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第五話


 家に着きベッドで横になりながら今日の出来事を振り返っていた。


 やっぱり距離感おかしくないか?あれが普通って事は無いよな?初めてが多すぎてわからん、明日千鶴に聞いてみようと考える。


 気付くと、いつの間にか寝落ちしていたのか?いつ寝たのかすら覚えていない、ただ夢だと思いたい⋯⋯部屋の中が真冬並に寒い。

 

 今は九月、まだまだエアコンが必要な季節なのに部屋がこんなに寒くなるのはおかしい、もちろんエアコンなんて付けていない。


 それだけじゃない、部屋中に蔓延してる異様な雰囲気⋯⋯なにこれ?絶対に異常事態だと感じ目が覚めたんだと思う。


 『か、体が動かない⋯⋯か、金縛り?』


 助けを呼びたいのに声も出ない、どうすればいい?何が起こってる?疲れてたから夢だよな?マジわけわかんねぇ。


 唯一動くのは眼球のみ、わかってる、気付いてる、怖い、マジで怖い、俺が寝ているベッドの横に何かいる⋯⋯


 夢なら覚めろと強く願ったが覚める気配はない、それならばと意を決して俺の横にいる何かにゆっくりと視線を向けた⋯⋯


 こ、子供?女の子?仰向けで寝ている俺の横に立っている。


 顔は?俯いて入るせいかハッキリとは見えないが泣いているように感じる。


 その女の子を見た瞬間、普通なら恐怖で震える筈なのに、なぜか別の感情が湧き始めたのが分かった『大丈夫?』そう、女の子を憐れむ気持ちだった。

 

 動くはずが無いと思っていた右手を伸ばし頭を撫でて上げたいと⋯⋯自然に思ってしまい伸ばしてみた。


 『動いた!』

 

 そのままゆっくりと腕を伸ばす。

 もう少し、あと少し⋯⋯頭に触れた瞬間目が合った、女の子が泣いて⋯⋯いや、左目からだけ涙が流れている。

 『ち、千鶴?』


 面影があったからか、何故そう思ったのかは分からない⋯⋯次の瞬間。


 『ピシャーーーンッ!』


 凄い音と共に体中に電流が流れた感じがした。

 女の子が苦痛の表情を浮かべながら此方にゆっくり近付いてくる、顔が俺の目の前まで近付いたその瞬間、女の子はスーッと消えていった。


 ようやく体が動くようになり唖然とした表情で辺りを見渡すが、いつもと変わらない自分の部屋があるだけで、特に変わったようすは何処にも無い。


 まるで狐にでもつままれたような気分になり、夢だったんだと思う事にして、俺はそのまま目を瞑る事にした。

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