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高校時代にタイムリープした僕は、絶縁した幼馴染にただ幸せになって欲しいだけだった。  作者: ミソネタ・ドザえもん
告白をやり直す。

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大会

 マフラーを首に巻き、僕は学校への旅路に出た。曇天模様の空模様。天気予想だと、今日は雨、もしくは雪が降るらしい。

 天気が崩れないといいな。

 そんなことを考えながら、白い息を吐き、僕は学校に辿り着いた。


 今日は、球技大会当日。


 この一ヵ月、たくさんの人に練習を付き合ってもらい、今日を迎えた。

 いつか紗枝が言っていた。こんなにひたむきになった僕を見るのは初めてだと。確かに、ここまで来ると僕も、そう思わずにはいられなかった。


 いつもより少しだけ浮足立つ教室。

 チャイムが鳴ると僕達は、ショートホームルームではなく、校庭へと足を運んだ。


 開会式が始まると、どこかのクラスの男子が有頂天のままに奇声を発していた。

 それに呼応するかのように、皆からもくすぶっていた熱気があふれ出ているように、僕には見えた。


「反対のグループになったな」


 校庭の校舎側に立てかけられたボードの組み合わせ表の前で、僕は岡田君に声をかけられた。


「球技大会は二、三年も合同なんだ」


 以前行ったはずの球技大会なのに、ルールはどうしてか曖昧だった。

 多分、当時の僕からしてこのイベントはそこまで楽しめたものではなかったんだろう。だから、記憶が薄弱なのだろう。


「そうだな。先輩相手ってのは、気を使って大変だよなあ」


「負けたら、どうなる?」


「後は自由時間」


「それは……暇そうだ」


「各クラス、男女の戦績を基に順位付けがされる。だからまあ、負けたら女子の応援にでも行くんだな」


「うぅん。そっか」


 個人的には、折角あれほど練習をしたのだから、今日はずっと体を動かしていたいものだ。


「……端から負けること考えているのかよ」


 面白くなさそうに、岡田君は尋ねてきた。


「確かに。それもそうだ」


 皆まで聞かず、僕はそれに同意した。


「決勝で会おうぜ。俺達、お前達のクラスを打倒すことだけを目標に練習を重ねてきた。だから、皆お前達に勝ちたいってバチバチだ」


「随分と敵視されたんだね」


 僕は苦笑を見せた。


「まあ多分、一部はそれ以外の感情も混ざっているんだろうけどな」


 遠くを見ながら言う岡田君に、彼の言う一部が誰を指すか、僕は悟った。

 先日、大衆の前で明かされた恵美さんの想い。彼女は言った。自分が何かを成し遂げた時、想い人に秘めた気持ちを伝える、と。


 恵美さんの想い人は、板野君。


 では、何かを成し遂げた時、とは……一体いつになるのか。

 皆思ったことだろう。

 直近のイベント事を鑑みて、恐らく恵美さんが想い人に気持ちを伝えるのであれば、それは今日。


 今日……岡田君達のクラスが優勝した時、彼女は一つ何かを成し遂げたことになるのではないだろうか。


「……頑張ってもらいたいね」


 岡田君は、釈然としない様子で僕を見ていた。


「でも残念ながら、僕も負けたくてこの大会のために取り組んできたわけじゃない」


 ただ僕は、何も彼女のために負けたいと思ったからそんなことを言ったわけではない。


「正々堂々戦って、そうして君達が勝てばその時はやってくる。それで良いと思うんだ」


「そうだな。あいつのために手加減しただなんてこと知れたら、あいつはきっと傷つくぜ」


「うん。……それに、僕も後悔をする」


 思い出したトラウマの記憶の数々。


 僕は、一度目を閉じた。


「……僕は、もう二度と後悔したくないんだ」


「そっか。じゃあ、頑張らないとな」


「うん」


 コクリと頷いて、僕達は互いのチームの方へ向けて歩き出した。


 岡田君は僕の親友だ。

 生真面目で勤勉で優しく、ツンデレな彼に、僕は今日まで幾度となく教えられ、助けられてきた。

 逆に多分、僕も彼を幾度となく助け、救ってきたことだろう。


 僕達は、親友だ。


 でも、昨日の友は、今日の敵。


 今日、僕達は敵同士。


 絶対に負けないと、歯を食いしばってでも負かしたいそんな相手。


 僕は武者震いを覚えつつ、まもなく始まる球技大会に闘志を燃やした。

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