表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家を追い出された令嬢は、新天地でちょっと変わった魔道具たちと楽しく暮らしたい  作者: 風見ゆうみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/42

37  しまった

『最近のジェイク殿は、兄上が廃嫡されたため辺境伯を継ぐことになったので、未婚の女性に人気があるそうでござる』


 ドクウサからの話を聞いて、魔道具たちと話をしていると、サムイヌがそう教えてくれた。


「そうなのね。考えてみたら、ジェイクは婚約者がいないんだもの。注目されても当然ね。その上に私と仲が良いのだから、レレール様にしてみれば自分を目立たせるためのちょうどいい人物ってわけね」


 レレール様は私のことを恨んでいるようだけど、魔道具師として利用したい気持ちもある。ジェイクを奪ったあと、返してほしいなら言うことを聞けと交渉するつもりなのかもしれない。


 それにしても、ジェイクには迷惑をかけっぱなしだ。


 ジェイクのご両親は、元々の私を知っているし、平民の身分であったとしても魔道具師だと明かすなら、結婚を反対する人もいないだろうと言っている。

 彼との結婚が嫌な訳ではないけれど、これ以上迷惑をかけるのもなんだか申し訳ないと思ってしまう。


『ジェイク兄さんに申し訳ないと思うのであれば、気持ちに応えてあげるべきなのではないかと思いますクマ』

「離れるのではなく、側にいることを望むほうがジェイクのためになると言いたいのね」


 クマリーノの言葉に頷き、私は今になってやっと覚悟を決めることにした。


 本当は、自分の望むがまま、のんびり暮らしていくつもりだった。

 だけど、ジュネコたちを作ったことで、かなりの注目を浴びることになってしまい、そういうわけにもいかなくなった。ジュネコたちを生み出したことに後悔したこともあったけれど、今はそんな気持ちは一つもない。

 私の人生なのだから、好きに生きていいはずだが、誰かを巻き込む可能性があることを忘れていた。甘く考えすぎていたわ。


 ジェイクの気持ちにも、レレール様のこともちゃんと決着をつけなくちゃ。



******



 次の日、ジェイクに話す時間を作ってもらおうと、騎士隊の詰所に行くと、受付の前で見知らぬ若い男女が口論をしていた。


「あなたなんて魔道具に痛い目に遭わされればいいのよ!」

「馬鹿なことを言うなよ! どうして君はレレール様の良さがわからないんだ! それにレレール様を想い続けることを許してくれたら結婚するって言ってるだろう!」


 政略結婚なんてそんなものなのかしら。もし、そうだったとしても、こんな言い方をする人と結婚したくないわ。


「こんな所で喧嘩はやめてください!」


 受付の人が仲裁に入ると、二人は喧嘩をやめた。


「私はあなたと結婚なんてしないから!」


 そう叫んだ女性が私のほうに歩いてきたので話しかける。


「話が聞こえてしまって……、あの、大丈夫ですか?」

「お騒がせしてしまってごめんなさい」


 女性はそう言って立ち去ろうとしたが、私が持っているサムイヌを見ると、驚いた顔をして足を止めた。


「その犬のぬいぐるみは……」

「えーっと、ジェイク様から借りているんです」

「ということは、噂のぬいぐるみなんですね!」


 女性は笑顔を見せたものの、すぐに表情を歪めて涙を流し始める。


「今まで彼のために尽くしてきました。私は金蔓なのだとわかってはいたんです。……でも、彼が喜んでくれるならいいんだって思っていたんです」


 女性は泣きながら訴える。


「彼は……、私からのプレゼントを全部換金して、レレール様に貢いでいました。これからも、私に貢ぎ続けろと言うんです! もう嫌になって別れようと決めたのに、彼は私のお金が目当てで別れてくれないんです」


 詰所の建物自体は大きいのだが、訪れる人が多いので、彼女の声は近くにいる人にしか聞こえない。それでも、やはり泣いている人というのは目立つものだ。


「彼を責めないでやってくれ。その時は自分が悪いことをしているなんて本気で思っていないんだよ」


 聞き覚えのある声に驚いて、私は振り返って相手の顔を確認すると、すぐに前を向いた。


 しまった。ジュネコたちは彼の顔を知らないんだった。もし、知っていたら入領したら連絡が来るはずだもの。


 かなり落ちぶれた様子だったので、一瞬、見間違えかと思ったが、たぶん間違ってはいない。

 こちらに近づいてきていたのは、レレール様に捨てられた、私の元婚約者だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ