第37話 第四ステ……海竜 シードラゴン戦
『いきなりシードラゴンの一匹が出てきおったか!』
すぐ後ろまでやって来た、浮き岩からアイスドラゴンの驚く声が聞こえる。
『まあね。このステージの雑魚は前座だよ。三匹のボスとの連戦がこのステージの醍醐味なんだ』
『醍醐味!! 戦闘狂だのう』
「遊の生き甲斐みたいなものでもありますからね。救世が生き甲斐なんです」
『そう聞くとこれほど頼もしい守りの竜も無い……』
水中から出現したのは、長く首を伸ばした水色の竜だ。
黄色のトゲが生えており、高らかに咆哮をあげながら守りの竜を睨む。
「後退します!」
『本当に自分、協力しなくていいの? えっ、したらむしろ守りの竜がやる気を無くす? 難儀な性格だなあ』
浮き岩が戦闘区域から離脱していく。
さて、守りの竜のステージ攻略だ。
まず一体目の海竜は、ゆらゆらと左右に揺れながら小刻みに炎のブレスを降らせてくる。
炎の雨のようだ。
ここは合間を抜けられるほどの隙間がない。
ブレスが止むまで端まで移動して回避し、止んだら戻ってきて攻撃。
『ここは本来ならこのルーチンで安定なんだが、時短するなら……』
守りの竜は海竜ギリギリまで近づき、炎のブレスが吐き出される口の周りを飛翔する。
そう、ブレスは扇状に吐き出される……ということは、吐かれた瞬間は範囲が狭いのだ。
『はい、ここで連射。ターン制での攻撃でタイムテーブル組まれてる中ボスだから、これをやると半分以下の時間で……』
『ウグワーッ!!』
海竜その一が叫びながら、水中に没していく。
次にまた雑魚がビュンビュン飛んできた。
フライングキラーを撃ち落とし、テッポウウオを撃破していると……。
海竜その二が出現だ。
今度は水色のヘビに似た体に、赤い角を生やしている。
攻撃はやはり炎のブレス。
ただし、今度のブレスは反射する。
画面内をフライングキラーが飛び回っており、これに反射して守りの竜を狙ってくるのだ。
ここもまた、反射ブレスを回避するターンと、攻撃するターンで分かれているのだが。
『実は相手の口の直前まで行くと、ここに安地(安全地帯)がある』
そう。
反射前提で斜めに放たれるブレスは、すぐ目の前が死角になるのである。
守りの竜は悠然とその二の眼の前に浮かびながら、ブレスを連射した。
今度はさっきの竜よりも早い時間で『ウグワーッ』と沈んでいく。
遠くから竜の巫女の、「やった! やりました! 残り一匹! 圧倒的ではないですか遊!」なんて声が聞こえる。
『ぬかよろこびなんだよなあ』
守りの竜はこの場に至って、何も存在しない海上に浮かぶ。
『画面ならこの辺りが中央部のはず……来た!』
すると、先程まで守りの竜がいた位置に、倒したはずの黄色いトゲの海竜が頭を出した。
『もがーっ!!』
「えーっ!? 倒されたはずでは!? ずるい!!」
『セシリアの感想が賑やかだなあ……』
ブレスの雨を降らせる中、今度は右端から赤い角の海竜が出現した。
フライングキラーを召喚し、ブレスの反射が始まる。
「そ、そんなーっ! 倒したはずの海竜が二匹も!」
『それだけじゃないんだなあ。来るぞ、三兄弟の長男』
前方の海が泡立ったかと思うと、そこから新たな海竜が出現した。
銀色の角とトゲが生えている。
「さ、三匹目まで~!! ズルすぎますここのドラゴンは!」
『ずるくないんだよー。さて行くぞ!』
海竜その三のブレスは、ビーム状の細いブレスが画面を寸断する。
一定時間ごとに、別方向にこのブレスを吐くのだ。
三匹同時攻撃を受けていては、画面が弾で埋め尽くされる。
弾避けゲームではないのに、この弾の数は尋常ではない。
『常に第四ステージは難関だよなあ』
しかもこのゲームにはボムが無い。
『あっても使わないけど』
まず、フライングキラーを片っ端から落とす。
すると反射しなくなるから……。
『これでその二は無視してよし。次に邪魔なのはその一だから、これに密着して……そうするとレーザーブレスが当たらなくなるから』
連射で、その一の体力を削り切ると……。
ついに海竜がその真の姿を現す。
バラバラに存在していた三体が一箇所に集まり……。
まとめて浮上した。
それは、三つの首を持つ巨大なドラゴンである。
「そ、そんな! 実は一体のドラゴンだったの!? ……それにしては首が自由にあちこちから出てたような……」
『ゲームだからと納得してたんだけど、そう言えばどういう原理なんだろうな……』
守りの竜はぶつぶつ言いながら、三種類のブレスを交互に吐いてくる最終形態に突進した。
攻撃パターンを順番に変えてくるのだが、だからこそやりやすい。
その一のパターンの時点で密着、今回はその三……守りの竜が長男と呼ぶ銀角銀トゲにしか当たり判定がない。
つまり、残り二つは攻撃しても無駄なのだ。
その三から体力を分け与えられて復活してしまう。
『海ステージのボス戦は、常に密着。度胸がある方が勝てるね。さらに長男には氷のブレスが特効!』
乱れ飛ぶブレスなどものともしない。
そもそも、ブレスが形を成す前の段階で守りの竜は戦場の最前線まで到達している。
海竜の目と鼻の先で、氷のブレスが叩き込まれた。
巨体ゆえに、海竜の動きは鈍い。
守りの竜から距離を取る前に……。
『ウグワーッ!!』『ウグワーッ!!』『ウグワーッ!!』
ついに海竜の体力の限界が来た。
結晶化しながら、沈んでいく。
そこから、ネビュラゴールドの因子が飛び出した。
『……一応やっとくか!』
何度も撃破して、どこが弱点なのかを理解している守りの竜。
当たり判定のある1ドットほどの辺りに、的確にブレスの連射を浴びせかけた。
『ウグワーッ!!』
因子が断末魔をあげながら消滅する。
海竜の結晶と、魔龍の結晶らしきものが守りの竜の肉体に吸い込まれていった。
『あっ、参ったなこれ。ここからの成長ツリーは首を増やさないと無理みたいだ。ついに……首を増やすか……!』
守りの竜、決断の時である。
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