#135 アルルちゃんの上級装備も販売開始です!
本日2話投稿!
前話読んでいない方は1回バック!
――装備品。
〈エデン店〉ではポーション類だけではなく、色々とアイテムも売っているのですが、その中には装備品も含まれています。
これは同じギルドのアルルちゃんの作製品で、大体が武器ですね。
一応お店には飾ってはあるものの、最近まで店は大混雑でじっくり見る暇が無かったためまだ一つも売れていませんでした。
武器は見た目より性能が命です。
性能をしっかり見なくては購入を検討すらしてもらえません。
そのしっかり見る時間が今まで無かったのですが、店が落ち着いてきた今なら武器エリアを作ってそこで見てもらう事が出来るでしょう。
「やっとうちの出番やな! いやぁ、あんまりにも連日店が大混雑やったからうちの出番は一生来ないのかと思うところやったわ」
「そんなことはありませんよアルルちゃん。私たちのポーションが落ち着いてきた今、アルルちゃんに〈エデン店〉を盛り上げてもらいませんと!」
「いきなり責任重大やな!?」
このマリー先輩と同じ訛り口調で私と同じかそれより小さい身体の子が、〈アークアルカディア〉所属のアルルちゃんです。マリー先輩とは同郷のようで背丈や口調もとても似ていますが、ドワーフさんですね。
アルルちゃんは【鍛治師】系の職業持ちで、〈エデン店〉がオープンする前日に上級職へと〈上級転職〉しました。
そのため〈エデン店〉に並ぶ武器はまだ上級武器ではありません。性能が良い中級武器ですね。
〈エデン店〉がオープンして十数日、アルルちゃんの上級武器の作製も順調に進んでいるとのことで、ようやくそれなりの数が揃ったそうです。
そろそろ売り出す機会だとマリアさんとメリーナ先輩は言います。
「今上級装備を売り出しているのはマリー先輩のところだけなの」
「でもマリーの所は繁盛しすぎて今は品切れ状態なのよね」
「上級職の生産職が現れて、上級装備が作製できると知ってから、学園では密かに上級装備ブームが到来しつつあるわ」
「上級装備が売り出されるということはまず無かったものね。おかげで学園中が暖まってるわ。ここで〈エデン店〉でも武器を売り出したと宣伝すれば、もう一撃よ」
「一撃ですか!?」
狩っちゃう気でしょうか!?
マリアさんとメリーナ先輩の目が狩人っぽくなっていたのはきっと気のせいだと思います。
というわけで、〈エデン店〉の内装を少し変更です。上級武器を十数点並べました。
「いやぁ~、これは壮観やな~」
店の壁に並べられた武器を見てアルルちゃんが感動していました。
ここに並べたのはまだ〈エデン〉が売ろうとしている上級武器の3分の1も出していません。
おそらくすぐに品切れになってしまうので、小出しにしていく計画です。目玉商品計画です。
そうして入荷をチェックしにちょくちょく来た人たちをターゲットにして宣伝するのだそうです。
マリアさんが品のチェック後、アルルちゃんに意見を聞きます。
「アルルさん、こんな感じでどうでしょう? 中級品も売れると思います」
「せやな。うちは売りに関してはシロウトやからプロに任せるわ」
アルルちゃんは生産特化なので売りの事は全部こっちにお任せです。
その方が良いと私も思います。
棚に飾られた装備にはしっかり名前、値札、能力値などが描かれ、一目で性能が見られるようになっています。
「はい。任せてください。バカ売れさせてみせますよ。それと作製の方は順調ですか? 素材の方が足りなくなりそうなどはありませんか?」
「楽しみやわ。それと素材の方はギルドのみんながレアボス狩りまくってくるからそれなりに揃っとるし、しばらくはこの品質で行けそうや」
「それは何よりです」
上級装備を作製するには当然素材が必要です。それも上級素材がです。
最近は〈キングアブソリュート〉が上級ダンジョンに潜っているので素材が一部流れてきますが、高価ですし数が全然足りません。
ですが、上級素材は何も上級ダンジョンでしか採れないわけではありません。
実は中級上位ダンジョンのレアボスのドロップも上級素材なんです。
普通はレアボスの素材なんか気軽にゲット出来ないと思うかもしれませんが、〈エデン〉なら出来るんですよね。ボスの周回に加え〈笛〉もたくさん持っていますから。
それで〈エデン〉は大量のレアボス素材を確保しています。
アルルちゃんが使っているのはそれの一部ですね。ドロップ一つ~三つをベースに中級素材を混ぜた上級武器、正確にはなんちゃって上級武器だってゼフィルス君は言っていましたが、それがアルルちゃんが今作っている武器ですね。
ゼフィルス君曰く、本物の上級武器というのはもう能力の数値が全然違うとの事でした。中級上位ダンジョンのレアボスは所詮上級に片足突っ込んでいる程度の中級ボス、とはゼフィルス君談です。
とはいえ普通の中級品よりなんちゃって上級武器の方が性能が高いので、これは上級武器だとメリーナ先輩は断言していました。これは上級武器なんです。
というわけでアルルちゃんの上級武器は販売が開始されました。
「うはぁ、なんやこれ。人が身動き取れなくなっとるやん!」
事前に〈エデン〉の鍛治師が上級職に就き、上級装備を作製、それを売り出すことにするという情報をニュースに流してもらったからでしょう、オープンと同時に人がなだれ込んできたのです。
「これは、予想以上でした。これでは買い物処ではありませんね」
「マリアちゃんはまだ詰めが甘いわね。アルルさん、ついでに3本上級武器をいただけますか? 外に展示品を置いて人をばらけさせましょう」
「任せるわぁ~」
メリーナ先輩が主導して3本の武器を〈エデン店〉の前の別々の位置に置きます。
なお、これは本物ではありますが、見本で非売品だそうです。見世物ですね。
売り物は店の中にあるので買うことにしたお客さんは中に入ってください、という感じでしょう。
店に来たお客さんの中には値段や性能を見たいだけという、目を肥やしたい人や冷やかしなんかの人も居るそうです。
ですが、それは武器が残っているからこそできる事、上級武器がすぐに売り切れるなんて誰でも予想出来ます。だからこそオープンと同時に人が流れ込んできたみたいですね。
「値段は、もう少し安くならないのか?」
「おいおい、俺なら一括でニコニコ払いできるぜ! 俺に売ってくれ!」
「俺ならそれに100万追加しよう! 俺に売ってはくれないか!?」
見たいだけという人が外に行ったら買いたい人たちの猛烈な競争が始まりました!
「はいはい、では抽選で決めますよ~。当たりのくじを引いた人に購入権を与えますね~」
さすがはメリーナ先輩です!
上手くお客さんを捌いていました。私も見習わなくてはいけません!
こうして〈エデン店〉の盛況はまだまだしばらくの間続いたのでした。




