#090 夏祭りイベントの気配! 私たちは強制参加!?
ゼフィルス君から〈生徒会〉のパイプ役を頼まれてしまいました。
纏めると、もし〈エデン〉が何か困ったとき、〈生徒会〉にいくらか融通してもらえるよう頼めるようにしておいてほしい、とのことです。
つまり信頼を勝ち取れ、ということでしょうか?
具体的にはハンナはいつもの仕事をこなしていれば問題ないから、とゼフィルス君に言われましたので私はいつも通りの仕事をこなすことにしました。
あまり難しいやり取りは私には分かりませんしね。ゼフィルス君やシエラさんってどうしてあんなに色々考えることが出来るのでしょう? 私には出来る気がしません。
なぜかゼフィルス君からは「ハンナはそのままでいてくれ」としみじみ言われましたが、あれはどういう意味だったのでしょう?
それはともかくです。
私は〈エデン〉での活動、ノルマの納品やダンジョンの攻略を手伝いつつ、〈生徒会〉での活動も本格的に始まりました。
ムファサ隊長やベルウィン副隊長、それにヤークス書記さんなどは相変わらず〈キングアブソリュート〉の手伝いに出向しているので〈生徒会〉で活動するのは主に庶務担当のチエ先輩、会計のミーア先輩、隊長代理のローダ先輩、副隊長代理のフラーラ先輩、そして見習いの私、アルストリアさん、シレイアさん、サトル君の8人ですね。
ある日〈生徒会〉に行くと、隊長席に座るローダ先輩からとあることを告げられました。
「さて夏休みが終わるまで残り3週間だ。そして8月最後の2日間は夏祭りが行なわれるからね、主導は学園とはいえ僕たちも色々と準備しなくてはならない」
そう言って立ち上がるローダ先輩は相変わらず漆黒で黒くて黒い装備姿でした。でも肌だけは真っ白です。改めて見てみるとちょっとお化けっぽいですよね。夜の校舎で出会ってみんなで悲鳴を上げたのも今ではいい思い出です。
それはともかく、行事が始まります。
今度は〈総商会〉の一件みたいなトラブルではなく、学園行事です。
毎年夏休みの最後の2日間、8月30日と8月31日は夏祭りがあるらしいのですが、今年は9月1日が日曜日だそうです。9月2日から通常授業が始まるために片付けの時間が1日取れるとの事で余裕がありますね。
とはいえこれは学園がやるべき事で、〈生徒会〉は主に売られる品の品定めなどがメインですね。
夏祭りの出し物は自由参加です。
ただし参加には手続きが必要で、学園にはちゃんと何を売るかの提出が必要となります。
お祭りだからとはっちゃけて大変なものまで売られないようにするためですね。
提出書類のものと売られているものが同じかどうかのチェックは当日学園が行なってくれるので、各学生さんは書類を学園に提出する形です。
では〈生徒会〉の仕事とは何かというと、私たちは祭りによって必要になる素材類の供給面を担当することになります。
お祭りと言えば色々と財布は緩み、それを狙ってたくさんの商売がなされますが、学生は商売慣れしているわけではありませんからね。
利益をしっかり出すとか、素材をしっかり用意するとか、その辺の相談などを請け負うんだそうです。
また当日は学園と同じく、売られている物をチェックして、危険なものや大変なものが売られていたら学園に即連絡を行なったりする仕事もありますが、これは余裕があればで良いそうです。
ローダ先輩の説明にチエ先輩も補足します。
「後は夏祭りが終わった後ね。あまりにも素材が供給過多になったり、素材が余りすぎて放出する人が絶対出てくる。反対に売れすぎて夏祭りの後品薄になったりするアイテムなどね。それらを市場から回収、もしくは供給して市場の混乱を抑えるのも私たちの仕事ね」
なるほど。学園の一行事で市場が混乱する可能性があるので〈生徒会〉でバランスを取るのだそうです。
私たち1年生の初参加組は先輩方の言うことにふむふむと頷き、メモを取っていきます。
勉強になりますね。
そんな時、ローダ先輩とチエ先輩の口から爆弾発現が出てきました。
「後は、〈生徒会〉メンバーは出店側に強制参加だからその辺よろしく頼むよ」
「生産を司る〈生徒会〉メンバーとして生半可な物を出してはだめよ。これが今期の〈生徒会〉メンバーの力だと、内外に示す必要があるの」
「「「……へ?」」」
最後にとんでもない話が飛び込んできました。私、アルストリアさん、シレイアさんの言葉が重なります。
私たちの反応を見てローダ先輩は話を続けます。
「〈生徒会〉がどれほどの力を持っているのか示すのは重要だ。〈生徒会〉とは生産職の生徒の中でも特に優秀な生徒をスカウトして創られている組織であり、学園の公式ギルドでもある。〈生徒会〉の能力とは学園の能力でもあり、学園が認めた優秀な生徒の集まる場である。僕たちは生徒の模範となる立場として生徒を引っ張り導いていく義務を持つんだ」
「ローダ、闇が漏れているわよ。――こほん、ローダの話は少し大げさだけど、あながち間違いというわけではないわ。要は他の学生から憧れるべき模範となり良き頂であり続けよ、とそういうこと。具体的に言えば手を抜かず他の生徒が唸るほどの作品を作り上げること、というわけね」
「まあ、要は運営側で全力を尽くせば良いということじゃな」
ローダ先輩とチエ先輩の説明、そしてまとめてくださったフラーラ先輩の言葉は、よく分かりますね。さすがは最上級生です。
私もこんな上級生になりたいです。
あ、そうではありませんでした。
えっと、つまり、私たちも夏祭りは強制参加ということですね。




