隠し事
この人なら僕がここに来るのも分かっていたと思ってしまうのは僕の思い込みかな?
「貴女なら分かってませんでした?」
「何の事でしょう」
本当に分かっていないのか……それとも分かった上でその振りをしているのか。分からないな。
ここにいたのは偶然だろうが、僕が探しているのはなんとなく分かっただろう。
僕は、実力がバレたくない。それはこの前の総力戦でなんとなく分かったんじゃないか?
この前は能力を使わず、身体能力で何とかした。それだけの身体能力があるのにFクラス。まぁ能力使えないんだけど……
兎に角、あの戦いで実力は出し切っていない。
それに、あの場で最適なのは関節技だった。僕自身のオリジナルの技は出していない。
その事から、実力を隠している事くらい氷城さんなら察せるだろう。
というか、僕にとっては都合が良い。
僕の秘密を握る事で興味を惹かせる。その事で多少リスクはあるが、協力関係や融通を利かせる事ができるだろう。っていうかそうであってほしい。
「単刀直入に言います。僕の事を秘密にして欲しいんです」
「……それは何故でしょう」
分かった上で言っているのだったら、いい性格しているな。
「クラスメイト達が、貴女を倒した人物をいずれ探すために聞きに来ると思うんです。だからその時に誤魔化して欲しいんです」
「私にそうするメリットがございませんね」
「……なら、僕が『可能な範囲で言う事を聞く』という事で聞いてくれませんか」
「可能な範囲……ですか」
何か考え込むように遠くを見ている。
安直な考えだがコレが今一番打てる手の一つだ。誰かに頼むのもこの世界だと難しい。『実力主義』コレが僕の考えている事を邪魔する。
所詮この世は弱肉強食。
誰かに頼るのならば上へは登れない。だから、頼る事は『弱者の考え』そういう考えが普及している。
それは分かっている。
だが、打てる手は全て打つ。そして僕の秘密を隠し通す。
「……一ついいですか?」
「何ですか」
「何故貴方は、そう考えるのですか」
「……それは、どういう意味ですか」
「そのままの意味です。何故貴方は、そこまでして隠そうと考えるのですか」
「……」
それを言われると、僕自身もどうしてかは『分からない』としか答えられない。というか僕自身が聞きたいくらいだ。
何故、この世界で、全てが実力主義という世界で実力を隠して生きていこうと思ったのか……
それは……




