学園の目
「分かったのはやっぱり、昨日の練大祭ですか?」
「それもあるがね。始めから君は可怪しい(怪しい)と思っていたよ」
始めからだと?!僕は細心の注意をしながら入学して来たぞ。
一体いつから……いや、どこからだ。
入学式に学園長は来ていない、最初は映像として僕達の目の前に現れた。
その後も学園長は僕らの目の前に現れた事は無い。
だから、学園長は直接僕を見ていない。……おそらく、監視カメラを通して見てはいたんだろう。
とは言っても監視カメラでは限界がある。直接見るのと違って、魔力も速さも捉えられない。
つまり、多少の憶測も入っているのだろう。付け入るのならそこだ。
「始めからというと、どの辺りからですか?」
「そうだね。映像を通して見ていたのを含めると、入学式からだね」
「映像、ということは監視カメラでもあったんですか?」
「極小の監視カメラが学園の至る所に設置しているんだ。その映像をこのパソコンで随時見る事が出来る」
「そうなんですか」
学園長は僕との会話中、笑顔を絶やす事は無かった。まるで、顔に『笑顔』という仮面を被っているみたいだ。
表情からは何も読み取れない。
無。
目線、口調、声色、表情、何一つ変える事無く話している。
不気味な人だ。
「私からは何も読み取れないのではないかい?」
お見通しか。ここまでポーカーフェイスが上手い人は始めてだ。
「……そうですね。すみません、僕がどれだけ隠しているかでしたね」
「教えてくれるかい」
……やっぱり、
「僕は正直、能力が使えません。だから全て単純な武術です」
「!」
僕の一言を聞いて始めて、僅かに表情に変化が表れた。そうだ。ここは能力者を育成する学園。
そんな学園で能力を使えない生徒が能力を使える生徒を打ち負かす。
この数十年、現れなかった存在。その存在が今、目の前に現れてどういう反応を示す?
「……そうか。……そうか」
僕の言葉を噛み締めるように考え込む。
真実を隠さず出す事で、わざと疑問点を作り出す。その疑問点の解を出す為に容量を割かせ、他の事に疑問を抱かせない。
「……そうだね。そんな君に問いかける」
「能力を開花したくないかい?」




