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決闘10

「……勝った」


 勝ったのは俺だった。

 和田との決闘の末、勝利をもぎ取ったのは、俺だった。

 この勝負には誰も文句を言う者はいないだろうが、誰の文句も聞き入れよう。

 それ程の事をしたんだ。


 倒れている和田の方を見ながら思う。倒れているが、意識は保っているだろう。


 ……魔力切れ。


 最後の最後に放って来た【黄昏流魔剣術 白墨】……

 それによって、体中の魔力を使い果たしたのだろう。攻撃に全神経を注ぎ、真っ向から向かって来た。


 天晴だ。


「……まさか、お前が最後に取った行動が、防御、とはな」


 そうだ。俺が最後に取った行動は、魔力の殆どを消費した防御手段。

 あの時、疑似身体強化を施したのは脚、それと、胴。

 胴体を強化し、内蔵の保護に自身の耐久力強化を促す。

 それにより、防御面を底上げする事によって、和田の技に耐え抜く。

 最後の技も凄かったが、エンチャントによる魔力消費を考え、魔力切れを狙う事にした。


 まぁ、俺の右腕は暫く激しい戦闘には使えないが……


「俺がお前にダメージを与えられる程の攻撃力は無いしな……だから、俺に取れる最善策を実行しただけだ」


「なら、さっきの言葉は……」


『「ここまで来たんだ、もう全力も全力で最大火力でやってやる!」』


「ああ言えばお前なら乗って来ると、考えたからだ。言葉も立派な武器になる」


「……」


 和田は思うところがあるのだろう。

 決闘自体には、問題無い。だが最後、最善の策として取った行動だったとしても違えた。

 全力だったとしても、俺は決闘というのを侮辱したといっても過言じゃ無いだろう。

 それに関しては、何を言われても仕方が無いと思っている。


「……そうか。俺は、お前の策に乗せられたのか」


「良く言えばそうだな」


「……」





「俺の負けだ」



 数秒の沈黙の後、それを破る様に言葉を紡ぐ。


「……いいのか」


 驚きを孕みながら、言葉を絞り出す。


「どんな手段だろうと、俺はお前に負けた。それは変わらない事実だ」


 起き上がりながら、まだ魔力切れで頭がフラつくのか、頭を押さえながら俺を見る。


「だから、お前の勝ちだ」


 自身の敗北を受け入れ、相手を称えるとは。


 もし俺が同じ事をされれば、和田と同じようには出来なかっただろう。卑怯だ何だと思っていただろう。


 まぁ、和田ならばこんな手段を使わなくても正攻法で相手に出来た筈だ。

 卑怯な手段なんて要らない。それ程に和田の実力と能力は強い。


「お前こそ、強かったぞ」


 俺と和田は互いに握手を交わした。


「和田、俺と、友達にならないか?」

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