俺たちにはブラウン以外のツテはないから、紹介してくれるならむしろこちらからお願いしたいくらいだ」

 安心したようにブラウンは頷くと、棚まで移動して紙とペンとメジャーを取り出してきた。


「それじゃあ、まずは二人の希望を聞こう。どういった装備を求めているのか。防御力重視なのか、動きやすさなのか、こういう部分があると邪魔になるとか。なんでもいい、教えてくれ」

 すっかり職人のスイッチが入ったブラウンによる聞き取り調査が始まる。


 装備についてどこまで指定ができるのか、どんなことを聞きたいのかあまりわからないアタルたちだったが、彼らが答えやすいようにブラウンが質問することで情報が固まっていく。

 そして、装備はアタルとキャロの二人だけでなく、バルキアスの分も用意されることとなった。


 しばらく聞き取り調査が進み、これで十分だろうというところでブラウンが手にしたのはメジャーだった。


「次に二人のサイズをはからせてもらいたい。サイズ補正の魔法はあとで施すつもりだが、それでも二人の基本値を知っていないと万が一合わない可能性があるんでな」

 装備者の身体に合わせて変化するサイズ補正の機能は、あまりにもサイズが違い過ぎると効果が発動しない場合があるため、それを回避したかったようだ。


「アタルとバルキアスの分は俺が計ろう、キャロのサイズはアタルが計ってくれ」

 さすがに女性の身体のサイズを計測するのは憚られたため、アタルに任せることにする。これまで二人のやりとりを見て、任せても大丈夫だろうとブラウンは感じていた。キャロはその心遣いに嬉しさを感じ、笑顔になる。


「わかった、それじゃ俺のサイズを計ってくれ。それを参考にキャロのサイズを計測することにしよう」

 こうして、アタルたちのサイズ計測が始まった。


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