閑話 できること
閑話 できること
サイド アルトゥール・サントス
ダイバーの様な恰好のまま、椅子に座り込んでうなだれる。他のメンバーも同じような有り様だ。
「……なにも、できなかった」
ぽつりと、エミリアが呟く。
「皆は、奴の事をなにか知っているの?」
「……前に話した、サラマンダーから助けてくれた冒険者。それが彼さ」
「……なるほど」
納得したように、タオルで汗を拭いながらエミリアが視線を伏せる。
「ごめん。私、模擬戦の前に余計な事を言ったかもしれない。そのせいで、あんな……」
「いいの。エミリアが気にする事じゃないわ。全力で来てもらわないとって思っていたのは、皆同じだったから」
エミリアの肩を抱き、ジュリアが小さく微笑む。
「そうだ。負けたのは、俺達の実力不足だ」
「……だが、それ以上にスペックの違いもあったな」
ドリンクを口に含んだ後、パウロがこちらを見てきた。
強い疲労を滲ませながらも、その瞳は輝きを失っていない。
「直接ぶつかって思ったが、彼のパワーにあの機体では全くと言っていいほど歯が立たなかった。恐らく、本気だったのなら一秒ともたずに弾き飛ばされていただろう」
「……機体のせいには、したくないな」
見た目こそアレだが、金剛には愛着がある。
自分達が必要とされた理由でもあるが、それ以上にアレは『戦う力をくれるもの』だ。
故郷でも、そしてこの場所でも。自分達は『弱者』でしかない。そんな現実を変えてくれる。それが金剛だと思っている。
「いいや、忘れるなよアルトゥール。自分達の仕事を」
「なに……?」
「ただ金剛を上手く扱うだけが仕事じゃない。アレの欠点を、改善点を使い手として纏め、書類にするのが本来の仕事だと言っている」
彼の言葉に目を見開いた。
そうだ……そうだった……。
「……すまない、調子にのっていたんだな、俺達は」
「そうだな。まあ、私も人の事を言えないが」
苦笑を浮かべ、膝を叩いて立ち上がる。
金剛の装着者としての地位を。それを得た自分達を特別視していた。我ながら、随分と滑稽な話だ。
「矢島も、俺達に本来の仕事を思い出させるためにオオカワをぶつけてきたのかもな」
「そこまで考えているかしら、あの人」
「かなりの変人だから……」
「たしかに」
四人で笑い合って、気持ちを切り替える。
そうだ。後に続く者達の教導官としての地位は逃してしまうかもしれないが、後に続く『世代』が平和な世の中で生活するためにも、やるべき事がある。
自分達だって、やれる事があるのだ。
なにより俺達の価値を証明できる物は、武功だけじゃない。
「けど、エミリアは日本語の勉強をもっとしないとな。職員から聞いたぞ、オオカワに『殺す気できて』なんて言ったらしいな」
「ほんっっっとうに気を付けましょうね。もしもそのつもりで来られていたら、私達死んでいたからね?」
「兄として二人にも、そしてオオカワ氏にも申し訳なく思う。そしてエミリア。後でお勉強の時間だ」
「は、はい……」
ジト目を泳がせる我らが妹分に小さく笑い、報告書を作るために歩き出す。
だがまずは……シャワーを浴びて着替えてから、『彼』に礼を言いにいくか。
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