#151 学園祭開始! パレードがスタートしました!
みんなで最終確認です。
どの生産品がどのギルドのものなのか、間違えては大変です。
そしてギルドの名前も暗記は必須。ミーア先輩は〈生徒会〉メンバーなのですでにその辺は問題ないのですが、中にはとんでもない名前のギルドも紛れていて、口に出したら噛みまくるということもあります。
しっかり発声を行なって練習しました。
「ふう。こんな感じでいいかな?」
「完璧ですわミーア先輩。もう問題なさそうですわね」
「ふへぇ、疲れたよハンナちゃーんシレイアちゃーん、癒してー」
「はいはい。ミーア先輩、頑張りましたね」
「いい子いい子、です」
「先輩としての威厳が欠片も無くなっていますが、それでいいのかしらミーア先輩?」
アルストリアさんは絶対に成功させるため甘さは取っ払ってスパルタな指導なのでミーア先輩は私たちの胸に飛び込んで来ました。
労ってあげるのが後輩の役目です(?)。
「いいの。疲れたら癒しを求める。そこに先輩も後輩も無いわ。むしろ後輩に癒しを感じるのは普通のことなのよアーちゃん」
「それはそうですが、まあミーア先輩が良いならこれ以上は言いませんわ」
「はいミーア先輩。特製のリンゴジュースですよー」
「ありがとうハンナちゃーん!」
ミーア先輩、本当にここまで仕上げるのに大変だったみたいですから。たくさん癒して上げます。
これ振り付けまで全部覚えるの、大変でしたでしょう。
これも〈生徒会〉生産隊長になるためです。
とミーア先輩を癒していると、とある男子学生がこちらに歩いて来ました。
それに気が付いたミーア先輩の顔が一瞬で引きしまり、顔を上げてそちらへ向きます。
「やあ、ミリアス。そちらはどうですか?」
「ベルウィン、フラフラしているなんて余裕じゃない?」
その人は現在のミーア先輩のライバル。同じ〈生徒会〉のベルウィン副隊長でした。
ミーア先輩はベルウィン先輩に書類仕事をほぼ全部回された恨みがあるので顔が笑っていません。
「そうでもないですよ。ミリアスたちが様々な試みで挑んでくるので気が気ではありません」
「よく言うわ。そんなこと欠片も思っていないくせに」
「そんなことはありませんよ。ただ、お互い頑張りましょうと挨拶に来ただけです」
「ふーん」
糸目のベルウィン先輩が言うとちょっと本当かどうか判断に困ってしまいますね。
ミーア先輩は塩対応でしたが。
「ふう、どうやら嫌われてしまっていますね。では退散するとしましょう」
「そうよ。あなたに生産隊長の座は渡さないんだからね! 私が生産隊長になった暁には私が体験した書類地獄に閉じ込めてやるわ」
ミーア先輩がそう言って人差し指をビシッと突きつけると、ベルウィン先輩は苦笑して去って行きました。
その様子を見てミーア先輩がさらに憤ります。
「なによ、余裕ぶっちゃって」
「実際向こうもなかなかに知名度がありますからね」
「ぐぬぬ」
ベルウィン先輩は〈キングアブソリュート〉と共に幾度も上級ダンジョンへ向かい、現地で生産して攻略部隊を支え続けている方であり、〈生徒会〉で現副隊長の地位にいる方です。
今〈生徒会〉生産隊長に最も近くにいる人物であるのは間違いありません。
見た目は糸目でちょっと近寄りがたい感じですが、悪い人ではないです。悪い人なら〈生徒会〉には入れませんからね。
「ミーア先輩。機嫌を悪くしていると票にも影響しますよ。スマイルです」
「う、分かったわ。ニコッ、これでどう?」
「む、無理矢理感があります。引きつってるです」
「うっ」
「ミーア先輩、しっかりなさってください。深呼吸ですわ」
「うう、おのれベルウィンめ~、こっちの動揺を誘う作戦だったのね」
「深読みだと思いますよ?」
そんなこんなありましたが、とうとうパレードの、というか学園祭の始まる時間が迫ってまいりました。
時刻は10時。
「―――時刻は10時になりました! 只今より、迷宮学園祭を開催します!」
そんなアナウンスが学園中に響き渡ると、そこら中から歓声が聞こえてきました。
「「「「おお~!」」」」
私たちも歓声を上げて便乗します。
なんだか気持ちいいです! お祭りが始まったのだと実感しますね。
パレードの実行委員さんが素早く動きます。
学園祭開始と同時にパレードも開始です。
あらかじめ規制線が敷かれた道へ、決められた順番にパレードの車両がゆっくりと進んでいきます。先頭は、〈秩序風紀委員会〉隊長のメシリア先輩でした。それに先導されるように1台の大きくてゴージャスな車両が動き出します。あれは、
「ユーリ王太子殿下ですわね」
「ユーリ殿下の馬車、あれは〈からくり馬車〉ですね。昔ゼフィルス君が納品したやつです」
「そ、そうなのです!?」
パレードの先頭を走る車両は豪華な装飾で彩られた金ピカの馬車でした。
2頭の機械馬が引くあの馬車、とても見た目が改造されていますが、間違いなく〈からくり馬車〉、ゼフィルス君たちが前に依頼で学園に納品したやつです。
やっぱり〈キングアブソリュート〉からの依頼だったんですねあれ。
その〈からくり馬車〉の屋根には豪華な金色の鎧に身を包んだユーリ殿下が立っておられました。
しっかり見たことは無かったのですが、あれがラナ殿下のお兄さんですか。
すっごい人気です。
規制線の向こうにいるお客さんたちに手を振りながらゆっくり進んでいました。
なんだか圧倒されます。
「あれが本物のカリスマですわ……」
アルストリアさんが圧倒されて祈るようなポーズでユーリ殿下を見ていました。
でもあまり熱中してはいられません。
私たちも少しずつ車両を動かさないと、パレードで進む車両の順番は決まっていますから、遅れるわけにはいかないのです。
今回私たちの馬車は運営の人が運転してくれます。
私たちはその横を歩きながらサポートです。
さあ、ついに私たちの番がやってきました。
「「「ミーア先輩、頑張ってください」」」
「覚悟完了よ。やってやるわ!」
ミーア先輩。もう少しお淑やかにお願いします!




