真実
手短にって言ったからね、単刀直入に聞く。
「……」
呆気にとられているのか、それとも別の理由があるのか……
答えられるまで待つ。それだけぼ、いや俺にとって重要な事だ。
「なんで、って私は本当に偶々……」
「いや、偶然じゃない」
「え?」
「見ていたはずだ、俺と氷城さんの戦いを……」
「……」
そして再び無言で見つめ合う。藍沢さんの目からも情報を得る為に。
視線を逸らすとは心理学的に意味がある。
例えば、照れや恥ずかしさ、興味がない、思考に集中したい、緊張、罪悪感、嫌悪感などといった理由が、
確か視線を上下左右にする事にも意味があった筈だ。
右上ならば嘘をつく。左上ならば思い出しているといった風に。多分誰しも経験したことが無意識的だがあるはずだ。
目とは情報を大量に含んでいる。少しの動揺が目に表れる程だ。
「……」
未だ互いに無言。でも、
「どうしたの、答えられない」
少し威圧めに声を掛ける。すると、
「……分かったよ。話すよ」
ようやく口を開き、あの時の事を話すらしい。
「……あの時、草の中で隠れてたんだけどね、ヨル君と氷城さんの戦いを見てたのはホント。だけど、あの状況で私に出来ることは限られていた……」
「……そうだね。あの場で馬鹿正直に出てこられても何も策がない状態だと邪魔でしかなかった」
正直本当に邪魔だった。決して共闘を考えなかった訳じゃない。寧ろ氷城さんの言葉を聞いて一番最初に思いついていた。
だが、もう一人の能力も分からずに合わせる事も難しいかっただろう。
「だから、せめて能力でサポートしようと思って……」
能力?サポート系か?
何にしてもサポートしようとしてくれていたのか……てかしてたのか
「……まぁ、それは有難う」
「あ、うん……!」
少し嬉しかったのか頰が赤らめ笑顔になった。緊張した空気もなくなり、多少やんわりとなった。
「それじゃあ、聞いてもいいかな?どうしてあの時僕の名前出さなかったのか」
「それは……なんとなく出さない方が良いのかなって、思って……」
なんとなく……か、どういう偶然か藍沢さんはそういう風に捉えてくれたおかげで僕の実力が公にならずに済んだ。
今バレるのはあまりよろしくない。だから、それは正直助かった。
「成程。……そういう事か」
取り敢えずはそれで納得していていいだろう。兎に角今はそれでいい。
周りに、特に学園関係者にバレないのなら……
ん?……なんで学園関係者にバレたらいけないんだ?




