第4章:その後
惨劇の幕開けから何日が経っただろうか…。
俺は随分ニセ教会での生活に慣れてきた。
筋肉痛も治まり、移動に不自由もない。
だが1番のアドバンテージは安全性だろう。
2階を除く全ての窓が既に木の板で封鎖されていて、正面の門はもちろん、通用口も先の通り、かんぬきで閉ざされている。
ヤツらはどうやら俺らが入ったのを目撃した場所からしか入ろうとしないらしい。
つまり、俺が逃げ込んだ時、通用口から入ろうとはしたが、回り込んで窓と板を破り、入ろうとはしなかった。
しかも、入れないとしばらくしたら諦めてくれる。
それほど強固ではないが鉄壁の防御である。
そして、第2のアドバンテージは食料だ。
有事の際を見越してずっとため続けていただけあって、さすがの量だ。
この状況で何の不自由もなく暮らせる場所はそうそうないだろう。
また、メンバーも中々いい人達だ。
マイクさん、ミキシルさんはもはや言うまでもないだろう。
ターネックさんも時々言葉はキツいが、話しやすい気さくな人だ。
カールとコマーは、既に呼び捨てにしている通り、とても尊敬できる人間とはいえない。
食い物がまずいだの、夜寒いだの、いちいちうるさい。
それだけならまだしも、いちいち空き缶を壁に投げつけたりして危なっかしいのだ。
もし外のヤツらが音に気付いたらどうしてくれる……。
で、ネムさんとボルト。
どうやら彼女らは姉弟でも何でもなく、赤の他人らしい。
ネムさんの弟はヤツらに喰われて死んでしまったそうだが、その弟に、ボルトは非常に良く似ているらしいのだ。
それでネムさんはボルトを弟のように可愛がり、一人っ子のボルトはネムさんを姉のように慕うという関係が出来上がった。
だが、姉が弟に世話を焼くというより、イチャイチャしている男女だ。
2人ともいつも一緒にいて、笑顔が絶えない。
―――正直、もう笑い合う仲間のいない俺には羨まし過ぎる光景だ。
そう、あの日母さんも、カトラスもミラも、皆死んだ。
時々生きている事の意義を疑う。
誰一人、信じあえる者のいないこの世界で生きて、どうしろというのか。
もうアイツらと馬鹿みたいなことで笑うようなことはできない。
もう母さんの温かい料理は食べられない。
…願わくば、早くアイツらの所に行きたい。
そう思いながら怠惰に生き続ける矛盾。
死にたいなら、今すぐにでも外に出ればあとは勝手に殺してくれる。
ちょっと激痛に耐えれば終わることじゃないか。
――――――何で俺、漠然としてんだろ。




