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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第百五十五話


 馬車に乗った三人はエルフの国を出発する。

 なぜか門にはギルドマスターと、受付のクライブの二人が見送りに来るというVIP待遇だった。彼らとは挨拶もほどほどに別れた。

「さて、これでやっと巨人の国に出発するわけだが……順調だな」

 思わぬ寄り道をして、思わぬ強敵と戦うことになったアタルたちだったが、目的の国に徐々に近づいていることを考えると順調という言葉は正しかった。


「そうですねっ、新しい国にいけるって考えるとすごくわくわくします!」

 まだ見ぬ国、まだ見ぬ種族、それはキャロの好奇心を刺激していた。

「俺も楽しみだ。巨人ってどんくらいでっかいんだろうな」

 アタルが過去に読んだ物語で巨人という種が出てくるものはあった。しかし、大抵の場合、敵として描かれていた。


 しかし、この世界では一国を築き、世界に住まう一つの種族として存在している。きっと友好関係を築くこともできるだろうと期待を抱くも同時に不安も沸く。

「歩いていて踏まれたら怖いな……」

『なにそれ、怖い!』

 三人の中で最も身体の小さいバルキアスはまだ見ぬ巨人族に恐怖を抱いていた。アタルの言葉にびくっと怯えるとキャロの傍に隠れるように寄り添った。


「大丈夫です、バル君は私が抱えて移動しますから!」

 励ますようにキャロは震えるバルキアスの頭を優しく撫でる。

『キャロさまー』

 撫でられたバルキアスはとろけたように緊張を解くと、主人であるキャロに対して喉を鳴らさんばかりの勢いで甘えていた。


「ははっ、行くのが楽しみだな」

 御者をしているアタルはキャロたちのやりとりを見て楽しそうに笑い、そして進行方向へ視線を向けると、まだ見ぬ巨人の国へ思いをはせていた。






 エルフの国から巨人の国までの道中はこれといった魔物は現れず、静かな道中だった。途中、盗賊が旅人を襲う場面に遭遇したが、それらはアタルたちの活躍によってあっさりと撃退されることとなった。

「魔物がいないっていうのに、どこにでも盗賊はいるもんなんだな……」

 ため息交じりのアタルは盗賊たちの浅ましさに呆れていた。


「仕事がないのでしょうか……?」

 このあたりは既に巨人の国の領内であり、人族には仕事がない可能性もあった。武器の手入れをしつつ、キャロが思い当たることをあげる。

「国によって色々問題があるのかもしれないな」

 エルフの国では種族問題で、一部の人間しか依頼を受けられないということがあった。これは他の仕事などにも共通しており、エルフ以外の種族が暮らすには暮らしづらい場所であった。きっとそういう問題はこの先の各国で感じられる問題なのかもしれないとアタルは想像した。





「お、そろそろ見えてきたみたいだぞ」

 それからしばらく馬車を走らせると、アタルが前方を指し示す先に巨人の国の都市グラザイアが見えてきた。

「わぁ……ここからでもサイズがわかりますねっ」

 ここから門までかなりの距離があるが、遠くに見えた門の前にある馬車の大きさから、それらが巨大なものであることがわかった。


「ありゃでかいな……」

 これまでに寄った街も門は巨大なものが多かったが、それと比較しても驚いてしまうほどの大きさだった。感心するようにアタルが呟く。

『あの魔物よりも大きいね!』

 バルキアスは基準が少ないため、これまでに見た巨大なもののひとつである玄武を比較対象にしていた。


「門があのサイズってことは……玄武とまともにやりあえる大きさかもな」

 アタルは目をこらして門を見てみるが、巨人族らしき人の姿はいまだ見えなかった。魔眼を使用してもそれは変わらない。

「いませんね……」

 キャロも目を細めたりしながら門の周囲を眺めていたが、やはりアタルたちと同サイズの人間しか見当たらなかった。


「場所はあってるはずなんだけどな……」

 首を傾げつつ、アタルがクライブにもらった地図を確認するが、やはり前方に見える都市がグラザイアであることはあっているようだった。

「……まずは入場してから考えるか」

 徐々に近づいてくる巨大な門を見て、すぐにわかることに考えを巡らせては仕方がないと思ったアタルはひとまず考えを放棄した。





 遠くに見えていた巨大な門が目の前に迫るほど進んだところで、一行は門の入り口付近に辿りついた。

「改めて近くで見るとやっぱりでかいなあ」

「大きいですねっ」

『おっきいねえ!』

 まるで天に向かって伸びるかのように圧倒的な存在感を放つ巨大な門を馬車を停めた三人は見上げていた。


「みなさん、この国は初めてですか?」

 アタルたちに気さくに話かけてきたのは、衛兵の一人だった。穏やかな人当たりのよい笑顔を浮かべている。

「あぁ、これほどのサイズだと門だけで圧倒されるな」

 視線を衛兵に戻したアタルの素直な感想を聞いて彼は嬉しそうに顔をほころばせる。


「そうでしょう、そうでしょう。私も他国からの流入者ですが、初めて見た時は圧倒されたものです」

 衛兵はうんうんと頷きながら、自分の経験を話している。アタルの感想を聞いて昔の自分自身を思い出しているようだった。


「一つ聞きたいんだが、衛兵の中には巨人族はいないのか?」

 この質問にも衛兵は笑顔になる。同様の疑問を持った経験があるためだった。

「わかりますわかります、では説明いたしましょう。こちらの門は巨人族以外のための門なのです。人族、エルフ族、獣人族などですね。巨人族用の門はこちらを壁沿いに進んだところにあります」

 衛兵は向かって左方向を指し示した。するとそちらの方では確かに身体の大きな巨人族と思われる人影が見える。


「なるほどな、それで巨人族には巨人族が対応して、それ以外はあんたみたいに人族とかが対応するってことか」

 納得したようなアタルの回答を聞いて、衛兵は満足そうに頷く。


「そのとおりです。ご理解が早いようで助かります。それでは、入場手続きをしましょうか。こちらへどうぞ」

 話の自然な流れでそのまま手続きをしている場所へと案内された。


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