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31. 大夜会の主役

 今日はゲーム開始以降、2度目の『初冬の大夜会』。

 ユリアンナは、前回の大夜会の後の「ドレスを贈ってもらったことがない」という嫌味を真に受けたらしいアレックスからのドレスを贈りたい旨の打診を丁重に断り、今回も自分で誂えた豪華絢爛なマリンブルーのドレスで派手に着飾っている。


 今回の大夜会では、『魔獣の森合宿』でレベル9魔獣を討伐したアレックスグループの4名に、国王から『若葉褒章』が授与される。

 『若葉褒章』は労うべき功績を上げた未成年の者に授与される褒章で、それ自体に権威はないものの、与えられるだけで大変な栄誉であることは間違いない。


 学園の行事に対して褒章を授けるのは異例中の異例だが、要するに結界の管理を怠った国の不始末で起きた事件ということで、「ごめんね!これあげるから許してね!」的な意味合いでの授与である。


 国王が大夜会の宣言をする直前、アレックス、サイラス、ジャック、ミリカの4名を衆前に呼び、『若葉褒章』の授与を告げた。

 夜会に参加している貴族たちは驚きどよめいたが、以前その事件が話題になっていたこともあり概ね温かく称えられた。


 しかし人々の注目を最も集めたのは、第二王子アレックスでも、公爵子息サイラスでも、騎士団長の子息ジャックでもなく、名前も知られていない弱小貴族のミリカである。



 ───ミリカ・ローウェン?なぜそのような無名な令嬢が、殿下たちのグループに?



 そのような無名な令嬢が名門ゴールドローズ学園に通っていることも不思議だが、なぜアレックスたちとグループを組むに至ったのか?

 ……もしかして、殿下たちからの()()()()()()()のであろうか?


 貴族たちがざわめく中、ミリカは多少恥ずかしそうではあるが、周りに満面の笑みを振り撒いている。

 壇上の4名がひとしきり手を振り終わると、国王が大夜会の開会を宣言する。


 すぐに王族のファーストダンスが始まり、ユリアンナはアレックスに手を引かれてホール中央でダンスを踊る。

 ユリアンナはこの後の()()()()()について考えていて、気もそぞろだ。

 気が付けばアレックスの顔を見ることもなくダンスを終えていた。


 ダンスが終わると、ユリアンナはいつものように〝認識阻害〟魔法をかけて人混みに紛れる。

 しかるべき出番まで様子を伺うためである。


 ある意味で〝本日の夜会の主役〟であるとも言えるミリカは、今日もエスコートを担当したジャックとダンスを踊っている。

 ジャックとのダンスが終わると、サイラスが歩み出てミリカにダンスを申し込む。


 サイラスとのダンスの後、アレックスはミリカに話しかけて少し談笑した後、ダンスをせずに別れた。

 確かゲームではダンスを誘っていたはずだが、ミリカが断ったというわけでもあるまい。


 ユリアンナがゲームとの齟齬に首を捻っていると、フリーになったミリカに続々とダンスの申し込みが入る。

 第二王子の覚えめでたい令嬢に取り入ろうとしてなのか、単にミリカのことを気に入ったからなのかは分からないが、美しく着飾った令息たちに囲まれたミリカはアワアワと目を泳がせている。


 そしてそれが、ユリアンナ登場の合図である。

 ユリアンナは〝認識阻害〟魔法を解き、颯爽とミリカの前に現れる。


「あら、阿婆擦れミリカさんは相変わらず男性を侍らせているのね」


 扇で口元を隠したままミリカに群がる男性たちに視線を遣ると、男性たちは顔を顰めながら一歩ずつ後退る。


「あ、阿婆擦れ……?」


「本当のことでしょ?あれだけアレク様に近づかないよう忠告していたのに、どうして一緒にグループなど組んでいるの!!婚約者がいる男性に擦り寄るなんて、阿婆擦れのすることじゃない!」


 ユリアンナが大袈裟に糾弾を始めたため、周囲にいる人たちは動きを止めて2人に注目する。


「擦り寄ったなんて、そんなことはしていません!アレックス殿下は私を助けてくださっただけで………」


「お黙りっ!!男爵家の娘の分際でわたくしに口ごたえするな!!」


 激昂したようにミリカを怒鳴りつけた後、ユリアンナはニヤリと口元を歪めてゆっくりとミリカに近付いた。

 そしてミリカの耳に顔を寄せ、ミリカにだけ聞こえる声で何かを囁いた。

 それを聞いたミリカの顔が一気に青褪める。


「………いいこと?平和に生きていきたいなら、決して目立たず日陰で生きていきなさい。二度とわたくしを苛立たせるんじゃないわよ?」


 そう言って、ユリアンナは高笑いをしながらその場を去った。

 その場には青い顔をして俯いたミリカがポツンと取り残される。

 2人のやり取りがあまりに異様だったため、誰もがミリカに声をかけることを躊躇していた。


 そんな時、一人の人物がミリカに近付いてきた。

 人の気配にミリカが顔を上げると、美しい金髪にアイスブルーの眼光が鋭い青年がミリカに向かって手を差し出している。


「……ミリカ・ローウェン嬢。私はユリアンナの兄、アーベル・シルベスカ。愚妹の蛮行を謝らせてくれないか」


 そう、ミリカはこの大夜会で、シナリオ通りに最後の攻略対象者であるアーベルと出会ったのであった。




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