日の終わり
それから、日々は過ぎていき四月は終わりを告げ五月へとなり、もうすぐ決闘の日が近づいていた。
今日は五月の一日。残り二日、それが決闘までの日数。
「もうすぐ、か」
独り言を呟きながら、学園へと向かう。
まだ生徒の通行が少ない時間に僕は一人、学園の敷地内へと入る。訓練所にも生徒の姿は見られず、この時間と夜だけが唯一物静かな時間だろう。
教師陣もいるとは思えない程の静けさ。
この世界に自分一人だけしかいないみたいだ。
その静寂を破る様に一人の声が響き渡る。
「なあ」
そんな一言が静寂を破り、この場に僕ともう一人。
「和田」
和田誠一郎。決闘を吹っ掛けてきた張本人だ。
こんな朝早くから学園の門の前で待ち構えていたという事は、間違いなく何かあるのだろう。
一瞬、決闘の撤回でもしてくれないかなと思ったけど、顔を見てそんな事は無いと感じた。決意を固めた様な顔してコチラを見てくる。
「どうしたんだ?こんな朝早くから、学園の門の前で」
「お前に用があってな」
「へぇ」
「……やっぱり何度考えてもそうなんじゃないかってそう思った。他の可能性も考えた。けど、俺の見た範囲でも、それ以外の可能性が否定された気分だ」
「何が言いたいんだ?」
分かっている。和田がこれから何を言おうとしているのか。これから何が起きようとしているのか。
「氷城を倒したの、やっぱりお前なんだろ」
そうだ。それを馬鹿正直に話しても話さなくもコイツはもう僕が犯人だって確信しているだろう。
……だろうじゃないな。確信しているな。だから誤魔化しても言い訳にもならないか。
周りにバレたくないっていうのは、和田にも伝わっているのだろう。だからこんな人気の無い時間に僕に話し掛けてきたのだろう。
「それで、僕だった場合どうするんだ?」
「別に、どうしようもねぇよ……ただ、俺と戦ってもらう」
「……」
逃げ道無し……か。コレは、承諾しない限り終わらないな。しかも僕が悩めば悩む程、時間が経ち生徒達が学園に来てしまう為の時限爆弾。
今ここで判断しろという事か。
……
「……分かった。なら人気の無い所でやろうか」
「よし、なら明後日の夜九時頃か、ここで待ち合おう」
そう言い残して和田は学園の門を潜り中へと入っていった。
考え事をしていた所為か、何十分も経った様に感じたがものの数分経っただけだったらしい。
スマホを出して時間を確認したらいつもなら教室前まで行ったくらいの時間だった。
(はぁ〜、やっぱり氷城さんに会いに行ったのが決定的になったのか)
今日は準備に費やそうなんて、思いながら教室へと向かって行った。




