#137 ついに本番。ゼフィルス君の上級装備大作製!
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その日、私たち上級生産組に重大なミッションが発表されました。
「今日は集まってくれてありがとう3人とも。今日集まってもらったのは他でもない。実は前々から言っていたとおり上級装備の作製をしてもらいたいからだ!」
そう言って登場したのはゼフィルス君です。
私とマリー先輩とアルルちゃんを前にして、ゼフィルス君は堂々と言い放ちます。
「あの、でもでもゼフィルス君。装備を作るって言ってもレシピが無いんじゃなかったっけ?」
「実は昨日手に入れた」
仕事が早いよゼフィルス君!?
元々私たち上級生産組は上級ダンジョン素材を加工して装備やアイテムを作製してもらうためにゼフィルス君が立ち上げました。
なので、上級装備を作製してほしいという話も前々からしていました。
ただ、それにはいくつかの壁があったのです。
まず最初に生産職の錬度。つまりは腕前とレベルですね。
マリー先輩とアルルちゃんは〈上級転職〉したてでレベルは低かったので、今までは練習に試作品のなんちゃって上級装備などを作っては素材に戻し、また作っては素材に戻しという作業続けていたようです。
「ま、こっちはバッチリやな」
「いつでも良い物作れるわ~」
しかし、これはいつの間にか解決してしまったようで、マリー先輩もアルルちゃんも自信に満ちていました。
ただ、これでも問題解決はしません。何しろ装備作りにはレシピがいるからです。
レシピのドロップは運次第。
ゼフィルス君は〈幸猫様〉のご加護を受けているのでドロップ確率を大きく底上げしていますが、しかしそんな望むものがそう簡単に手に入るはずありません。
ゼフィルス君は運を〈幸猫様〉に祈り、レシピをゲットするためにレアボス周回に挑んだのです。
ゼフィルス君は「1ヶ月は様子を見たい」と言っていました。「手に入らなかったら諦める」とも。
あの、そう言っていたのは昨日だった気がするんだけど。
もう手に入れたの? 早くないかな?
「ハンナの言いたいことはわかる。俺だって最初は驚いたぜ。――刮目せよ! これが証拠のシリーズレシピ全集だ!!」
そして目の前に置かれたものがじゃじゃんと自己主張していました。
これは、間違いなくレシピ、しかも装備レシピ全集!?
全集って本当にとんでもない価値のあるものなのですが!?
「ほ、本当に!? 本当にこれ、〈装備シリーズ全集〉なの!?」
「そのリアクションが見たかった!」
「ゼフィルス君!?」
ゼフィルス君はお茶目な所があります。
私の反応を楽しんでいますね!?
「分かる、分かるでハンナはん。いつもの兄さんの手口や」
「さて、説明が済んだところでハンナには、『魔釜』スキルで真素材を作製してもらいたいと思う。そして作製された真素材を使い、アルルとマリー先輩には本格的な上級装備を作製してもらうぞ!」
「任せといてや! 最っ高の装備を作ったるで!!」
「マリー姉と合作かぁ! 気合入ってきたわぁ!」
わわ! マリー先輩とアルルちゃんが燃えています!
わ、私も続かないと!
「が、頑張るよゼフィルス君!」
「頼むぜ! じゃあ早速始めるか!」
ゼフィルス君が相変わらず迅速すぎるんだよ!?
しっかり付いていかないと! 私はグッと手を結んで胸の前に持って来て、気合いを入れたのでした。フンス。
でも、腕に挟まれて自己主張が激しくなってしまった私の胸を見たマリー先輩が、すっごい目をしていたのには気が付かなかったことにしました。
ゼフィルス君から渡されたのはシリーズ装備のレシピ全集、その名も〈勇銀装備シリーズ全集〉です。
つまりゼフィルス君の装備ですね。
気合いが入ります。
「よし始めよう! やり方はすでに教えてあるしハンナもやったことあるんだけど、お復習いしながらやっていこうか」
「う、うん!」
「では手始めに〈闇角獣・ブレンモール〉の素材、〈闇角獣の魔皮〉から~」
「手始めにいきなり超高級素材に行く辺りがもう兄さんらしいわ~」
「お復習いって意味を絶対履き違えとるな。これ、中級で登場するボスの中で一番強いって言われているアレの、しかもレアドロップの魔皮やん……」
「ぜ、ゼフィルス君? あの、最初はもう少し軽い素材から」
「大丈夫、ハンナならできるさ!」
「し、信頼が厚すぎるよー」
ゼフィルス君からお復習いの意味でスキルの指導を受け、真素材を作り上げます。
「ふう、錬金起動、錬金開始」
自己暗示、ゼフィルス君に教えてもらったルーティンを使い、心を落ち着かせていきます。
緊張はしつつも腕だけは鈍らせません。
「〈闇角獣の魔皮〉を錬金釜に入れたら、〈中和剤・黒〉を注いで、あ、高品質のやつな」
「う、うん。入れました」
「そしたらそこへマリー先輩が提供してくれた上級の素材、その中でもモンスター素材のこれとこれを入れます。マリー先輩、いいかな?」
「構わへんわ。数は少ないし高いもんやけど、兄さんからもろうたレシピで練習がてら作った上級装備のダウングレード品が良い金額で売れてるかんな~。好きに使ってええで。その代わり、もっとええ装備作らせてぇな」
「マリー先輩の探究心には頭が下がるぜ! ということだハンナ。どんどん入れていこ~」
「は、はい!」
「ボス素材をベースに、そこへ上級のモンスター素材の力を注入していくイメージだ。元々上級ボスに足を踏み入れていた〈闇角獣・ブレンモール〉なら、パワーアップさせてやる事で上級ボス素材にまで昇華させる事が出来る」
「うん。イメージバッチリだよ! ――い、いくね! 『魔釜』!」
私の『魔釜』スキルはゼフィルス君に言われて真っ先に育て上げたのでもうLV10です。失敗は絶対にしません。
スキル発動の後、錬金釜の底には先ほどの魔皮が少し成長した姿で残っていました。
すぐにゼフィルス君がそれを取り出し〈幼若竜〉というスペシャルな『鑑定』アイテムを使って能力を見ます。き、緊張の瞬間です。
「よし! 良い出来だ〈闇角獣の魔皮(真素材)〉の完成だ!」
そこには〈闇角獣の魔皮(真素材)〉の名が有り、能力値もかなりアップしているのがわかりました。大成功です! 上級素材、作る事が出来ました!
私は安堵で溜め息が出てしまいました。
しかし、安堵するには少し早かったみたいです。
「さて、やり方は分かったな? じゃあ後の真素材作製はハンナに任せる。これ、組み合わせの素材リストな。系統を合わせれば良いだけだから覚えりゃ簡単だ。別系統の組み合わせをすると失敗するから気をつけろよ」
「は~い」
そのリストは、うん、すごい分かりやすく記入がされていました。
ゼフィルス君はこういうのを簡単に説明することが得意なんです。やってることはとても難易度が高いんですけどね。
私のお復習いが終わったので、今度は完成した真素材を持ってマリー先輩の方へ行くゼフィルス君を見送り、私は真素材の作製に着手し始めたのでした。




