元旦
半日ぶりの投稿。
皆、待たせてすまん!本当にすまん!暴力だけはやめてくれ!
紗枝との思い出作りのためにクリスマスに彼女と遊びに行った結果、僕は随分と遠回りをしたが自分の気持ちに素直になることが出来た。
我ながら、驚いた。
まさか最終的に、今紗枝に抱くこの感情を受け入れることをしようとは。
でも、僕は気付いてしまったのだ。
紗枝の微笑みを見て。
そんな彼女の微笑みを間近で見れるのならば、どれだけ大きな十字架だろうと背負って生きる覚悟が出来た。
だから、僕はもう……もう、過去への気持ちにふんぎりをつけて素直になろうと思ったのだ。
そんな思い出作りだけでは終わらなかったクリスマスを経て、学校もまもなく冬休みに入り、僕は自宅で家族と年末恒例の歌番組を見ていた。
九年前の音楽を懐かしい気持ちで聞きながら、年越しそばを食べて、こたつで暖を取っていた。
我ながら、大層自堕落な時間を過ごしていると思った。
先日、クリスマス。僕はあの時、大層な覚悟を持って一つの決心を固めた。
その決心は今も揺らいでいない。
でも、さすがに年の瀬まで紗枝を呼びつけてあれこれするのは、彼女に迷惑なだけだろうと居直った。
あけましておめでとうございます。
アイドル事務所の年越しライブの中継を見ながら、僕は両親と新年を祝った。
まもなく、紗枝からメッセージが届いた。
あけましておめでとうございます。
簡素に、そう書かれていた。
僕は、それに返事を返した。
「冬休みは、後四日か」
初夢を見る直前、自室のベッドに寝転びながら僕はため息を吐いた。
冬休みが終わるまで。
学校が、始まるまで。
たった四日。
でも僕は、その四日が遠くて遠くて仕方なく感じていた。
「後四日も紗枝と会えないのか」
あれだけの決心をしたから。
いいや違う。
僕は、素直になったから。この気持ちから逃げるのを止めたから。
僕は、紗枝が好きだから。
会いたい。
紗枝に、会いたかった。
目を瞑ると、夢を見た。ただその夢の内容は思い出すことは出来なかった。多分、大した夢ではなかったのだろう。
ゲン担ぎでもある初夢がろくな結果にならず、目覚めると気分が優れなかった。
中々布団から起き上がる決心が出来ない。
外は寒い。足先は冷たくて、今は両足を擦りながら温めている真っ最中だった。
どうせ下に降りても、両親がいるだけだしなあ。
ならば、新年早々から惰眠に耽るのも悪くないかもしれない。
「いつまで寝ているの」
「うわあっ!」
僕が飛び起きたのは、そんな堕落した部分を件の女の子に見られたことが理由だった。
紗枝は、コートを羽織った姿で、僕の勉強机に備え付けられた椅子に座っていた。
「おはよう。あけましておめでとう。修也」
「あけまして、おめでとうございます」
「寝癖酷いよ? 直してきたら?」
「うん。わかった。……ところで、どうしてウチにいるの?」
「そりゃあ、新年ですから」
意味がわからなかった。
「初詣に行こうと思って」
「ウチで初詣をするの?」
「修也の家は神社ではないでしょ」
「そうだよ? だから、聞いているわけだ」
「……あー、はいはい。わかったわかった。一緒に行くよ、修也」
「……え」
「おばさんが着物の着付けしてくれるって言うから、朝早くから来てたの」
そう言えば母は、かつて着物メーカーで仕事をしていた時期があったらしい。
「それで、写真に撮るだけってのも勿体ないから、修也と一緒に初詣に行くの」
最早それは決定事項のように、紗枝が言った。
「そっか」
「……嫌?」
嫌か、嫌ではないか。
そんなの、昨晩の夜、あれほど紗枝と一緒にいたいと思った以上、聞かれるまでもなく答えは決まっていた。
「ううん。行こう」
紗枝の顔がパーッと晴れた。
「じゃあ、おばさんに着付けしてもらってくるから。準備済ませておいて」
「うん」
「じゃあ、ちゃんと終わらせておいてよ。絶対だよ!」
「うん」
苦笑しながら、僕は部屋を出る紗枝を見送った。
意中の人と一緒に初詣。先日のクリスマスのお出掛けは、あくまで友達の一環でのものだったが……今回のこれは、デートと呼んでいいのだろうか。
わからない。
ただ、遅刻することは憚れたから、僕は寒さを堪えてベッドから飛び起きた。
防寒対策に寝間着を脱いで、衣類を纏って、そうしてリビングへと降りて行った。
この中身のない会話だけの回…。
にも関わらず面の皮が厚いことを言いますが、評価、ブクマ、感想頂けますと幸いです。




