デート(?)4
夏休みが始まる数ヶ月前、先生から
「『改めて学園長と職員で話し合って確認したことなんだが、この学園に他国の諜報員が入り込んでいる事が分かった』」
との事だった。
他国のスパイ。この国の情報、実力、能力、知力、それら全ての情報を纏め自国へと渡す。
それが潜り込んだスパイの任務だろう。
そして、
「それが君の正体か。内田さん」
「そうですね。これが本当の私です」
人気が少ない場所に来たのも、この時間を選んだのも計算通りなのだろう。
そしてあの武器、
「珍しい武器をお持ちのようで、どこに隠し持っていたんだ?蛇腹剣なんて」
「これが私の得意武器ですので」
今日内田さんは僕と同じ様な服装だった。半袖にジーパン、隠せる様な服装では無い。
おそらく、お腹にグルグル巻きにしてその上から服を着ていたのだろう。その証拠に蛇腹剣を取り出したから、服が破れている。
「随分と癖のある武器を好むんだな」
「私にとっては自身の体の様に扱えますから」
成程、それだけの腕に自身がある。それか何かしらの能力なのか。分からないな。
しかし、ヒントはある。彼女は総力戦に参加したと言っていた。攻撃力がある能力者は上位何名かは顔も能力も覚えているが、彼女はいなかった。
つまり、支援をメインとした能力。
それでもスパイとして派遣される程の実力を持つ。油断は出来ないな。
「それにしても、よく凌げましたね。どうしてそんなモノ持っているんですか?」
僕の手の中には、ホームセンターで買ったナイフが握られている。
「こんな事があるなら護身用として持っているのは普通でしょ」
「心外ですね。そんなに私は怪しませる様な事をしていましたか?」
「そうですね。貴女、怪しいところが結構ありましたよ」
そう、内田さんの怪しい、妙な事が三つ。
一つ目に、接触して来たタイミング。僕の実力がFクラスのレベルでは無い事がバレた次の日に接触して来た。
未知数の実力を持つ人物が同じクラスにいるんだ、スパイにとっては早々に排除したいだろう。
二つ目に、内田さん戦闘訓練の時、間合いが変だった。
ナイフの間合いの時もあれば違う間合いの時もあった。今思えば体術というより蛇腹剣を扱う舞術に近かった。
三つ目に、今日の内田さん、ちょっと姿勢が良すぎる。
服を選ぶ時も、カラオケで歌っている時も、昼食を食べる時も、常に背筋を伸ばしている姿勢だった。
その理由も今なら分かる。お腹に蛇腹剣を仕込んでいたからだ。姿勢を崩すとお腹や胸を傷つけるかもしれないからだったのだろう。
食べ物を食べる時もそうだ。食いすぎると蛇腹剣がバレる可能性がある。
「これらが主な怪しいと思ったところだ」
「そうですか。高い観察力と推理力ですね」
「そんな事は無いさ、割と戦闘で使うのに必要なだけだ」
「強さの秘訣はソレですか?」
「そんな事はないと思うけどな、僕以上に強い人はいるし」
「……疑わしいですが、そうですね」
実際、Aクラス全員と勝負して勝てるなんて可能性は低いくらいだ。
だから僕の実力なんて未だ足りない。
だから、
「どうして僕を狙うんだ?」
何となく理由は分かるが、聞くに越した事はないだろう。
「本来ターゲットに情報を教える事なんて無いんですが、……貴方は特別です。それには先ず、私の事を話さなければなりません。」
私は……




