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デート(?)5

 私の自国は、強者こそが全てでした。

 強者は全てを持ち、全てを許されていました。人権も倫理も、全て強者の思うがままです。

 父も母も、能力を持ってはいました。ですが、ご主人様には敵いませんでした。

 私の家は力が無く、力がある人の奴隷の様な扱いでした。


「……っ……っ……っ」


 来る日も来る日も私は毎日、ご主人様の暴力(娯楽)や雑用に使われていました。

 朝から夜まで弄ばれ、夜な夜な私は泣いていました。

 無力な自分に悔しくて、こんな毎日が嫌で、泣いていました。


 ですが、泣いたとしても何も変わらない、それが分かってからは泣く日々を止めました。


 それからは我慢の毎日でした。雑用も、暴力も、全てを我慢していました。そして全てを我慢していた為か、感情が無くなっていきました。

 我慢し続けた毎日が過ぎていったそんなある日、私に能力が宿りました。


 そこから私の日常は一変しました。

 能力を宿してからは訓練の毎日になりました。

 諜報、暗殺、武術、知識、能力、全てを磨く事に私の人生の殆どを費やしてきました。

 暴力や雑用の次は訓練の毎日、私の人生は名の為にあるのだろうと思っていた時に、今の任務が来ました。


 今回の任務は、この島の情報。その秘密を諜報する為に学園に入りました。

 その為には目立たない低いクラス、Fクラスに入り情報を集めていました。

 そんな時、貴方という存在が明るみになり始めました。

 貴方という存在は学園にとってのイレギュラー。貴方が何かする前に貴方という存在かを知る必要がありました。


「結果、貴方という存在は私の任務にとって、危険分子だと結論付けました。これが貴方を狙う理由です」


「……そうか」


「どうですか?貴方の疑問に応えられましたか?」


「……そうだね」


「同情しているのなら必要ありません。されたくもありません」


「……」


「……そろそろ始めましょうか」


 そう言うと、持っている蛇腹剣を舞う様に扱う。


 湖があるこの道は、アレを扱うには狭すぎる。普通の人が扱うと木や湖の柵にぶつかり、扱い切れない。


 だが、内田さんは違う。木や柵を避けて確実に僕の心臓を狙って来ている。かなりの腕前だ。ナイフとは天と地の差がある。

 それ程の努力の成果。


 カキンッ、カキンッ、カキンッ、


 僕の急所を狙って来ている刃を、持っているナイフで確実に捌く。

 次に狙ってくるのは、首、足の腱、目、背中、心臓。

 一発目で命を刈り取ろうとしたが、それが叶わなかったから確実に刈り取る為に動きを封じてから急所を狙う。

 うん、よく考えられている。

 刈り取れなかった時の次の手段も、動きを封じる手段も一つに繋いでいる。

 確かにこれは数年単位では身に付かない手段だ。人生を費やして来たというのに説得力がある。


「流石ですね。これにも反応して対処しますか」


「……」


「どうかしましたか?」


 これだけの実力に、これだけの知力、絶望の淵から助かりたい、希望の一筋の光でも縋りたいという願いの元、任務を行うとは……

 それだけに人生を費やす。おそらく、家族も人質の類になっているのだろう。

 だからこれだけ命懸けの事をする。


 故に、虚しい。

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