5-2
俺がハシゴへ近づくまでに、まず1番最初にいたターネックさんが無難に2階へ上がった。
そして、次に近かった俺が上がる。
窓からは次々にヤツらが入ってくる。
マイクさんが何処にあったのか、ヒモのようなものを思い切り引っ張った。
途端に積み上げられていた食料のダンボールが大きな音を立てて崩れた。
ヤツらは防ぐこともせずに下敷きになった。
最初はやったと思ったが、その下から元気に飛び出してきたヤツらを見て、焦燥感を取り戻した。
それを見たマイクさんは舌打ちをしながら走り出す。
「マイク!」
ミキシルさんが叫んだ。
見ると、片手サイズの機関銃を2丁持っている。
そして1丁をマイクさんに投げた。
マイクさんが受け取ると、2人同時に射撃を開始する。
小さな鉛弾を連射する銃声が広い教会内を何重にも反響して支配する。
迎撃は効いているようだ。
あの化け物もやはり銃で撃てば死ぬのか…。
「ベルト君、上がって!」
ネムさんがベルトにハシゴを上がらせている。
その下から追いかけるようにネムさんも上がってきた。
そういえば、今朝からネムさんはベルトを君付けで呼ぶようになった。
ベルトを他人として愛することに決めたらしい。
ミキシルさんとマイクさんはヤツらを撃ち殺しながらハシゴへ走ってくる。
「ミキシル、先に上がれ!」
「分かった。」
2人は一言ずつ会話を交わして、まずミキシルさんが上がってきた。
その間、マイクさんは下で敵を牽制する。
ミキシルさんが上がりきったところでマイクさんを呼び、マイクさんが上がってくるまで上からミキシルさんがマイクさんを援護した。
「ミキシル、皆を脱出用の窓まで連れてけ!」
「うん、皆こっち来て!」
ミキシルさんを先頭に、回廊を進んでいって一番頑丈な窓の前まで来た。
ミキシルさんが窓の施錠を手早く外す。
よく見るとその窓は外にハシゴがつけてあり、下に降りられるようになっている。
「私が先に行く。その後ベルト君、クイル君、ネムさんの順に降りてきて。ターネックはここで皆のカバー。」
「了解。」
ターネックさんは背面の腰に着けてあったさやから、ミキシルさんが持っていたのより少し小さめのナタを取り出した。
ミキシルさんはサーッと滑るように一瞬でハシゴを降りた。
その後、ベルトが急いで降り始める。
ミキシルさんも、ヤツらがこちらに気付くまで射撃をしなかったが、ベルトが半分ほど降りたところで気付かれた。
ベルトがどうにか降り切った後、俺が降りる。
降り切るとミキシルさんの近くで怯えながら待つしかできなかった。
久々にヤツらをリアルに感じる。
外で暴れているのを聞くだけの恐怖と、それが目の前に迫ってくる恐怖は別格だった。
ふと振り返って、我が目を疑った。
ここにいるハズのない、見知った顔がそこにいた。
「――――――は、ハルメイ…?」




