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ソフホーズ  作者: 尸音
17/27

4-2

「全く、どうなってやがんだ!?」



ある日、またカールが朝っぱらから声を荒げる。


その矛先は確認するまでも無くマイクさんだ。



「いつまで経っても助けが来ないじゃねえか!!」


「誰が助けを待つなんて言った? 来るに越したことはないが、俺は脱出策を講ずるためにここに留まってるんだ。」


「ふざけんなよ、食いモンだって減る一方だ。ここで餓死なんてごめんだぜ。」


コマーも地味に反抗している。


マイクさんは一向に冷静で、2人の言動を全て受け流していた。



この2人の賢いのは、とりあえず物に当たるだけで人に手を上げることはない点であろう。


だが、それもいつまでもつか…。



実際、俺ももう助かるかどうかを疑ってかかってる。




というか、助かると思っていない。


ただここで無事な時間を食いつぶしているだけだ。




しばらく吠えた2人は疲れたような顔でまた何処かへ去っていった。


あの2人はいつも同じ部屋にいるらしい。


その部屋は見た事ないが、マイクさんによれば自分の武器を持っているとのこと。


反逆してこないのが不思議なくらいだ。


大量の武器を目にしたことはあるが、それは今、ほとんどが手元にないのだから。




「ホントにいつもいつもうるさいね、あの2人。」


隣に座っていたミキシルさんが急に話しかけてきた。


「まぁ…しょうがないとは思いますけどね。こんな状況じゃ…。」


「そうかもね。でもそれは自分だけじゃないんだもの。大人なんだし、そのくらいは分かってもらわないと。」


少し困ったような顔をしたが、口元は微笑んでいる。



相当優しい人なんだろうな。


この人が怒ってるの見たことないし。



「マイク、ちょっと。」



2階部分からターネックさんがマイクさんを呼んだ。


ターネックさんは外の監視が任務らしい。



マイクは礼拝堂隅にあるハシゴへ近付いていった。




「ちょっと私も見てくるね。」


ミキシルさんはそう言って立ち上がり、マイクさんの後を追った。



俺は話し相手がいなくなってふとネムさんとボルトを見た。




まだこの2人は起きていない。



結構お寝坊さんらしいが、安全なうちはどれだけ寝坊したって構わない。


緊張感がなさすぎなくらいなのがこの2人の羨ましいところだ。




…しかし、全くやる事がない。




眠くもないし、腹も減ってない。



どうしようか。





2階回廊ではマイクさんたち3人が何かを話し合っているのが見える。



何かあったのだろうか?





ヤツらが多すぎて逃げられそうにないとかか?





…そう仮説を立てて全く感情が変化しない自分が今1番怖いな。



いざって時、俺は始まりの日と同じ恐怖を味わって、同じように逃げられるだろうか?


恐怖を感じたとして、また助かるに違いないという油断が生じる気がしてならない。





だが、普通に考えればここにヤツらが侵入してきたら、もう次はない。








―――ミキシルさんとマイクさんが降りてきた。




最初に伝えられることは何だろう?


伝えるほどのことも起こっていないのが1番だが…。







ミキシルさんがこちらにやってきてまた隣に座った。





何も言ってこない。








「…あの。」



つい呼びかけてしまった。


ミキシルさんがこっちを向く。


もう聞くしかない。



何となく知るのが怖いけど…。



「何かあったんですか?」


「いや、そんなに大事なことでもないけど、聞きたい?」


「あ、なら大丈夫です。」



何でそこで踏み留まった、俺…。



結局疑問はわだかまったまま俺の中に残った。




あぁ気持ち悪ィ……











――――――バラバラバラバラバラバラバラバラバラ―――――――











…な、何だこの音は?




何か奇妙で大きな音が教会のすぐそこ…というより、上空を通り過ぎていった。






「な、何ですか今の…?」



「あ、クイル君知らない? ヘリコプターっていうの。」




「……へ、ヘリ…?」



何だそれ?


初めて聞いた…。



「そういう乗り物だよ。プロペラで空を飛ぶからああいう音がするの。」


「は、はぁ…。」



プロペラって何だ…。



もともと外にいた人は知ってるんだろうか。


その姿が見えなかったのがもどかしい。









…いや、待て。







「ヘリ…何とかって空飛ぶんですよね!? 外から助けが来たってことなんじゃないですか!??」



「それをさっきマイクたちと話してたんけど、不自然なのよね。」



「え…?」



何気に疑問が解消した。



「クイル君知らないかもしれないけど、この国で何か非常事態が発生した時に出動する軍隊っていうのがあってね。SSFっていうんだけど、あのヘリコプターには軍隊名がかかれてないのよ。」


「グンタイ名がそんなに大事なんですか?」


「とりあえずSSFって書いてないってことは無関係のヘリなのよね。だからあんまり下手に助けを求められない。もしかしたら、この事件を起こした黒幕かもしれないじゃない?」



なるほど…。


細かいことは分からないが、とりあえず怪しい何者かがソフホーズの上空を飛び回っているということのようだ。



またすぐ、この平穏が崩されるような気がしてきた。




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