055
ポロネイア王国の王城では盛大な祝宴が開かれていた。
ルークの国王就任を祝うものだ。
新国王誕生に伴う祝宴はこれで2度目。
1度目に比べると目新しさに欠けるが、華やかさは格段に今回が上だ。
バーランド王国からナッシュが参加するということで力を注いでいた。
大広間にて――。
ルークとナッシュが並んで座り、豪華な食事と酒を楽しむ。
その前では貴族達が盛り上がっている。
爵位を失っても、この場に参加出来るだけの力はあった。
「いやぁ、ルーク殿、誠に面目ない。ペトラのことを託してもらったのにこの体たらくで」
「気になさらず。私もこっぴどく振られましたから」
「まさか我々を振る女性が存在するとは思いもしませんでしたな」
「「がっはっはっは!」」
2人はペトラの話で盛り上がっていた。
どちらもべろんべろんに酔っていて顔が真っ赤だ。
とはいえ、理性を失うほどではなかった。
「まさかナッシュ殿まで玉砕するとは思いませんでした」
「自分で言うのもなんですが、俺ってモテるんですよ」
「ええ、そうでしょう、そうでしょう」
「ですから、今まで女性を口説いた経験がなくてですね」
「分かります、分かります。私もペトラ以外の女性に自分から迫ったことはありませんから」
「すると分からないじゃないですか。どういう風に声を掛ければいいとか、そういう恋愛の作法? みたいなものが」
「ですね、ちっとも分かりません」
「その結果、お友達枠にガッポリ収まってしまいましたよ。がはははは!」
「私は幸いにもお友達枠ではなく恋人枠としてスタートできたのですけど、いやぁ、ほんと悔いても悔いきれませんよ」
「恋愛って難しいですなぁ!」
「後悔した時にはもう手遅れですからね」
ナッシュとルークが浴びるように酒を飲む。
「しかしルーク殿、これからどうされるおつもりですか?」
「どうとは?」
「跡継ぎですよ。私は代行ですから深く考えなくて問題ないですが、ルーク殿はれっきとしたこの国の王なわけですから、後継者を考えておく必要があるでしょう」
周囲の盛り上がりが一気に静まる。
といっても、シーンとするほどではない。
表向きは雑談を続けているし、盛り上がっている。
だが、明らかに聞き耳を立てていた。
「たしかにそうですが、まだ就任したばかりですし、そのことは考えていませんね。我が父であり先代の国王にしても、伴侶を見つけたのは40歳を超えてからのことです」
ルークは質問に答え終えると、「それより」と切り返す。
「ナッシュ殿こそどうされるおつもりですか?」
「と言いますと?」
「たしかに国王代行というお立場ではありますが、このままですと正式な国王になる可能性が高いでしょう」
「たしかに……」
既に高齢の大臣が貴族病によってこの世を去っている。
他にもその後に続きそうな者がたくさんいた。
ナッシュの父親でありバーランド王国の国王にしてもそうだ。
「体制が違うといえども、国のトップが世襲制であるという点では共通しています。貴族病のような奇病であったり、我が父を襲った毒牙であったり、何かと不慮の災いは起きるもの。念を入れる必要はあるでしょう」
「そうですなぁ」
ナッシュがそこで言葉を止める。
少しの間を作ってから、彼は続けた。
「ルーク殿の言う通り、次代の王について考える必要はあります。でも、俺はまだペトラのことが忘れられないんですよね。他の女性との未来は考えられない」
「私も同じです。格好を付けて貴方に『ペトラを頼んだ』などと言いましたが、実はその発言すらも後悔していました。可能なら今すぐにでも会いに行きたいほどです」
「すると……我々は恋敵ということですかな?」
「そうなりますね。劣勢ですが負けませんよ」
2人は不敵な笑みを浮かべながら、何度目かも分からない乾杯を行った。













