一時
「今日も早いね!」
今日も元気に僕に声を掛けてきた。
あの事があっても僕に声を掛ける勇気凄いと思う。正直僕だったら無い。
「あれからどうだった?」
「どうって何が?」
「いやね〜、あの後何処かに行っちゃったから何か考えがあるのかなって思って」
「あ~、ちょっとね」
「そうなんだね!」
そんな会話を繰り広げ、時間を潰していると窓から生徒達が登校して来る姿が見えてくる。
こう見ていると、結構早く来ている生徒が多く見られる。現在の時刻は朝の七時くらいだ。
普通の高校とかなら今頃起きて行く準備をする時間帯だろう。
朝日を浴び、学園へと登校する。それはこの学園でも変わらない。
唯一変わるのは、能力について秀でている事だろう。
施設も何もかもお金が掛かっている事が見て分かる。これについては流石の一言だろう。
この学園は一部政府が噛んでいる部分もある為、豪華な所は豪華だったりする。
(もうすぐ朝礼か……)
この学園の凄さを考えていたら、もうすぐ朝礼の時間という時期まで過ぎていた。
生徒も既に全員が集まっていた。遅刻者ゼロ。皆一様に向上心の塊なのか誰一人遅れようとしない。
「あ~……全員、いるな。ご丁寧に席にまで着いて」
分かる。僕は特に話す相手とか藍沢さん以外にいないし、基本自分の席で座って過ごしている。別に寂しくないし……違うし……
「え〜、俺等のクラスはAクラスとこの間総力戦をしたばかりだから来月の三日まではインターバルとして行う事はない。だからその間は訓練なり休養なりしてくれて構わない」
先生から今月中は何をしても良いというお墨付きをもらった。だが、あれだな、決闘のルールなんかを色々を聞いておくか……前に和田から聞いた事を疑っている訳じゃないが、先生なら公平にというかまぁ、教えてくれるだろう。
「朝礼はこれくらいにして、今日も授業や訓練頑張れよ~」
そう言い残し、教室を去って行った。
職員室に向かうのだろう。その前に追いついて話を聞かないと……
教室を出て、先生の後を追おうとしたら教室のドアの横出て壁にもたれかかっている先生が見えた。
「うおっ!?いたんですか先生」
「ああ、お前が何か言いたげな顔してたからな。一応待ってたんだ」
「……そうなんですか。有難うございます。実は……」
ちょっと待て。先生に正直に話したら学園側に話してしまったら、藍沢さんという隠れ蓑が無くなってしまったら僕という存在を探すために学園側も全力で捜索するだろう。
あの総力戦は氷城さんの我が儘だったとはいえ、学園公式の試合だ。
間違えている、いや一概に全て間違っている訳ではないが、氷城さんを倒したのは僕だった。
だが、バッチを壊したのは藍沢さんだ。倒した人と壊した人が違う人物だということだ。
そこに問題がある。もし再調査なんかが入って、僕の存在がバレてクラスメイトにバレた日には……
……話す訳にはいかないな。
「実は、生徒手帳見て思ったんですけど、決闘ってどんな事なんですか」
「……なんでそんな事気にすんだ?」
「今後の為です」
嘘だ。もう目と鼻の先の出来事だ。
和田との決闘。それが総力戦のインターバルが残り約三十日。
それまでにどうにかして、撤回させるか何かさせなければ……
その為に決闘についてもっとよく知らなければ。
少し背中に焦りの為か一粒の汗が伝う。
「……そうか……。分かった、説明してやろう」
ふぅ。一先凌げたか。
「決闘とはな……」
先生からの説明を要約すると和田から聞いた説明と殆ど同じだったが、一つ聞いていない事が聞けた。
これだけでも儲け物だ。コレを聞いていたと聞いていなかったとはだいぶ違う。
となれば……
「有難うございました」
そう言い教室へと戻っていった。
僕の歩く音が聞こえてくるが教室から去って行く足音が聞こえなかった。
何か先生がコチラを凝視しているのか疑っているのか。
その日は何事も無く過ごした。




