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何となく黙っていられなくて、適当に質問した。
「レジスタンスはマイクさん以外にも?」
「ああ、ターネックとミキシルはレジスタンスだ。他にも大勢いたが、皆喰われた。」
ターネック?
あ、ミキシルさんの隣で寝てた見覚えの無い女か。
言われてみればまだまともに会話していないのだから見覚えが無くて当然だ。
でも、あの優しそうなミキシルさんもレジスタンスだったとは…。
それに、この人も自分の仲間を亡くしてるなんて。
精神面でタフなのか、実感が湧いていないのか、単に命に対する意識が薄いのか―――。
「最初入ってきたヤツはみんなお前と同じ反応だったよ。"レジスタンスかよ…"ってな。」
マイクは笑って言った。
自嘲気味に見える。
「マイクさんは……どうしてレジスタンスに?」
「何でって言やあ、やっぱこういう、何か大変な事がいつか起こりそうな気がしたんだよな。ソフホーズって色々不自然だと思わねえか? 一見平和に見えるけど、いつか何かが起こるって思ってた。で、起こった。」
俺も、確かにソフホーズは不自然だと思って色々考えを巡らしてはいた。
でも、結局何もしなかった。
目の前の平和に甘えて問題を直視しなかったも同じだ。
それが分かったのは、平和が砕け散った今、ようやくなのだが。
「まだこの惨事がソフホーズ政策のせいなのかは分からんがな。」
「というより、全く原因がつかめませんよね。」
「ああ。でも無関係じゃねえとは思う。どっちにしろ、こういう時のためにわざわざ教会に似せたアジトも建てたんだ。今は生き残って、なるべく多くの生存者と一緒にソフホーズを脱出することだけに集中しないとな。」
「え、これ…?」
「あ、言ってなかったっけ? これ本物の教会じゃなくて、レジスタンスのアジトだよ。」
なるほど、教会ならたとえバレたってズーナ教信者は手を付けられないだろうな。
そして、そんなズーナ教信者が色々言ってくるのを嫌がって不信者も何もできない。
抜け目ないもんだ。
と感心しているところでトイレに着いた。
「ありがとうございました。」
「待っててやるよ。その調子じゃ、1人で帰るのは一苦労だろ。」
確かに。
俺は「ありがとうございます」と言って早々にトイレに入った。
用を足している間、痛みと格闘しながら、意識はまた別の所にあった。
レジスタンスは今までソフホーズ反対の意を唱えて色々嫌がらせをしてくる、悪党のイメージがあった。
けど、マイクさんは?
それに、ミキシルさんやターネックさんも、とてもそんな人には見えない。
俺以外の生存者もちゃんと迎え入れているところを見ると、今は人命救助に奮闘していると見ていい。
少し前までは大勢の人が、命を懸けて。
…どうやらレジスタンスは、今は正義のヒーローと呼ぶほかないようだ。




