#027 旅のお供にアイテムを。パーティ名決定!
パーティ名を決めることになりましたが、私には良い名称が思い浮かびませんでした。
いつもゼフィルス君がカッコイイ名前に決めていたのでお任せしていたのです。
ですので、思い切ってミーア先輩に聞いてみました。
「でもパーティ名ってどう決めたらいいのでしょうか?」
「そうねぇ。そのパーティの特徴やらがほとんどだけど、中には目標を名前にするところもあるわね」
「目標ですか?」
ミーア先輩の言葉を聞き返してしまいました。
「そうよ。〈採集無双〉や〈お姫様になりたい〉みたいなパーティね」
「あ! なるほどです」
確かに〈採集無双〉は目標を掲げているパーティ名でした。
今はまだ駆け出しですが、将来的には採集で凄い人物になるぞ、という願望が現れていますね。
もう一つの〈お姫様になりたい〉は1年生のパーティでトップのところの名称です。ギルドで見れば私の所属している〈エデン〉が1年生トップですが、パーティでは〈お姫様になりたい〉がトップなのだそうです。
このパーティ名はかなり願望が現れていますね。
「そうなると、私たちが目標にするのはなんでしょうか?」
「そうですわね、そもそもの発端はシレイアさんでしょう? シレイアさん、何か取り入れたいパーティ名などありますかしら?」
「ふえ?」
そうでした。最初はシレイアさんが私の〈爆弾〉レシピを借りたいと言ったのが始まりで、その後レシピを借りるには対価が必要だって話になり、シレイアさんに作業のお手伝いをしていただくことになり、そして商品の量産に話が進んで、商売しようということになったのでした。
かなり流されてここまで来た気がすしますけど、きっと気のせいですね。ゼフィルス君ならそう言います。
アルストリアさんから急に話を振られて一瞬ふえってしたシレイアさんでしたが、次にはきょとんとした顔でこんなことを提案しました。
「えっと〈ハンナ様の錬金生産工房〉なんかどうですか?」
「そこで首を傾げられても困りますわ。それにそのパーティ名は却下しますの」
シレイアさんにお聞きした答えがこれでした。すぐにアルストリアさんが却下します。
えっと……シレイアさんの中で私はどういう立ち位置なんでしょうか。ちょっと気になります。
「シレイアさんは本当にハンナちゃんが好きだよね」
「はい! ハンナ様は私の憧れで目標です! あのボスを一撃で倒してしまった光景が忘れられません!」
「お、大声で言わなくてもいいですシレイアさん、恥ずかしいですから」
私に憧れただなんて、ちょっと照れます。
シレイアさんは素直な人です。
「それでパーティ名はどうしましょうか?」
「うーん。……ハンナちゃんは、何かこんなの加えたらとかない?」
「え、私ですか? そうですね……商売をするのですから、何を商売をしている場所ということが分かるような名称、とかでしょうか」
「なるほど~」
「ハンナさんのアイデアはとても良いものですわ。なんでしたら何を売りにしているのか分かれば、なお良しですわね。ハンナさんは何を販売するつもりですの?」
「えっと、目玉商品が攻撃系アイテムですね。でもダンジョンで使うアイテムなら並べたいと思っています。ポーション系ですとか、敵から逃げるためのアイテムですとか」
「要はダンジョンお役立ちアイテムですわね。消費アイテム系の……」
「お、〈お役立ち錬金店〉なんて、いかがですか?」
「そうですわね、もう少し捻りを加え、味を出したほうがいいと思います。ですが、方向性としてはよろしいかと思いますわ」
その後、ああでもないこうでもないとみんなでアイデアを出し合いましたがどうもしっくり来たものがありませんでした。
困りました。名称を決めるのってこんなに大変だったのですね。
ゼフィルス君は本当に凄いです。
「そういえばハンナさんは、なぜ【錬金術師】を? 〈エデン〉は戦闘ギルドでしたわよね?」
「あ、それ私も聞きたかったのよね。ハンナちゃんって〈エデン〉のみんなとダンジョンに潜ってるじゃない? 生産職なのに、なんで戦闘職にしなかったのかなって」
「あ、えっとですね……」
そうですね、普通生産職の方々は生産で経験値を稼ぎレベルを上げます。
モンスターを倒すことでもレベルを上げることができますが、生産職は生産が仕事、戦闘のお仕事をすると弱くなると言われています。
これは戦闘スキルにビルドを振るからですね。
戦闘に振った分だけ生産の育成ができなくなりますから。
そして戦闘スキルにビルドを振らない場合、ダンジョンを攻略することは困難です。
当たり前です。
ですが、私はステータスが生産特化なのにダンジョンに潜っています。〈エデン〉のみなさんとです。
その理由ですが、――最初はゼフィルス君とダンジョンに行きたかったという、少し恥ずかしい理由でした。
ゼフィルス君は幼馴染ですが、学園に一緒に来るまでほとんど話したこともなかったのです。
その隙間を埋めるように私はなるべくゼフィルス君と一緒にいるように、いられるように、頑張ってきたのです。
この攻撃アイテムもその一環、私がダンジョンでみんなに、そしてゼフィルス君に付いて行く為に必要なものでした。
ですがそれもだんだん変わってきて、今ではゼフィルス君のダンジョン攻略を支えてあげたい、という思いの方が強くなってきています。
ゼフィルス君のあの無邪気で心からダンジョンを楽しんで攻略している姿を見ていると、どんどんその思いが強くなっていくのです。
そうですね。それが私の目標ですね。
私は、ゼフィルス君の役に立って、ダンジョン攻略をしたかったのです。
いえ、正確には楽しくダンジョン攻略するゼフィルス君を支えてあげたかったのです。
そう考えたとき、一つの名前が頭に浮かびました。
「――思いつきました。〈旅の道連れの錬金店〉というのはどうでしょう?」
「旅の道連れ、ですか?」
「〈旅の道連れの錬金店〉。……いいですわね! ダンジョンのお供にアイテムを。うん、ピッタリな感じがしますわ!」
「いいわね! ハンナさん、それいいわよ!」
なんだか突然閃いた感じですが、これがとてもしっくりきました。
みなさんも大絶賛で、私たちのパーティ名はこうして決まったのでした。
私とシレイアさん、アルストリアさん、ミーア先輩のパーティは、
―――〈旅の道連れの錬金店〉。
ダンジョンのお供に使うアイテムを売るパーティです。




