24 自分でかたをつけたいわ
ヒメネコの言っていた通り、エイフィック様は騎士隊に捕まっていたが、重い罪にはならず、すぐに釈放された。
馬鹿なことをした彼を、辺境伯夫妻が許すはずもなく廃嫡が決定し、彼は領内から追い出されることが決まった。
「レレール様のためなんだ!」
エイフィック様は最後までそう訴えており、彼女の元に向かったようで、ココナ様も彼を追いかけて辺境伯家を出ていった。
今回、エイフィック様がしたことは人としてやってはいけないことであるため、辺境伯家は王家に報告をした。そのため、王家からは罰として私財で商人の家族に賠償金を払うことが命じられた。
人質にとられていたお子さんは、まだ赤ちゃんで、攫われたということを理解できる年齢でもなかったことが救いだった。自我が芽生えてきた頃だとしたら、大きなトラウマになってしまっていたと思う。
今まではシルバートレイで話をしても良い人か確認し、そうでない場合はロンドさんに介入してもらって、魔道具を手に入れたことにしていた。今回のメガネはシルバートレイで確認はしていたものの、イレギュラーな事態だった。
拷問や大事な人を人質に取られるくらいなら、私のことは話しても良いと思っているので、それも関係したのかもしれない。
巻き込んでしまったことを詫びると、逆に謝られただけでなく、大事にしないでほしいと頼まれた。この件で私がどこかに行くことになれば、他の人に恨まれてしまうし、商売を続けていくのが辛くなると言われたのだ。
そして、ココナ様に話した自分が悪かったのだと泣かれてしまった。
これについては最終的に馬鹿なことをしたエイフィック様が悪いということで決着をつけた。
さすがに今回の件で、王家には私が生きていたことを内緒にしていられなくなり、私が生きていることや魔道具を作れることを知らせざるを得なかった。
下手に介入されたくなくて内緒にしてもらっていたけれど、そうもいかなくなった形だ。
『レレール嬢を放置していたのは王家の責任でもある。そして、わかっていて婚約破棄したのも良くなかったと思っている。そのせいで多くの女性を悲しませることになっただけでなく、あなたの命を危険にさらしてしまった。本当に申し訳ない』
第二王子殿下がお忍びでやって来て、私に何度も謝ってくださった時は、こちらが申し訳ない気持ちになった。
今回の件を機に、私は他の魔道具師と連絡を取ることになった。聞いてみると、私の力は異常らしく、ジュネコやヒメネコのような魔道具が生まれるなどありえないことらしい。
他の魔道具師は私と同じく偏屈な人たちで、人に構われることが嫌いなため、魔道具に守られつつも田舎でのんびり暮らし、気が向いたら魔道具を魔道具店に売って生活している。
私は資格証明書のために魔道具を個人に販売する資格を取っているし、自分で作った魔道具を自分で売ることができる。私も田舎に引っ込んでのんびり暮らしてはどうかとアドバイスされた。
ジュネコやヒメネコに任せて、田舎に引っ込んで悠々自適。
……な生活は私には向いていない。
引き続き、しばらくの間はロンドさんに仲介してもらい魔道具を販売することにした。
そして、次にあんな馬鹿なことが起こらないように、石でジュネコとヒメネコの形をした親指サイズのお守りを作ってもらい、トラブルに巻き込まれないよう付与魔法をかけて、親しい人たちに配った。
辺境伯領内にいれば安全だが、外に出ても私のせいで迷惑をかけないようにしたかったのだ。
「本当は他の魔道具師みたいに人と関わらないようにするのが一番なんでしょうね」
「どう望むかはその人の自由だ。みんなの役に立つ魔道具を作っているんだから、そこまで我慢する必要はないだろ」
「……ありがとう」
慰めてくれたジェイクにお礼を言ってから尋ねる。
「父はどうなるのかしら」
「リリー次第だ。生きていることを伝えても良いのなら、過去の罪を問うために動く」
「……そうね」
どうせなら、自分でかたをつけたいわ。レレール様たちのこともどうにかしたいけど、まずは面倒な父を何とかしましょうか。
「そういえば、ジュネコとヒメネコは顔を合わせたんだろう? 上手くやれそうなのか?」
「それがね……」
2体を会わせた時のことを思い出し、私は小さく息を吐いた。




