3-2
俺は生存者達の前に立った。
「また新しい仲間が増えた。こいつはクイルだ。」
マイクが勝手に俺のことを紹介する。
俺は軽く会釈する程度に留めた。
「君は咬まれてない?」
なんか、メチャメチャでかいナタみたいなナイフを持った女が話しかけてきた。
そのナタに大量の血がこびりついているのが気にかかる。
「はい、咬まれてないです。」
「…そう。私はミキシル。よろしくね。」
ナタを足についているさやにしまってから、握手を求めてきた。
流れのままに握手をする。
女は普通に笑っている。
つけているカチューシャとショートヘアも手伝い、子供みたいに見えた。
…?
この女も何処かで見覚えがあるな。
だが考える間も無く、マイクに残りのメンバーを紹介された。
右から順に行くと…
まずガタイのいいヒゲ親父がカール。
その横の、タンクトップを着た筋肉質の男はコマー。
全体的に黒めの服を着た長髪の女がネム。
そのすぐ横にいる男の子がベルト。
だそうだ。
全員が全員、俺に対して投げかける視線に何ともいえぬ負の念を乗っけてくれている。
しばらくはよそ者扱いを免れないかもしれないな…。
「おい、マイク! もうこれ以上人数を増やしてくれるなよ! ただでさえ食料には限りがあるんだから!」
急にカールが怒声を発した。
「何言ってんだ。お前だって最初は必死こいて走ってきて、間抜けな面で助けを求めてたくせに。」
「何ィ?」
カールが理不尽に不機嫌そうな顔をする。マイクはマイクで挑発的だし…。
「いいか。俺に逆らうな。今のところは目をつぶっといてやるが、いざとなったらいつでもアイツらにお前を捧げてやってもいいんだぜ?」
カールが置いてあった空き缶を叩き潰して何処かへと歩き出した。
何故かコマーがその後を追う。
「全く、アイツら、助けてやった恩も忘れて自分勝手なことばかり言いやがる。」
なるほど、マイクはここのリーダー的存在で、カールとコマーはペアで悪党のような立ち位置か。
とにかく、足がやばい。
座って足を伸ばすと、もう足だけじゃなく、全身の筋肉が雑巾絞りにされているように痛む。
でも、とりあえず襲われることはないという安心感で、その痛みさえ喜びに思えた。
痛いと感じていられるのは生きている間だけだ。
「ハァ…。」
とにかく盛大に溜息をついて、ダンボールの壁にもたれて目を閉じた。
一気に意識が消え失せた。




