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ソフホーズ  作者: 尸音
23/27

最終章:救いの手

マイクさんは戻ってきて、あの2人が出ていったのを報告した。


外では盛んに銃声が響いている。



ミキシルさんはすっかり落ち着いて、ただボソッと「良かった」と言っていた。








―――外で、しかもかなり近くで、悲鳴がした。








「喰われたか。」


マイクさんは真顔で言った。



何というか、俺もこの時、心地良さを感じずにいられなかった。



人間なんてそんなモンなのか。





「クイル、お前はズーナ教信者か?」


「え?」


急にマイクさんが話しかけてきた。


「いえ、違います。」


「そうか。神の存在は信じるか?」



なんだ? 突拍子がなさ過ぎる…。



「別に…俺的にはどっちでもいいですが。」


「神……まぁ、ズーナ教の女神のラス・ブラムに関してはだが、善人にはかならず救いの手を差し伸べてくれる。逆に、悪人にはそれなりの制裁を下す。」


「はぁ…。」


「分かりやすすぎるくらいの善悪観だが、それが今実証されたな。」



そういって、ニヤッと笑った。


マイクさんはズーナ教信者なのか…。



「アジトを防衛用に教会に似せて造るという案も、最初は反対したんだ。神への冒涜だってな。でも、いつでも自分のアジトでラス・ブラムを拝めることになったんだ。結果オーライってやつさ。」


「そうですか。」



あの2人が外で喰い殺され、俺たちは中で生き延びるのが、善への救済と悪への制裁だと言っているのだろうか?






―――どうなんだ?



少なくとも俺は、決して善人なんかではない。



人の死を確認して心地良さを覚えるような人間だ。



それがどんな悪人の死でも、それに心地良さを覚える人間を善人と呼べるのか?



そもそも、あの2人も悪人と言っていいのか?



今思えば、彼らには彼らなりの正義があったのかもしれない。



人の歩んできた人生なんてそれぞれ違う。その中で構築する自分の信念もまたしかりだ。



何を基準に善と悪だ?



そう考えると、外を走り回る人喰いたちも、悪と呼ぶのは早計かもしれない。




…いや、自分たちを殺しうる存在はまず、俺らからすれば悪だ。



でも、その悪に殺された善が悪と化してまた善を襲うこの状況。







もし神様が実在するなら、いつ救いの手は差し伸べられる?



















バ―――――――ン



















「!!?」



銃声と、窓ガラスが割れる音が同時に響いた。


音の方向を見やると、何体もの死者に組み付かれて傷だらけのカールが、窓の向こうでこちらにショットガンを構えている。



そしてその銃口から煙が漂っている…!






…間違いない。






「ハハハハハハッ!!! お前らも道連れだァアッ!!!」



そのまま異常なテンションで高笑いしながらカールは引きずり倒され、断末魔を発した。



カールを貪るヤツらの中に、コマーの成れの果ても混じっている。





マイクが叫んだ。







「全員2階へ上がれ!!! 窓から脱出する!!!」









―――とりあえず、現時点でカールは紛れもない悪だ。










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