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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第百二話


「それで、どうするんだ?」

 判断を求めるようにアタルはミランとその母親に尋ねる。何をどうするか。もちろん依頼についてだった。

「……あなたが構わないとおっしゃるのであれば、別の冒険者にもこの依頼を受けさせようと思います。Aランク以上のね」

 どうやらミランの母親は娘が見出した冒険者、アタルのことを快く思っていないようだった。


「それはいいんだが、依頼の詳細な内容から説明してもらえないか?」

 依頼の受諾条件をどうするかで母娘が争っていたため、周囲にいる冒険者も依頼の詳しい内容を知らず、皆一様にアタルの言葉に頷いていた。


「こ、これは失礼しました。依頼の説明をさせていただきますね」

 慌てて説明を始めたのはミランだった。母親も内容は把握していたが、ミランが出した依頼であるため、説明は彼女に譲ることにして黙っている。


「まずは依頼内容の前に、現在起きている問題について説明します。この街から南西に向かうと谷があります。そこはそこにしか咲かない花や、そこでしか採集できない薬草などがあります」

 アタルたちは既にこの話をミランから聞かされていた。


「……で、その谷の調査、および原因の排除をお願いしたいのです」

 同じ話だからとアタルが聞き流しているといつの間にか説明は終わったようだった。

「報酬は?」

 説明が終わったと同時に上がった声は冒険者の一人のものだった。


 それを聞いてミランは一度母親の目を見て頷く。この先は母親が話すようだ。

「そちらは私から説明しましょう。この依頼は当ギルドとしましては緊急性の高い、かつ難易度の高いものであると推測しています。実のところこれまでにも何度か調査目的で冒険者に依頼したことがあります。……しかし、そのいずれも報告があがることはありませんでした」

 一同はごくりと唾を飲みこんだ。


 報告があがってこない理由、それは一つしか考えられないためだった。

「それゆえに、今回の依頼に対する報酬は金貨千枚とします。依頼の難易度をAとしていますので、破格の報酬だと思われます」

 報酬の金額を聞いて冒険者ギルド内が一気にざわついた。


 冒険者だけでなく、内容を知らされていなかった職員たちも動揺しているようだった。

「……なあ、キャロ。それって多いのか?」

 だがアタルは金銭感覚がないにも等しく、ギルドの依頼も数回しか受けていないのでこの金額が適正なのか多いのかわからなかった。


「はい、みなさんが反応しているとおり、そして先ほどあの方がおっしゃったように破格の報酬だと思われますっ」

 キャロは以前から依頼を確認する際に報酬額も見ていたので、金貨千枚がとびぬけた報酬であることをわかっていた。


「みなさん、それだけ危険な依頼であるということをご理解いただけたと思います。その上で、依頼を受ける方はこちらにお並び下さい」

 ミランは受付に移動して、依頼の受付を開始する。

 しかし、先ほどあれだけざわめいていたはずのギルド内はしんと静まりかえり、誰一人として動き出す者はいなかった。


「それじゃ、俺たちが受けよう」

 元々受けるつもりであったため、アタルがまず一番に動く。キャロたちはその場で待っているようだ。

「ありがとうございます!」

 約束があったとはいえ、こうも揉めてしまっては受けてもらえないかと不安に思っていたミランは笑顔でアタルとキャロのパーティの依頼受付を行っていく。


「お、俺たちも受けるぞ!」

 一番手が動いたのをきっかけに、他の冒険者たちもアタルたちの後ろに並び、依頼を受けていく。中にはパーティ内で意見の統一が図れず、揉めている者たちもいた。報酬はいいものの、自ら危険に飛び込みたくはないのだろう。


「それで、依頼を受けたら早速向かってもいいのか?」

 ここへ来る前にアタルたちは既に準備を終えていたため、許可が出ればすぐに出発するつもりだった。

「そうですね。依頼の受付も早い者勝ちなので、すぐに出発していただいて大丈夫だと思います」

 大きく頷くとミランはアタルたちの出発に対して許可を出す。


 しかし、それを納得しないのは他の冒険者たち、そしてミランの母親だった。

「おいおい、俺たちの受付にわざと時間をかけてそいつらが先に出られるようにするんじゃないだろうな」

 冒険者たちからすればミランは一介のギルド職員であるため、下っ端が実績を残すために自分のお気に入りの冒険者を優遇するのではないかと考えていた。


「そうですね、出発は同時が良いでしょうね。先行して、全滅するのをみすみす許すわけにもいきませんから」

 言葉の節々にどこか棘のある様子のミランの母親だったが、アタルはどうとも思っていなかった。


「わかった。それじゃ、俺は端のほうで休ませてもらうから全員の依頼の受付が終わったら言ってくれ。それから出発なら問題はないんだろ?」

 特に気にした様子もなくアタルはそう言うと、言葉のとおりギルド内の端の何もないスペースへ移動し、座り込んで眠りについた。


「私もっ!」

 笑顔でキャロもアタルの隣に移動すると、そっとアタルにもたれかかって眠りにつく。バルキアスも同じように側に移動すると座り込む。これは、他の冒険者が手出ししないように守るためだった。

 イフリアはバルキアスの背中に乗って周囲の冒険者たちを眺めていた。


 何かしら反論があるだろうと思っていたミランの母親は堂々と眠ったアタルの行動に呆気にとられていた。どれだけ何を言っても全く意に介していない様子はとてもBランク冒険者とは思えない落ち着きだった。

「それでは、依頼の受付を続けますので冒険者のみなさんは順番にお並び下さい。職員のみなさんは受付業務を手伝って頂けたら助かります」


 ミランはアタルたちの余裕を持った行動に安心したように笑顔を浮かべて、受付業務を進めていく。周囲の職員は慌てたように手伝っていた。

 そしていまだアタルたちから目を離さないミランの母親は彼らのことをはかりかねていた。

「あの冒険者たちは……」

 ミランに対する感情からアタルたちのことを悪く言っていたが、この状況で眠ることができるアタルはもしかしたら大物なのでは? とも思い始めていた。


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