第64話 市ヶ谷解放
エリィと岬二尉の援護を受けつつ、自衛隊も防衛省に突入していく。
敵を倒したあとの拠点を確保するのだ。
その頃、敵軍を単騎で蹂躙する遊はボスと対峙していた。
身長3mほどで、アサルトライフル二丁を両手に構え、背中にはミサイルランチャーとパンツァーファウスト、全身に手榴弾を巻いたワンマンズアーミーのようなボスである。
「よくぞここまで来たな! 死ね!!」
ボス……ワンマンズアーミーは名乗りをすっ飛ばしての攻撃を開始する。
「おっと! 僕好みのスピード感だぞ!」
「それって心臓に悪い速度ってことだよね?」
スノンもだいぶ分かってきた。
後続の雑魚を、エリィと岬二尉が受け持ってくれる。
遊はボス相手だけに注力できるというわけだ。
「でも遊の場合、一人でやれるだろ?」
「やれるけど、仲間がいるとなんかみんなでやったよ感が出るからね。僕はこういう経験が薄くて、凄く新鮮だよ」
「こいつハンデキャップくらいのつもりでいやがる!」
二丁のアサルトライフルで、周囲に弾丸をばらまくワンマンズアーミー。
これを華麗な移動で回避しながら、なんと肉薄してひっかきを当てていく遊。
一人でやれる勢同士の対決となった。
「死ねっ! 死ね死ね死ね死ね死ね!!」
「うわーダメだこいつ! 何も情報を喋らない! 魔王の前の最後のボスなのに!!」
「分かりやすくていいじゃないか。それに弾幕もなかなかで、スピードアップを取ってなかったらやられてたよ! あ、スピードアップは必要なだけ取得したから当たらないけど」
「離れろぉーっ!!」
ワンマンズアーミーが周囲に手榴弾をばらまく。
遊はスーッと遠ざかってこれを回避した。
そこに、ペットボトルロケットとお神輿と電動キックボードが突っ込んでいって爆発する。
「ウグワーッ!!」
「効いてる効いてる! 効いてるけど、相手よりも遊の弾幕の方が凄くないか!?」
「弾数増やしてるからね」
「それはそうだけど!」
「ペットボトルロケットは、特に弾数増加の恩恵を受けやすいんだ」
「お前ええええ!! 俺を相手に余裕だなああああああ!! 死ね死ね死ね死ね死ねえええええ!!」
「ほんっとに情報吐かないやつだなこいつ!!」
スノンが呆れている。
危機感を抱かないのは、遊の技量への圧倒的な信頼故だ。
離れると襲ってくる弾幕も、近づくとばらまかれる手榴弾も、全てをベストなタイミングで回避する遊。
「別に話さなくてもいいよ。だってこのあとは魔王を倒すだけだからね。ちょっと原作とは変わってきてるけど、ここは割と原作通りだし」
スノンと談笑をしながら、ワンマンズアーミーの目と鼻の先まで到達する遊。
ボスが見開き、血走らせながら遊を睨みつけた。
「舐めやがってえええええええ!!」
手榴弾をばらまく!
だが、その爆発が起きる寸前に、遊は溜め技を使用していた。
「仲間もいるし、お祭りみたいなもんだからね」
スノンの分身が無数に現れ、ワンマンズアーミーの全身を切り刻む!
「うががががががががが!! ががががががががががが!! こんなっ、こんなまさか! 小官がこんなっ!!」
「死ぬ前に何か話せー」
スノンが囁く。
だがワンマンズアーミーは口をぎゅっと結んだまま、消滅していこうと……。
「このボスが吐き出す経験点で電動キックボードがマックスになるからさ。これでまあまあいい感じの強さになるね」
遊はニコニコしながら、ワンマンズアーミーの消滅を待っている。
「お前は……お前はなんだ……! 小官をまるで……まるで、フルツパラー様の前の前座のように……! いや、この男……小官をフルツパラー様の前のリソースとしてしか……!! ウグワーッ!!」
そこまで口にしながら、ワンマンズアーミーは消滅した。
とびきり大きな経験点がそこに出現した。
遊はこれを回収し……。
「よし! 電動キックボードがマックス! これで、お神輿と合わさって進化だ!」
二つのアイテムが融合し……山車に進化する。
「だし?」
「うん。画面の三割くらいの大きさの山車が出てくるヤバい武器」
「遊が嬉しそうってことは、ろくでもない武器なんだろうなあ……。しっかし、今回のボスは一体何者だったんだろうな……」
「ああ、フルツパラーの右腕という設定の、魔将デカラビアだよ」
「知ってたの!? それに、相手の体力がどこで尽きるかまで分かってたみたいだけど」
「そりゃあ何回も戦ってるからね。ちゃんと時間を数えてたよ。バッチリ40秒で仕留めたでしょ」
「恐ろしいやつだなあ……!」
デカラビアが倒され、防衛省は解放された。
市ヶ谷の風景も、元のものに戻っていく。
これで、残るは新宿のみ。
北新宿と東新宿を突っ切れば、いよいよ最終ステージである西新宿になるのだった。
遠くから、自衛隊員たちの歓声が響いてくる。
「よし、戻ろう! また輸送車で運んでもらえるぞ。移動が楽で本当に助かるなあ……」
「ほんと底知れないやつだなあ。っていうか、もし遊が知らないゲームみたいなのが戦いの舞台だったらどうするつもりなんだ」
「ああ、それかい?」
遊はまた笑った。
「それってとてもドキドキするじゃないか。だってゼロから攻略を考えていくことができるんだぞ?」
「遊ならそう答えるよなあ……!」
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