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高校時代にタイムリープした僕は、絶縁した幼馴染にただ幸せになって欲しいだけだった。  作者: ミソネタ・ドザえもん
文化祭をやり直す。

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協力

「正直に言えば、最初から思い至っていたんだ。お前達の仲の良さを目の当たりにして、一緒に帰っていくお前達を目の当たりにして。きっと、小日向さんは俺なんかでは手も届かない果てしなく遠い存在なんだろうって」


 唐突に語りだした岡田君のそれは、独白にも近かった。


「それでも……いや、だからこそ、かな。俺が小日向さんに告白をしようと思ったのは」


「……意味がわからない」


 しばらく岡田君の言葉をかみ砕いて、その末僕は混乱した。


「意味がわからない。まったく意味がわからない。無理だと思ったから告白しようと思った? 普通、無理だと思ったら諦めるだろ。出来ることをこなしていこうとそう思うだろ。どうして、どうして無理を押し通す気になるんだ」


「後悔したくないからだ」


「……後悔?」


「好きって、そんな簡単な気持ちじゃないだろ。無理だと思ったから諦めた。無理だと思ったから匙を投げた。そんな簡単に諦められねえよ。そんな簡単に諦められるなら、好きになんてならねえよ」


 そんな簡単に諦められる気持ち。

 好意はそうではないと、岡田君は言った。悔しそうな顔で、そう言った。


 ……そう、だろうか?


 好きと言う気持ちを持っても、結ばれるとは限らない。

 好きと言う気持ちを告げても、受け入れてもらえなければ恥を掻くだけ。


 なのに、どうして執心する?

 執心して失敗したら、ただ痛い目を見るだけじゃないか。


「……俺、前に好きな人がいてさ」


「え?」


「幼馴染で、まあそれなりに仲が良くて、好きになったのはそういう経緯が重なった末だったんだけど……結局好意を告げる機会はやってこなかった。そいつに告白する前に、そいつは恋人を作ったんだ」


 今の悲痛そうな岡田君の顔は、見覚えがあった。

 それは……前回の時間軸での、僕だった。


 岡田君は僕のようだった。あの時の、僕のようだった。

 想いを告げる前に、意中の人に恋人が出来て……やるせなさだけが胸に残った僕と一緒だった。


 途端、先ほどの岡田君の言葉が腑に落ちた。

 好きという感情は簡単に諦められるものではない。


 一度、それを僕は否定した。


 しかしどうだ。

 あの時の僕は、どうだった。


 愚かにも中傷を繰り返し。

 情けなく文句を述べて。


 ……そうして、嫌われて。


 それを僕は、八年もの時間引き摺ったのだ。


 さっき、どうしてあんなに口調を荒げて岡田君の言葉を否定したのか理解した。

 僕は認めたくなかったのだ。

 あの時の僕が、今岡田君が告げた状況と同じだと認めたくなかったのだ。


 そして岡田君が、あの時の僕よりカッコイイことを、認めたくなかったのだ。


 なんてカッコイイんだ。

 認めざるを得ない状況に置かれ、僕はそう感服するしかなかった。


 無理だとわかっていても。

 恥を掻くことがわかっていても。


 それに挑む彼の生き様に……僕は、自分の器の小ささを見せつけられたような気がした。


「……振られるとわかってて、よく告白する気になるね」


 そして、僕はまた小さな器を見せつける。


「……だってさ」


 そんな僕に、岡田君は微笑んだ。




「俺が振られても、お前が慰めてくれるだろ?」




 ……胸が熱くなった。


「初めてだった。自分の気持ちを他人に告げるのは。お前だから告げようと思ったんだ。……自分がいくら不利益を被っても、文句を言わないお前だから。

 どんな時だって笑って許せるお前だから、告げようと思ったんだ」


 前回の時間軸の時だって。

 タイムリープした今だって。


 ……誰かに。


 誰かにこんなに頼られたことは、一度だってなかった。

 ただの独りよがりな感情を褒めてくれて、ただの利己的な感情を認めてくれて。


 そして、僕なんかと友達になってくれた。


 嬉しかった。


 素直に喜んでいいはずないのに。

 過去の行いを考えたら、喜んではいけないはずなのに……っ。


「でも、ごめんな?」


 僕は、顔を上げることが出来なかった。


「どうやら俺、お前に無理強いをしちまったらしい。本当、ごめん」


「……え?」


「俺、やっぱり一人でなんとかするよ。お前に苦しんで欲しいわけじゃなかったんだ。本当、それだけは本当なんだ」


 ……その言葉に偽りがないことはわかっている。

 彼の性格の良さを考えたら、それが事実であることはわかっている。


 そして僕は、そんな彼の性格の良さに甘えようとしているだけだった。


 いいのか?

 このまま……岡田君を……友達を、助けなくていいのだろうか?


 僕は彼の気持ちがよくわかっているはずじゃないか。


 好きと言う気持ちが結ばれない苦しさも。

 好きと告げる前に未来が断たれる悔しさも。


『あんたの顔なんて、もう二度と見たくないっ』


 ……その苦しさを、僕はあの日、紗枝に体当たりで教えてもらったじゃないか。


 そんな悲痛な気持ちを、友達に味わわせていいのか?


「手伝うよ」


「え?」


「手伝う。僕に手伝わせてくれ。君の告白、僕に手伝わせてくれ……!」


 しばらく、岡田君は呆けていた。現実を受け入れた頃、岡田君は微笑んだ。


「ありがとう。相棒」


 僕達は、作業に戻った。

岡田君は主人公の相談役、かつ成長促進係として投入されたキャラである。ようやく精神的に主人公が少し成長したと思われる。

というわけでたくさんの評価、ブクマ、感想お待ちしております。


一日四、五話投稿キツイの…。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  少しずつ己を掘り起こせている。  明確に成長か、と言われるとどうかなと思いますが。  ただ自覚することで変わる為のステップは踏み出せたかな。 [一言]  岡田の見た目のチャラさも過去の経…
[一言] 幼馴染ちゃんも岡田君はマジ勘弁じゃねぇかなぁ ワンチャンいけるみたいに考えてるところが嗤えますねぇ(最低)
[一言] 友達の告白手伝うのは俺はお前に恋愛感情ないよって伝えるようなもんだよね 友情大切にするのもいいけど無駄に自分の気持ちを抑圧するのは良くないなぁ
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