34. 好感度の上がりが悪い 〜ミリカside
3学年に入り、これまで順調に攻略を進めていたミリカに悩み事が生まれる。
それは、アレックスの好感度の上がり具合が悪いように感じることだ。
サイラス、ジャック、アーベルは順調に好感度が上がり、だいぶミリカに心を奪われているのが見て取れる。
ミリカを見つめる時の表情は嬉しさが隠せていないし、2人きりで話す時の言動もかなり甘くなってきた。
一方でアレックスは話しかけても困ったように微笑んだり、あまり心を許さないよう気を張っているように感じる。
きちんとイベントをこなして確実に好感ポイントは貯まっているはずなのに、どこか壁を感じるのだ。
(アレックスを攻略しないなんてことは、あり得ないのよ)
アレックスはミリカの前世の一推しキャラだ。
前世では金髪碧眼の超絶イケメンとの恋愛など2次元の中でしかあり得ないことであったが、今世では目の前で動き、しかも手の届くところにいる。
この機会を逃すなど考えられないのだ。
一推しキャラだっただけに、ミリカはアレックスの為人を熟知している。
その上で、心惹かれているくせに何故ミリカと一線を引きたがるのか、アレックスの心境を考察してみることにした。
2週間ほど気づかれないようアレックスを観察した結果、ミリカはある結論を導き出す。
(アレックスは自分に婚約者がいることを気にしているんだわ)
休み時間や移動の際にアレックスが何度かユリアンナを目で追っている姿を見かけた。
始めはユリアンナがミリカに嫌がらせしないよう見張っているのかと思ったが、以前はユリアンナを明らかに避けていたのに、最近は時々声をかける様子が見られる。
つまり、ユリアンナに歩み寄ろうとしているのだ。
(ユリアンナを嫌っているはずなのに……一体何故?)
しかしアレックスがユリアンナを見る瞳には恋情のような熱は感じられない。
それなのにアレックスがユリアンナを気にする理由は、ひとえにユリアンナが『婚約者だから』だろうとミリカは考えた。
アレックスは優しく思いやりがあるが、同時に正義感を強く持っている人物だ。
婚約者がいるのに他の女性にうつつを抜かすことは良心が咎めるのだろう。
それを証拠に、衆目の中でミリカが話しかけると距離を大きく取ろうとするが、人目のない場所だと少しだけ壁が薄くなる。
(そういう真面目なところもますます素敵だわ………だけど)
今はアレックスが自制しているために好感度が頭打ちの状態だと思われる。
ゲームでは、アレックスがユリアンナを気にしてミリカとの関係を踏みとどまるような描写は無かった。
予想外の展開に、ミリカの心に僅かに焦りが生まれる。
(ユリアンナとの婚約がなくなれば私との仲を深めてくれるかしら?)
ユリアンナの断罪を早めてさっさと婚約破棄させようか。
いやしかし、本来は卒業パーティーで断罪される予定であるゲームのシナリオを大きく変えることで、どのような弊害が起きるかが分からない。
ミリカはアレックスの気持ちを自分に向けるにはどうすれば良いか、考えを巡らせる。
そして、ひとつの解決策を考え出した。
◇
「好感度の上がり具合が悪い?」
「そうなのよ」
ミリカは放課後に学園外のカフェにユリアンナを呼び出して、解決策を提案することにした。
「サイラスとジャックは問題ないんだけどね。アレックスが………たぶん、婚約者がいるのに他の女性と親しくすることを避けてるみたいなの」
(まあ、それが普通の感覚だけどね)
ユリアンナはアレックスの倫理観を少し見直したが、それはそれで計画に支障が出てしまうので、黙ってミリカの話の続きを聞いた。
「それで、このままだと好感度がずーっと頭打ちになっちゃって、アレックス攻略が失敗しちゃうと困るじゃない?だから、解決策を考えたの」
「解決策?」
「そう。それにはユリアンナの協力が必要なの!」
ミリカはユリアンナの手を両手で包んで、懇願するような表情を向ける。
「私は何をすれば良いの?」
「………『ミリカ・ローウェン暗殺事件』を起こしてほしいの」
ミリカからの提案に、ユリアンナは眉を顰める。
「それはやらないって最初に約束したでしょう?」
ミリカに初めて話しかけた入学式の日、ユリアンナは確かに「ミリカの殺害計画以外は協力する」と告げている。
実はアレックスルートでユリアンナが処刑をくだされることになったきっかけがこの『ミリカ・ローウェン暗殺事件』なので、ユリアンナがこれに加担してしまうと処刑になる可能性が高くなってしまう。
いくら公爵令嬢といえど、貴族を手にかけようとする罪は非常に重いのだ。
「アレックスはユリアンナに気を遣ってるみたいなのよ。一応、婚約者だから。私に惹かれないよう我慢しちゃってるの。だからアレックスの心をこっちに向けるには、完全にユリアンナのことを見限らせる必要があるのよ!」
婚約者であるユリアンナに気を遣ってミリカに近づきすぎないようにしている。
確かに正義感に溢れ義理堅いアレックスなら、そう考えても不思議はない。
そこでユリアンナが決定的な罪を犯せば、アレックスもユリアンナを見限って素直にミリカに想いを伝えるようになるのかもしれない。
………だが、しかし。
「………ごめんなさい、やっぱり無理だわ。私は死にたくはないのよ」
申し出を断ったユリアンナだが、ミリカは必死の形相で食い下がる。
「そこを何とかっ!このままだと、アレックスの攻略が厳しそうなの!ユリアンナが処刑にならないよう、絶対に被害者の立場から嘆願を出すから!!」
「嘆願?」
「そうよ!被害者である私が『処刑はやめてほしい』と言えば、その願いを聞かないわけにはいかないでしょ?ついでにユリアンナもちゃんと反省したように見せれば、必ず情状酌量で国外追放に落ち着くわ!」
被害者からの嘆願。
愛するミリカの頼みなら、アレックスも処刑は回避しようと国王に進言してくれるのかもしれないが……。
なおも渋るユリアンナの手を、ミリカは両手でぎゅっと握る。
「ねぇ、お願い。ユリアンナが私の夢を叶えてくれれば、私がユリアンナの夢を叶えてあげる。私たち、友達でしょ?いきなり異世界に転生して不安だったけど、ユリアンナに出会えて本当に良かったと思ってる。2人で夢を叶えて、2人で幸せになろ?私を信じて」
食い下がるミリカに、ついにユリアンナが折れる。
「……分かったわ。ミリカを信じる。ミリカには私の代わりに王子妃になってもらわないといけないしね」
「っ……!ありがとうっ!!ユリアンナ、大好きっ!!」
ミリカは嬉しさのあまり、ユリアンナに抱きつく。
ゲームのエンディングが段々と近づいてきている。
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