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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第百十三話


 翌日 冒険者ギルドにて


「依頼を受けるために来た冒険者のアタルとキャロなんだけど……」

 いると思われたミランの姿が受付になかったため、少し硬い口調でアタルが別の受付職員へと声をかける。

「は、はい! アタルさんですね、話は聞いています。来たらギルドマスタールームに通すようにとのことですので、こちらへどうぞ」

 既に指示を受けている受付職員はアタルたちをカウンターの中に入れると、そのままギルドマスターの部屋へと案内していく。


「……行くか」

 ギルドマスターの部屋に呼ばれているということに一抹の不安を感じていたアタルだったが、立ち止まっているわけにもいかないため、みんなに声をかけて階段を上がっていく。


 部屋の中に通されるとミランがブレンダを不満げに睨み付けており、ブレンダはその視線を受け流してにっこりとアタルたちを見ていた。

「いらっしゃいませ、アタルさん、キャロさん。今回は依頼を受けてくれるようで助かりました」


 それを聞いたアタルはミランをチラリと見た。視線を受けてミランはゆっくりと横に首を振ってうなだれる。アタルはそれを見て状況を把握していた。

「あぁ、今回だけな。知ってると思うが俺たちは金に困っていない、だからこんな依頼を受ける必要はない」

 昨日の夜、アタルがミランに言ったことを全く聞き入れなかったと思われるため、アタルは先手を打っておくこととする。


「そ、それは……」

 困ります。そうブレンダは言いたかったが、ギルドに所属はしていても冒険者はそもそも自由であり、つなぎとめられるものではなかったため、そう口にするのは憚られた。


「もし、今度新しく依頼をしたいときは、それ相応の報酬を用意してくれ。今回はミランの顔をたてて受けることにしたが……次はない」

 きっぱりと言うアタルにブレンダは二の句を告げることができなくなっていた。彼女自身も今回は無理を言っているのをわかっているのだろう。


「アタルさん、封印球をお渡ししますね。よろしくお願いします」

 ショックを受けている母を放置して、ミランはアタルに封印球を手渡すと一礼する。

「あぁ、任せておけ。昨日は遅かったからちゃんと聞いていなかったが、俺たちはどこの誰にこれを渡せばいいんだ?」


 アタルの質問を受けてミランは一枚の手紙を取り出した。

「昨日も軽く伝えましたが、ここから北に向かうと街があります。プラタの街というんですが、そこの教会に元Sランク冒険者のギガイアさんという方がいらっしゃいまして、こちらの手紙を渡してもらって、母……ブレンダの名前を出してもらえば話は進むと思います」


「ギガイアか、なんか強そうな名前だな……とりあえずわかった。街はどれくらい離れているんだ?」

 この世界の地理に詳しくないため、今度はプラタの街についての質問をミランにする。

「えっと、馬車で順調にいけば五日くらいで辿りつくと思われます。一本道ですので、迷うこともないと思いますよ」

 封印球と手紙をカバンにしまいながらアタルはミランの話を聞いていた。


「なるほどな、それじゃあ早速向かうとするか。ちなみに、この依頼の完了報告はどうすればいいんだ?」

「あっ、そうでしたね。それでは下で依頼の受諾を行いましょう。ギガイアさんにアイテムを受け取った際に受領のサインをもらって下さい。それをプラタの街、もしくはここでもいいので、どちらかの冒険者ギルドに持っていってもらえば報告完了になります」

 下へ行くついでにこのやりとりをしながらアタルたちは部屋を出ていった。




 一階に降りて手続きをしていると、焦ったような早足でブレンダが降りてくる。

「ギガイアにはよろしく伝えて下さい。それと、くれぐれも直接手渡しするよう願います」

 上でのやりとりを引きずる様子をみせずにそう言ったブレンダだったが、内心では報酬の見直しをしたほうがいいのかと冷や汗をかいていた。


「了解した、それじゃミラン行ってくる」

「行ってきますねっ、ミランさん」

 アタルとキャロがミランに出立の挨拶をし、声を出すわけにいかないバルキアスとイフリアもミランに対して頷いて見せた。


「はい、お気をつけて!」

 眩しいまでの笑顔で一行を見送るミラン、そして一瞥もされなかったブレンダ。アタルたちにとって、どちらに重きをおいているのかは一目瞭然だった。ギルドマスター代理とはいえ、最初に会った時の印象が非常に悪かった。そのあともなにかといい印象をアタルたちが抱かなかったせいだろう。


「ぐぅっ……い、いってらっしゃい」

 色々思い当たることが多いことに気付いたブレンダもなんとか見送りの言葉を口にするが、アタルたちは振り返ることなく冒険者ギルドをあとにしていた。





 御者台に乗り込んだアタルは、後ろを振り向きみんなに声をかける。

「さて、それじゃ早速出発するか。わざわざ俺たちに依頼してくるくらいだ。何かあると思っていたほうがいいかもしれないな」

「魔物や盗賊でしょうか?」

 アタルの言葉にきょとんとした表情のキャロが聞き返した。


「それも一つだな。まあ、それならわかりやすくていいんだが、他にも何か起きると思っていたほうが対処しやすいだろ」

 何がという明言は避けたが、アタルは何か嫌な予感がしていた。


「わかりましたっ! バル君、イフリアさん、二人も何かあったらすぐに教えて下さい!」

『了解です!』

 キャロの指示にバルキアスは敬礼でもしそうな勢いでびしっと返事をする。


『ふむ、我はみなとは違う視野でみるとしよう』

 ゆっくりと頷いたイフリアは落ち着いた口調で返事をする。気配の察知や視覚的な警戒はキャロやバルキアスに任せたほうがいいと考え、自らは魔力的な気配に対しての警戒をすることにする。


「みんな頼もしいな。これなら俺は気を抜いていても大丈夫そうだ」

 心を許せる仲間たちの頼りがいのある言葉にアタルは笑顔でそう言うと手綱を握って、出発の合図を馬に伝えた。


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