5-3
ボサボサで傷みきった長い黒髪。
腐敗しきった全身の皮膚。
血でほとんど赤茶色に染まっているが、元は白かったであろう妙な服。
頬肉のただれ落ちてかみ締めた歯が見える顔。
白濁した両眼。
鬼のような形相。
どれも、俺の知っているハルメイの特徴ではない。
だが、それは紛れもないハルメイだった。
何で……ソフホーズ外に連れ出されたハルメイが、ここに?
やはり、外はもう化け物だらけになっていて、それがソフホーズに流入してきたということなのか?
じゃあ、もし外に逃げられたって――――――
化け物の群れを倒す、度重なる銃声の中で、ハルメイの頭蓋を破壊したその1発だけが、異常に大きく俺の鼓膜を揺るがした。
「ウワアアアアアアアアッ!!!!!!!!」
誰かの悲鳴が聞こえる。
結構遠く。男の悲鳴。
かなり近くで、今度は女が誰か、叫んだ。
「ダメ!」と聞こえたな。
また、少し遠くで別の女の悲鳴。
怒声?
――――――ィル――――
―――ィル君――――
「!!!」
いきなり頬を引っぱたかれた。
我に返って見ると、涙目のミキシルさんがいた。
「早く! 逃げるよ!!!」
言うや否や、俺の腕を引っ張って走り出した。
待ってくれ、マイクさんは? ターネックさんは?
見回しても、いるのはミキシルさんとネムさん、ベルトだけ。
ちょっと待って、さっきの悲鳴は?




