#184 〈魔錬筋肉加工台〉でコテちゃんパワーアップ!?
今日も多くのお客さんが来ることが予想されるので早めに来たら、ゼフィルス君からとても良い物を貰いました。
昨日ダンジョンの隠し部屋の宝箱で入手したみたいで、私が欲しかった錬金作製ゴーレムの〈加工台〉だったんです。
さらに明日には〈学園出世大戦〉が始まります。
もちろん〈エデン〉も出場します。
これは、私にゴーレムの試作品を作れと神様が言っているのかもしれません。
というわけでみんなが来るまで残り時間は少ないですが、ゼフィルス君に〈加工台〉の使い方を教わります。
「やり方はそう難しくはない。この〈魔錬筋肉加工台〉の上にゴーレムを置き、素材を使って錬金していく。〈錬金釜〉の板版がこの〈加工台〉だな」
「なるほど~」
ゼフィルス君の説明をさらさらとメモを書いていきます。
加工台の大きさは上級錬金釜と同じくらいしかなく、ゴーレムをその上に立たせると、腕とかがはみ出てしまいます。でもちゃんと乗りました。
「コテちゃん、調子はどうかな?」
「――――」
「うん。まずまずみたいだな。そのまま動かさないでくれ」
「オッケー。コテちゃん、そのまま動かないでね?」
「――――」
私が持っているゴーレムはこのコテちゃん1体のみ。
まだ試作品ですからね。やっとコテちゃんをパワーアップさせることができます。
「基本的に素材を混ぜるのは普通のゴーレムを作る時と変わらない。〈加工台〉にはいくつか種類があってな。この〈魔錬筋肉加工台〉だと主にゴーレムの身体能力そのものをパワーアップさせることができる」
「この前言ってた武器とかは?」
「あれはまた別の加工台で作る形だな。そっちはまだ未入手だ」
「そっかぁ」
「だが、先に〈魔錬筋肉加工台〉をゲットできたのは大きいぞ。これでゴーレムの中から加工すれば動きが格段に良くなるんだ。まずは細い伸縮性素材を錬金し、人工筋肉を錬成していくぞ」
「人工筋肉?」
「そうだ。それこそがゴーレムの動きを良くする秘訣だ。内部を人の筋肉に近づけることでゴーレムの動きをスムーズに、人へ近づかせることができるんだ」
人工筋肉、それだけ聞くとなんとなく昨日見たアランさんを思い出しますが、なんとなくゼフィルス君の言いたいことは分かりました。
確かに、筋肉を増やすと強くなるもんね!(単純にして明解)
早速ゼフィルス君の指示通り、昨日ゼフィルス君が〈岩ダン〉から発掘してきた素材を使って筋肉繊維を作り、それに外装を包んで腕にし、コテちゃんに装着してみました。
うん! 腕が太く、より強靱になった気がします!
「……なんか、筋肉チックになってないか?」
「? 筋肉を増やすと強くなるんだよね?」
「いや、そうなんだが微妙に違うというか……。まあいいか、練習だしな。ハンナなら最後には自力で良い感じのボディにたどり着くだろう」
よく分かりませんがゼフィルス君からの信用を感じます。まっかせてよ!
「まずは実験だ。ハンナ、コテちゃんにパンチさせたり物を掴んで動かしたりしてくれ」
「え? パンチは出来るけど、物を掴んで動かすのは出来るかなぁ。前にやったときは腕の動きがぎこちなさ過ぎてすっぽ抜けたんだよ」
「ああ。クレーンゲームみたいにちゃんと掴めないあれな。しかも動く度にぐわんぐわんアームが揺れて振り落とすやつ」
「?」
なんだかゼフィルス君が独特の表現をしていましたが、なんとなく伝わっているのが分かります。
でも止めないということは、ゼフィルス君には自信があるということです。
早速やってみましょう。
そして、その動きの良さは、動かした瞬間から分かるものでした。
「す、すごい! 右腕だけこんなに滑らかに動くなんて! わ、コテちゃん、パンチパンチ。ライトパンチだよ!」
「――――!」
コテちゃんが私の声に反応して右拳でシャドウしたのですが、目を見張るほどの動きを見せました。
肘! 肘ですよ、関節がスムーズです! なにこれ、わ、わ、連続でパンチできるよ!
今まで体ごと振りかぶって力ずくで攻撃することしか出来なかったのに、コテちゃん、腕の力だけでシュッシュってパンチしてます!
「これが人工筋肉!」
「な、凄いだろ。特に左腕は未改造だからその違いがよく分かる」
「う、うん!」
「それじゃ、次はこっちだな。ここに壊れやすい鶴の折り紙を用意した。壊さず潰さず掴み取ってくれ」
「コテちゃん、やるよー」
ゼフィルス君が指定してきたのはただの折り紙でした。
でも前のコテちゃんなら持つことは出来ても潰して壊してしまったでしょう。ゴーレムは力加減が苦手なんです。
ですが、今なら出来る気がします。
私はコテちゃんに指示を出し、力を入れすぎて壊さないよう、入れなさすぎずすっぽ抜けないよう気をつけます。すると。
「や、やったよゼフィルス君! コテちゃんが壊さず鶴を掴んだ!」
「やったなハンナ! これがゴーレムの可能性の大きな進歩だ」
「うん!」
これ凄いです!
もし人と同じことがゴーレムに出来てしまったらすごいことになるんじゃ。
確かローダ先輩も人と同じ動きをするホムンクルスの研究をしていたはずですし、やっぱりこれってとんでもないことだよね!?
そうおののいていたら、ガチャリと店の裏口から扉が開く音が聞こえてきました。
「ハンナちゃーんお待たせー!」
「おはようございますハンナさん。今日もよろしくお願いしますわ」
「おはようございます!」
「ミーア先輩! アルストリアさん、シレイアさん。おはようございます!」
裏口まで行くと、やってきたのはミーア先輩たちでした。
見れば、もうみなさんが来る時間になっています。
あわわ。早く今日の品の補充を作らないと!
「どうやら時間切れみたいだな。じゃあ、ハンナ、俺は戻るな。別に大変ならコテちゃんは間に合わなくても大丈夫だからな」
「う、うん。でもなんとか頑張るよ!」
「くれぐれも無理はするなよ。あ、それとこれ渡しておくな」
「ん? これってまさか」
「これに色々書いておいたから~」
〈エデン店〉が忙しくなると感じたのか、一緒にここまで来ていたゼフィルス君はすぐに帰っていきました。最後にとんでもないものを渡して。
……これはとりあえず仕舞っておきましょう。
こほん。
コテちゃんの作製について基礎は教えてもらいましたし後は自分で出来るでしょう。
時間は、後で作れるかな?
うん、頑張れば行ける気がします!
「よーし、がんばるよー」
私はコテちゃんと加工台とゼフィルス君メモを仕舞って気合いを入れ直します。
さあ、今日も忙しくなるよ。




