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帰路

「家族が無事、かつ自分も自国から逃れたいと」


「夢見事ですが、そうなりますね」


「それを呑めば僕がしようとする事にも協力してくれると」


「そうです。無茶な事だと承知ですが、お願いします」


「分かった」


「迷い無し、ですか。凄いですね」


 これがどれだけ無茶な事で、どれだけ無謀な事なのかも分かっているつもりだ。

 だけど、それでもやり通す。

 それが未来でどれだけ苦難や危機があったとしても、この約束は果たそう。


「じゃあ、この戦いは終わりだ。これ以上争っても何も生まない」


 そう言い、来た道を引き返す。

 周囲は夜の暗闇で明かりは殆ど無く、湖は真っ暗で何も見えない。

 僕の後ろに内田さんの足音を確認しながら、駅へと向かう。

 話あっている内に陽はすっかり落ち、夜が訪れた。


 それからは静かだった。

 どこで誰が聞いているか分からない。無闇矢鱈に話してもいい内容では無い。

 駅に向かうまでも、電車の中ででも、寮への帰り道でも僕と内田さんは何も話さなかった。


 その内にする為の仲間、作戦、実力について話さなければならないが、今は違う。

 今ボロを出して警戒されてしまっては元も子もない。

 ゆっくりと、じっくり、綿密に、実行する必要がある。

 だから今は、心の奥隅に閉まっておくべきだ。


 そう考え、その日は眠りに着く。



 ……


「はい、はい、気付かれていません、全て順調です。報告は以上です」


『よし、ではそのまま進めよ』


「分かりました」


「はぁ~……もうすぐ、もうすぐで。待ってて」


 作戦は順調、誰にもバレずに遂行する。それが私の任務、そして作戦。


 ……



 夏休みは限りないスピードで進んでいく。

 一日一日があっという間に七月から八月へと過ぎていった。訓練、勉強、訓練、勉強の繰り返し。

 訓練は時折和田としているが、実力差が出来ている気がする。


 攻撃のいなし方、攻撃方法、スピード、魔術も増え、鋭さも増している。

 能力上、学びと理解を深めれば実力はうなぎ登りの様に上がっていくだろう。

 勉学も学術と認識されていれば能力を使っていればこの夏休み中にはAクラスの中でも上位にいけるだろう。


(そう考えれば和田の能力、結構チートでは?)


 そんな考えをしながら、また一日が過ぎていく。

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