虚
虚しい
攻撃も淡々と急所や動きを封じる為の行動が主だった。
教えられた技術も実力はただ国の為に使っている。心を殺し、理不尽から逃れる為に命をかける。
スパイにしては情報も簡単に話す。
今日も笑顔で一日を過ごしていた。それに、自分の好みが学園に来てから出来たであろう事も包み隠さずされけ出している。
あまりにもスパイに向いていない。
ガキンッ、ガキンッ
僕が考えている間も的確に狙って来ている。
ナイフで捌いているが、狙いが的確だが的確過ぎる。
あまりにも矛盾する。
助かりたい、だけど任務を確実にこなそうとしている。
「内田さんはそれでいいのか?」
「……どういう事ですか?」
「助かりたいんじゃないのか?」
「そうですが……今ではないんです」
「どういう意味だ?」
「確かに私は現状から助かりたいです。ですが、今の私では力が足りないんです。立ち向かう力が」
「……」
そんな事はないと思うが、内田さんの国の実力者はそれ程という事なのだろうか。
「だから私は、私自身の実力を証明します。貴方を殺して」
「出来るモノなら殺ってみろ」
「ッ!!」
蛇腹剣が舞うスピードが格段に早く、鋭くなった。
能力を使っていなくてこれならば、十分に凄い。これに更に能力が合わされば大抵は相手出来るだろう。
しかし、惜しい。
さっきの僕の言葉に簡単に乗せられすぎている。
最初よりも刃がどこを狙っているのかが分かってしまう。
その場から動くこと無く、ナイフ捌きと体捌きで全て躱すことが出来てしまう。
「……」
攻撃が止む。蛇腹剣が元通りに剣になる。
「……もう終わりか?」
「ッ……どうして攻撃して来ないんですか」
「僕には攻撃する理由が無い……それだけだ」
「馬鹿にしているんですか。私は貴方を殺そうとしているんですよ!」
「それでも僕は攻撃しない」
僕には攻撃しない理由がある。




