友達
「友達……?何を言っているんだ?」
「いや、クラスでも友達と言える様な奴が居ないなって思って……」
「だからと言って俺になるのは訳が分からないぞ」
「お前が悪いヤツじゃ無いっていうのは、戦って分かった。それに、」
「……それに?」
「学園に入った以上得られるモノは得たいって思うのは悪い事か?」
「得られるモノ……か」
友達としては、どうかと思うところはあるが、今得られるモノはそれ以上の価値があるのだろう。
学園で得られるモノは限界がある。
だが、友と得るものはその何倍、何十倍にもなることだろう。
俺から得られるモノがあるかどうか、分からないが、ソレは和田自身が見つけ出すことだろう。
それを条件にどうだ?
「……分かった。良いだろう、友達になってやる」
お、以外とすんなり……
「その代わり、一つ条件がある」
そんな訳無いか。寧ろあって当然だ。
無くてそのまま友達になるなんて、何か考えているのかって疑う事になる。
本来、普通の学校なら疑う事は殆ど無いか、余程考え過ぎているかのどっちかだろう。
だがここは、能力が至上主義の世界が生み出した学園だ。疑わない方が命取りになる。
それが、この学園。それが、この世界。
条件によるがある程度のものなら飲もう。それだけの恩恵がある。
さぁ、どんな条件を出す?
「俺の事をお前とかじゃなくて、苗字か名前で呼んでくれ」
「……は?」
「ん?何か不満か?」
「いや、不満とかは無いが、そんなベタな事でいいのか?」
「それで良いんだ。それに、お前からも得られるモノはあるからな。お互い様だ」
「俺の事は、ヨルとでも呼んでくれ」
「……?分かった」
利害の一致、とでも言うものか俺達はクラスは違う初の友達となった。
競走が基本の学園で、初の友達がまさかAクラスの奴とは思いもしなかった。
Fクラスにもいるにはいると言えないが、藍沢さんは少し、というか怪しすぎる。あの無償の笑顔に、あの約束、疑問点が多すぎる。
その点、和田はこれまで見ていて分かった。嘘が下手だ。剣筋も視線も何もかも馬鹿正直のものばかりだった。
それが演技かもしれないとか考えたが、何度も同じ動きをして来る。多分クセだ。
だから、この学園の中で一番信じられるだろう。
「そうだ……友達からの願い聞いてくれるか?ヨル」
「なんだ?」
「ダルい。寮まで連れて行ってくれ」
……ほら、馬鹿正直だ。




