第27話 地竜アースドラゴン戦
画面上には、地竜の心の叫びが表示されている。
『私を止めろ……止めてくれ……!』
このセリフで、最初のボスである地竜アースドラゴンが純粋な悪でない事が分かる。
こういう後味の悪そうな演出を所々で差し込んでくるのが、往年のシューティングゲームというものだ。
『ドラゴンの体なのにセリフが見える……』
傍からは、アースドラゴンがひたすら咆哮しているだけに見えるだろう。
『安心してくれ。止めるから。いやあ……生身でぶつかり合う系のシューティングだと会話ができちゃうんだな。まいったな。僕は会話が苦手なんだ……』
とりあえず、何を言ったらいいか分からないので戦闘を開始することにした。
地竜側も、ついに力を抑えきれなくなったらしく、激しい咆哮とともに蒸気のブレスを吐き出してくる。
蒸気ブレスは長く長く伸び、左から右へと薙ぎ払ってくる。
これを前方に出ながら回避するのがセオリーだ。
『メイガス・バレットと違って、ドラゴンソウルはドラゴン胴体全部が当たり判定だ。弾幕ゲーじゃなくて本当に良かった』
弾幕が無い代わりに、飛んでくる弾は速いし、自機の初期位置を狙って放たれてくる。
遊はブレスを回避しながら、アースドラゴンの端に攻撃が当たるように位置を微調整した。
少し離れた場所から、「守りの竜がちょこちょこ動いてる!」「なんだあの動き!?」「あっ、蒸気のブレスがギリギリ当たらないところなんだ!」「すげー! なんで分かるんだ」
「遊はああいう精密な動きが得意ですからね」
セシリアが得意げに語る声まで聞こえてくる。
なんだか恥ずかしくなってきた。
『集中! 集中~っ!!』
声に出して叫びながら、ブレスの回避に専念する。
右から左に薙ぎ払ったら、今度は左から右へ。
これを避けつつ、こちらもブレスを叩き込んでいく。
本来は持久戦なのだ。
しかし、ブレス終わり際の甲羅の端辺りが安全地帯になり、これを用いることで時短クリアが可能となる。
ここに留まることで、通常攻略時よりも大量の弾を浴びせることができるわけだ。
『だけど現実だと……相手のライフゲージが見えない……! ゲームだとそろそろ第一段階が終わるはず……終わった!』
『ガオオオオオオッ!!』
地竜が吠えながら、後退していった。
かと思ったら、今度は甲羅の大きな凸凹が解放され、そこから猛烈な水蒸気を上げながら戻って来る。
『アースドラゴン……通称、温泉』
第二段階は、全身から湯気を吹き出しながらの突進なのだ。
まあ、向こうは地上、こちらは空中。
実際に接触することはない。
だが、吹き出す蒸気に当たり判定が存在する。
この世界で言うならば……。
凄まじい勢いで吹き出す蒸気が、守りの竜を追いかけてくる。
そう、蒸気が追尾してくるのだ。
これをぐるぐる回りながら回避し、正面に来た時に射撃する。
『あー、これだよこれ。まずはドラゴンソウルのボス戦の基礎を教える、一面ボス。何度戦ったかなあ、アースドラゴン! 現実だとここまで切実な状況だったんだな。スピードクリアして、楽にしてやるからな』
遊が独自に編み出した第二段階攻略法は、蒸気をギリギリまで引き付けながら正面に回り、射撃。
そこから逆方向に抜けると見せかけて……。
『よし、ここで新たな蒸気を引き付け! そうするとさっきの蒸気のロックが外れるから、また戻って射撃! そしてまた通過して引き付けて戻って……』
名付けて、振り子戦法!
「守りの竜が右に行ったかと思ったら戻ってきて、左に行ったかと思ったら戻って来る!」「不思議な動きだなあ!」「何か深遠な考えがあるに違いない」「実際、地竜様に効いてるぞ! 苦しんでる!!」
常に弾を当て続けているのだから、地竜が弱って当たり前なのだ。
ついに地竜の全身から蒸気が暴発するように吹き出した。
ライフを削りきったのである。
『ガッ、ガガガガガガガガ! ガガガガガガガガガアアアアアア!!』
叫びながら、亀に似た巨体が膝を屈する。
甲羅の腹が地面に付いた。
開かれた地竜の口からは、真っ黒な霧が溢れ出す。
霧の中から、黄金の龍の顔が覗く。
ネビュラゴールドの因子だ。
『ゲーム本編ではこれが飛び去っていって、それを追いかける展開だが……。やれるか?』
守りの竜は魔龍の因子目掛けて、ブレスを吐きかけた。
黒い霧が乱れる。
実体は無いのか、ダメージが入った様子は無いが……。
『右、正面、左……反応あり。左に当たり判定がある。1ドットくらい……。だが、当たるということは倒せるということだ』
遠ざかろうとする因子にピッタリと張り付き、遊は正確無比な狙いでブレスを連射した。
ついに黒い因子はバリバリと音を立て、画面にジャギーが引き起こるような見た目になり……。
目を大きく見開くと、バツンっと消えてしまった。
『よし、倒した!!』
魔龍の因子から、結晶が溢れてくる。
これを吸収する遊。
直下でうなだれている地竜が、ゆっくりと目を見開いた。
『ありがとう……私を止めてくれて……』
『あ、ああ』
すっかり結晶の回収に夢中になっていた。
いきなり話しかけられた遊は、正直済まなかったと思いつつ地竜の最後の言葉に付き合うことにする。
『魔龍ネビュラゴールドの魔の手は、世界の辺境である地竜の里まで伸びてきた。もはやこの世界は、ヤツの手の内に落ちたのかも知れない。だが……守りの竜よ。お前ならばネビュラゴールドを倒せる。頼むぞ……! 私の力を託す……!』
地竜はゆっくりと目を閉じた。
その体が光りに包まれ、緑色の結晶に変わる。
それが守りの竜の中に吸い込まれ……。
STAGE CREAR!
そんな文字が空に浮かんだのが見えた。
『よし! かなりの割合で、ゲームの技が通じる! それから地竜、仇は取るからな』
己の中に眠る地竜に声を掛けると、遊はセシリアが待つ空飛ぶ岩へと戻っていくのだった。
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