決闘5
「付き合うとは言ったが、……」
和田の手元を見ると、刀の柄から先が無くなっていた。何でだ……?
「どうやら先程の俺の技に耐えられなかったか……刀の方が限界を迎えたか」
そういう事か。という事はさっきの技はそれだけの負荷がかかるがそれだけ威力がある技。
余計受ける訳にはいかないな……と言っても、もうさっきの技は打てない。
和田の持つ刀は柄以外残っていない。
「これは、もう使えないな」
柄をその辺に投げ捨てる。
これで、和田の武器は見当たらない。
そう思ったのも束の間、背中から何か棒状の物を掴み、抜き放つ。
アレは、槍。今度は槍術か。
いいだろう。やってやろうじゃないか!!
コチラは短剣二本リーチでは負けて、相性も悪いが問題無い。そんな事は問題外だ。
全て技術でカバーすれば良い。
だから俺は、突っ込んだ。
さっきの俺とは比較にならないスピードで、和田の内に入り込む。
槍の弱点は短剣が届く範囲。つまり超近距離。
そこまで入り込めたのならこっちのモノだ。
連撃入る!
「っ……!?【火炎魔術 焔火】!」
咄嗟の事だったのか魔術をゼロ距離で撃って来るとは。急ブレーキをかけ、急いで距離を取る。
おかげで魔術の直撃は避けられ、難を逃れる事が出来た。
まさか、詠唱無しでこれ程の威力が出せるとは……
火炎魔術が着弾したところを見ると軽いクレーターになっており、焦げ付いている。
本来魔術とは、長い詠唱を詠み、始めてこの世に顕現する。無詠唱で魔術を使用する事は出来ることは出来るが、どうしても威力が軽減してしまう。
それなのにアイツは、無詠唱であれほどの威力が出せた。
これも、能力の影響なのか。
良いね。良いな!最高だな!!
槍術に魔術、それに加えて剣術、特にあの抜刀術!
最高に面白いくて、最高に脅威だ!
「っぶねー」
「その割には結構余裕が感じられたが?」
「そっちこそ咄嗟とは言え、火力がおかしいと思うが?」
「努力の賜物だよ」
「【付与魔術 エンチャントフレイム】」
和田が持つ槍に炎が纏わりつく様に付与された。
エンチャント、割と武器を強化するのに使われる汎用魔術だ。
だが、使う人は少ない。
その理由は、エンチャントし続ける為には膨大な魔力を消費する。付与とは本来、武器の製作時点で付与されるものだ。
エンチャント自体は簡単な技術だが、膨大な魔力消費と引き換えに、強大な威力を与える。
「エンチャントとは、本気か?」
「本気も本気だ。俺の全力でお前を倒してみせよう」
「そうかっ!」
離れていた距離を一気に詰める。
俺と和田の距離は一メートル未満にまで近づき、短剣で攻撃しようとする。
それを和田が許す筈もなく、槍を即座に持ち替えて防御の構えを取る。
俺の短剣と和田のエンチャントされた槍が甲高い音を放ちながらぶつかり合う。およそ訓練用とは思えない甲高い音、金属同士がぶつかり合う音に似ているか。
「「ふっ……」」
互いに笑い合い、相手の力を引き出させ合う。




