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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第百四十話


 魔物が一体何者なのか? それは見当がついたアタルだったが、だからといって状況が好転したわけではなく、表情はより厳しいものになっていた。

「俺の知識があっているのか、あっていたとしてこいつにもそれが適応されるかわからない、だが話をするから戦いながら聞いてくれ」

 

 キャロとバルキアスは玄武の動きを注視しながら、アタルに対して頷く。

「俺のいたところで似たやつの話を聞いたことがある。そいつは玄武と呼ばれる魔物……というか、神獣とか呼ばれるものだ」

 アタルの言う神獣という言葉にキャロは驚く。フェンリルであるバルキアスと同じ神獣。この短期間に立て続けに神獣と出くわすとはそれこそ、相当低い確率だったからだ。


「水と北の方角を司る神獣で、弱点は雷であることが多く、その他には炎が弱点のこともあったはずだ」

 それが今回の玄武にも通じるかはわからないが、アタルは知る限りの情報を伝えていく。


「亀の頭と、蛇の尻尾……今回は竜の頭みたいだがどちらもが玄武であって、どちらかがやられてももう片方が残っていれば大丈夫だったと思う」

 どちらか一方が本体であればそちらに専念できるが、どちらも本体となれば同時に相手取る必要があった。


「なら、私はこちらの頭と戦います。バル君は尻尾の竜の頭と戦って下さい!」

 その話を聞いたキャロは同時に戦うことを判断し、バルキアスと二手に分かれて戦う決断をする。通じ合うように二人がそれぞれの標的に向かって飛び出していく。

「俺がサポートする!」

 アタルはキャロとバルキアスに身体強化弾を撃ち込み、更には亀と竜の頭に強通常弾を数発ずつ放っていく。


 亀は頭を甲羅の中に引っ込めて、竜は素早い動きでそれを回避した。

「あの甲羅、やっかいだな……」

 竜の動きが素早いのは想定していたが、亀らしい動きまでされると攻撃が難しくなると考えていた。思わぬ動きに舌打ちをうちそうになる。


「力が漲りますっ……これなら、いける!」

 背中に走った衝撃ののちに漲る力そのままに、キャロは引っ込んだ亀の頭が再び姿を現したのに合わせて剣を振り下ろした。

「ガアアアア!」

 しかし、その攻撃は硬い者同士がぶつかり合った特有の音を立てて強く弾かれてしまう。


「ぐうっ!」

 思っていた手ごたえと違ったため、キャロは腕に襲いかかる衝撃に呻いてしまった。

 出したと思った頭は再び甲羅の中に勢い良く戻ってしまい、キャロの振るった剣は甲羅を斬りつける結果になっていたのだ。


「あの頭はなかなかやっかいだが、引っ込めさせている間は竜のほうに集中できそうだ」

 それでもなんとか食らいつくようにキャロは亀とやりあっており、一進一退の攻防が続いていた。


『ガルルルルル!』

 その一方でバルキアスは竜の頭と対峙している。どちらも動きが素早く、決定的な攻撃を当てることは互いにできずにいる。


 均衡を崩すために、アタルが弾丸を竜めがけて放っていく。その弾丸は頭部はもちろん、竜の胴体と頭の付け根を狙っていた。先ほどまでの攻撃は頭部をピンポイントで狙ったために避けられてしまったが、これならどうだとアタルは同時に複数個所を狙う。


「グルルル」

 竜は低く声をあげると、自身に襲い来る三つの弾丸を飲み込んでいく。竜の喉がごくりと音をたてると、アタルを見てにやりと笑った、ように見えた。


「まさか、食うって選択肢があるとは思わなかった……が、隙だらけだ」

 すっかりアタルに注意が向いた竜の頭だったが、それをバルキアスは見逃さなかった。頭のすぐ下、首と呼べる部位に素早く飛び出すと、バルキアスは鋭い歯をたてて強く噛みついていた。


「ギャアアアアアア!」

 表皮を突き破って食らいつくバルキアスの猛攻に、まるで人の叫び声のような声を出しながら竜は必死に身体を振り、バルキアスを引きはがそうとする。しかし、噛みついた瞬間、バルキアスの牙は伸びて更に奥深くに刺さっていた。

『(離さないぞ!)』

 声にはならなかったが、唸りながら食らいつくバルキアスの決意は固かった。


「バル、いいぞ! これなら!」

 これで竜の頭の注意は完全にバルキアスにだけ向いていた。今がチャンスだとアタルは弾丸を準備する。

 玄武の弱点は恐らく雷属性、しかしそれではバルキアスにまでダメージが及んでしまう。そこでアタルは別の弾丸を選択する。


「……いけ」

 ぼそりと呟いて放たれた弾丸、それは竜の頭の根元、つまり尻尾の付け根に弾丸を撃ち込む。頭部はバルキアスを振りほどくことに集中しているため、無防備なそこへ全弾命中する。


「グアアアアアアアアアアアアアア!」

 襲い来る新たな痛みに竜は先ほどよりも一層大きな声を出していた。そして、痛みにもがき苛立ちながら自らの身体を地面に思い切り叩きつけることでバルキアスを引きはがそうとする。


『ぐあああああ!』

 捨て身の竜の行動にさすがのバルキアスも竜の胴体に押しつぶされて歯を突き立てたままではいられず、引きはがされて勢いそのままに吹き飛んでしまった。


「バル!」

 背中越しにアタルの声を聞いてバルキアスに何かが起こったのだとキャロは理解するが、焦る胸の内を押さえつけ、歯を食いしばって目の前の亀の頭と対峙し続ける。


『が、がはっ……だ、だいじょ……』

 吹き飛ばされた先で震えながら起き上がろうとしたバルキアスはそこまで言うとぐったりと倒れ、意識を失ってしまう。その瞬間、アタルはカッと頭に血が上るのを感じた。しかし、数秒だけ目を瞑って深呼吸をする。


「すー、はー……熱くなるな……相手は手負いだ。焦るな」

 そう自分に言い聞かせてアタルは平静を無理やり保とうとする。大切な仲間が傷つけられたといっても、我を失ってはダメだと気を強く持った。

「だが、許すわけにはいかないがな」

 冷静さを取り戻したアタルは照準を竜の頭に合わせると次々に弾丸を放った。その数十発。


 なんとかバルキアスを引きはがしたものの、満身創痍の竜の頭はアタルの弾を全て喰らってしまう。大きな音を立てて地に沈んだ竜を見てアタルはうっすらと笑みを浮かべる。

「仇はとったぞ、バル」

 もしバルキアスが目覚めていれば、まだ死んでないよ! と言っていただろう。


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