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第五十九話 お祓いとリベンジ

今回は少し長めです。


第五十九話 お祓いとリベンジ


サイド 大川 京太朗



 逆転の発想である。行けないのなら呼べばいいじゃないか、と。


 東郷さんの依頼で『鬼ヶ山』のダンジョンで間引きを行った三日後。七月も中旬にさしかかった時期。梅雨があけるも蒸し暑さは陰るどころか増すばかりの頃だった。


 父さん発案の元、その日の内に実行。京都の有名な神社がやっている出張お祓いサービスに申し込んだのである。


 特急コースだったので割高になってしまったのだが、自分の事なので自分で出すと言っても両親に拒否されて代金を払ってもらう事になってしまった。


 申し訳ないが、ここは親に甘えさせてもらおう。


「どうも、よろしくお願いします」


「「「お願いします」」」


 そんなこんなで、電話してから二日後の平日の夜ながら来てくれた神職のお爺さんを家族三人揃って出迎えた。


 少し面食らった様子ながらも、田舎特有の何故かある客間で早速お祓いをしてもらう事に。


 両親に挟まれる様にして座布団に少し慣れない正座をし、神職のお爺さんが持った木の棒にジグザグの紙がついたやつ……たしか、『おおぬさ』だっけ?あれを振りながら何かを唱えている。


 なんだろう……こういうスピリチュアル的なやつはあまり信じない質なのだが、『神代回帰』以降はちょっと見方も変わった気がする。


 こんな世の中だ。きっとありがたい力でなんやかんや――。



「あっ」



「「「ん?」」」



 今なんか変な声あげなかった?


 ずっと好々爺然とした笑みを浮かべていたお爺さんは真顔になり、また音もなく『おおぬさ』とやらを振りながら何かを唱えていく。


 妙に真剣な様子に違和感を覚えるも、それだけ真面目にやってくれているのだと思う事にした。


 何故か冒険者として二度ほど死線を潜り抜けた身として、猛烈なまでの嫌な予感を覚えたがきっと気のせいに違いない。


 一時間ほどかけて行われたお祓い。唐突に神職のお爺さんが『……ここまでです』と言って、終了となった。


 よくわからないが、肩が軽くなった様な気もする。お祓いって効果あるんだなぁ。


「ありがとうございました。こちら、お納めください」


 そう言って、父さんがあらかじめ用意していた白い封筒を差し出す。お正月とかに使うのに似たそれには、お祓いの報酬が入っている。


 なの、だが……。


「いいえ。受け取れません」


「え?」


「神職として、それは受け取れません」


「いや、お祓いをしてもらったわけですし」


「受け取れません」


「でも、神社のホームページに」


「あれはもう閉めます」


「え……?」


 お爺さんはニッコリと笑いながら、包帯みたいなので『おおぬさ』をグルグル巻きにしだした。


 お祓いの後ってああいう風にするんだっけ?


「お祓いは『終わり』ましたので、私はこれで失礼します。あなた方の人生に幸多からん事を心より祈らせて頂きます。それでは」


「は、はあ……」


 そう言い残すなり、ご高齢とは思えない身のこなしでお爺さんは玄関を出て乗って来た車に乗るなりどこかへと走り去ってしまった。


「……お祓い、できたんだよね?」


「……たぶん?」


 家族三人揃って呆然とお爺さんを見送り、とりあえずお祓いは済んだのだろうと納得する事にした。


 なお、今回の事を質問しようと神社のホームページにアクセスしようとしたら、何故か更新が止まっていたしお祓いの受付とかもなくなっていた。神社自体は変わらずやっているようだけど……。


 なんだか、ちょっとだけ不安の残るお祓いであった。



*   *   *



 とにもかくにもお祓いは済んだ。つまり、デートもOKという事である!


「そ、その。よろしく、レイラ」


「――はい。こちらこそ、エスコートをお願いします。主様」


 服屋さんで店員さんに勇気を振り絞ってコーデしてもらった服に身をつつみ、彼女の手をとる。


 レイラの装いもまた、いつもとはかなり違う。


 髪型は蒼地に金のレースで彩ったリボンでツインテールにし、首には派手にならない程度の銀色のネックレス。


 紺色のワンピースの上から夏用の白いカーディガンを羽織り、肩からはミニマムバッグを提げ足元は黒の編み上げサンダルが白い足を彩っていた。


 彼女は少し恥ずかしそうに眉を八の字にしながら笑い、両手で髪を隠す。


「少し、幼過ぎるでしょうか?私に似合っているかどうか……」


「すごくいい。すごくかわいい」


 語彙が死んだ。


 長い銀髪をツインテールにするのは雪音の案だったが、グッジョブ。京太朗十字勲章を授ける。いやねえよそんな勲章。


 普段落ち着いた雰囲気ながらミステリアスな……言い方は悪いが、雪女である雪音以上にどこか人間とは離れた気配のレイラが今、見た目年齢相応の少女の様にしている姿はなんか心にくるものがあった。


 これが……ギャップ萌え。人類の英知の一角……。


 父さん、母さん。産んでくれてありがとう。世界よ、宇宙よ。ありがとう。


 意識を次元のかなたまで飛ばしながら感謝の念を伝える。はっ、僕はいったい何を?


「あまりここで立ち止まっていても迷惑になりますし、移動しませんか、主様」


「あ、う、うん」


 現在地は大型ショッピングセンターのトイレ近く。下手すれば不審者認定されかねない場所だった。


 というのも、僕一人で駅を五つほど跨いだ先まで来た後このショッピングセンターに入り、物陰でレイラを具現化。そのままアイテム袋を渡して女子トイレで着替えてきてもらったのだ。


 トイレで着替えさせるのは罪悪感がわいたが、他に方法も思い浮かばず……この埋め合わせは、僕の完璧で究極のデートプランにて……!!


「……それにしても、私が守護精霊であるとバレなくてよかったです」


「うん?いや、僕もトイレ近くのベンチに座っていたし、法律上は何十メートルも離れたらって場合じゃないっけ?」


 たしか守護精霊や使い魔を離して行動させるのはそれぐらいだったはずである。二十メートルか三十か忘れたけど。どっちにしろベンチからトイレまでそこまでの距離はない。


「そうではなく……いえ。主様が良いのでしたら良いのです。私からそちらに記憶の送信はできませんし」


「うん……?」


「それより、早く行きましょう。主様」


「うん!!」


 こちらの手を抱いて足早に移動するレイラ。柔らかい胸が二の腕にあたりテンションがあがるのと同時に、これほどデートを楽しみにしてくれていたのかと舞い上がる思いである。


 かっー!これがなぁー!モテる男のなー!罪な部分だよねって!!


「ふへへっ……れ、レイラ。そんな焦らなくても」


「えっと……主様。その顔を外でするのはまずいかと」


「え、その顔とは」


「不審者と言いますか……変質者?」


「 」


 脳内に浮かぶ触手眼鏡や筋肉ゴリラ、そしてふくよかランド園長に自称百合の聖騎士。


 え、僕の顔アレらと同じになってたの?やばくね?人類として。


「ごめん……気を付ける……」


「はい。ありがとうございます」


 跳ね上がったテンションが急降下する。やだ……死にたい……。


 よく考えたらレイラが女子トイレを気にしたのって、守護精霊である彼女は本質的に僕の一部だから、それを知られると外聞が悪いからでは?


 ぶっちゃけレイラが僕の一部と言われても、まったくと言っていいほど実感がないが。それでも他の人からすれば―――。


「そう落ちこまないでください、主様」


 むにり。


「主様が決して悪人ではないと、私にはわかっています」


 ぽよん。


「だから、ほら。顔をあげてください」


 むにむに。


「僕は、正気に、もどった」


「それはよかったです」


 腕に感じるこの幸せな感触。ブラジャー越しでもその溢れる乳肉の柔らかさよ。これが僕から生み出された存在だろうか?いいやない。


 ニッコリとほほ笑むレイラに、こちらも笑みを返す。周囲からの視線を独り占めにする彼女の美貌に見惚れながら、そんなレイラに笑みを向けられながら腕を組んで歩く事に酔いしれる。


 さぁ、リベンジデートだ!!



*  *  *



 完璧で究極なデートプランと言ったが、内容は前回計画した物とはだいぶ異なる。いやだって別の場所に行くから、そのまま流用とか無理だし。


 というわけで、今回は『水族館』から『ゲームセンター』、そして『喫茶店』のコースである。シンプルだが、こういうのは『削る事』が重要だ……!


 だってそうテレビでイケメン俳優の人が言っていたから!!その人次の日に不倫で炎上していたけど!!


 そんなわけで水族館に行ったわけだが、意外と楽しい。ただ歩いて見て回るだけで『なんだあれ』となるものが多かったので、時間を潰しながらレイラとたわいのない話に花を咲かせるには十分だった。


 というか、水族館の暗めの照明と水槽を照らす明かりのコントラストの中、彼女の美しさが際立って胸がめっちゃ苦しかったのだが。これが、恋……?


「……主様。私の顔ばかり見ていてよろしいのですか?」


 クスリと笑いながら、レイラがこちらを覗き込んでくる。


 蒼と金のオッドアイに見つめられ、思わずごくりと唾を飲み込んだ。


「あ、いや、その」


「ふふっ。そこは嘘でも『君に見惚れていた』と言った方が、異性とのデートには良いかもしれませんね」


「そ、その、はい……」


「ああ、主様。あちらの水槽を視てください。ちょうど餌やりの時間だそうです。もう少し近くでご覧になりませんか?」


「わ、わかった」


 レイラに揶揄われる様にしながらも、水族館の中を回っていく。


 い、言えない。本当に見惚れていて魚とかペンギンとかどころではなかったとか、言えない……。


 そんなロマンチックだがもどかしい時間を過ごしてから外に出れば、近くのキッチンカーで売られていたクレープを購入し、二人で食べながら近くのベンチで休んだ。


 ……実際食べてわかったのだが、これ二人で半分こしたりとか無理だわ。けど突き出す感じで食べさせ合いっこはできるから、ヨシ!


「ん……主様」


「え、なに?」


「動かないでくださいね?」


 そう言ってレイラがこちらの唇に手を伸ばしてきた。


 ギョッとして目を見開く自分を気にした様子もなく、白くしなやかな指が唇のすぐ横に触れた。


「クリームがついていましたよ。もう少し落ち着いて食べましょう。誰もとったりしませんから」


 ニコリと笑いながら、彼女は指についたクリームを舐める。


 ……やっべぇ。普段もっと『アレ』な事をしてもらっているが、今はそれ以上に胸の音が激しい。


 ハンカチで自分の唾液を拭く彼女から目が離せないまま残りのクレープを食べようとして、むせてしまったのは今後苦い思い出となるだろう。


 どうにもここまでリードされっぱなしの中、そのままゲームセンターに向かった。


 こういう場所はガラの悪いイメージがあったのだが、調べてみると最近はそうでもないらしいのでデートプランに組み込んでみたのだ。


 中は意外と家族連れやご老人の姿もあり、イメージしていたヤンキーがタバコ吸いながらギャハギャハ笑っている空間は存在しなかった。


 ただ、やはりというかレイラは目立つ。


「うわ、あの人美人……え、隣にもう一人いたの?」


「すげぇ。海外のモデルさんかな……んん?隣に視えるのは、まさか幽霊……?」


「おい、誰か声かけろよ……え?隣になんかいる?そんなわけ……いたわ。え、のっぺらぼう?」


 誰の顔が強い光を浴びたらのっぺらぼうに視えるぐらい薄いだよこん畜生。


 中一の頃、入学祝にと写真屋さんで撮ってもらったらフラッシュのせいなのかカメラの故障のせいなのか、何故かのっぺらぼうになっていたのはいい思い出とは言い難い。


 なんなの?僕の魂がモブだとでも?


「主様。どのゲームをしましょうか。あいにくと私にはこう言った知識があまりなく……」


 少し困った様なレイラに、気合を入れ直す。


 そうだ。これは彼女に外の空気を吸ってもらうためのデートでもある。自分がしっかりしなくては。


「ま、任せて。えっと……あのガンシューティングとか、してみようか」


「はい!よろしくお願いしますね、主様」


 そう言って彼女と色々とゲームをやったのだが、意外と機械の扱いは苦手らしい。


 そのおかげ……というのは少し変かもしれないが、良い所を見せられたかもしれないな。覚醒者の反射神経と魔眼持ちの動体視力なめちゃぁいけない。


 スペックのごり押し?ふははっ、なんの事かわかりませぬ。


 そんな時間を過ごすも、気づけば午後の二時近くになっていた。ここまでクレープしか食べていないし、例の喫茶店に行くとしよう。


 本当はここから近いお洒落なお店の方がいいのだろうが……どうにも、お祓いの結果に不安が残っているのだ。落ち着いて食事をするなら、地元に少しでも近い方がと思ってしまう。


 そんなわけで電車に乗り移動して、東郷さんによく誘われる喫茶店に向かう。無論電車では万が一にもレイラが痴漢にあわない様に注意したうえで、である。


 銀髪巨乳美少女が電車に乗ると高確率で痴漢にあう。僕は(薄い本で)詳しいんだ……!


 何はともあれ、ダンジョンにいる時なみに周囲を警戒していたおかげか無事に到着。件の喫茶店に入った。


「おや、いらっしゃい………」


 店のマスターがドアベルに気づいたのかこちらに笑みを向けて数秒、何故か無言で僕たちをじっと見てきた。


 え、なに?


「あ、あの」


「なるほど。大川京太朗さんでしたか。常連さんがよく連れてきてくださる。気配を消す訓練ですかな?凄まじい才能です。私もそちらのお嬢さんしか一瞬視認できませんでしたから」


「……いえ、ただのデートです」


「………はっはっは」


 笑って誤魔化すなや爺。


 無駄にダンディな顔と声で席に案内し、メニューを置いていくマスター。くそ、相変わらずバリトンボイスができる男感でていやがる。ダンディ過ぎてさっきの失礼を許してしまいそうだ。


 いやいいんだけどさ。慣れているし。


「えっと、レイラはなにがいい?」


「そうですね……では、このナポリタンを」


「なら、僕もそれにしようかな。マスターさん」


「はい」


 そうして注文したナポリタンを食べるのだが……やっぱり、こういう所作にも『美しさ』って出るのだと実感した。


 音が自分の皿からしか出ないし、クルリと麺をフォークにからめとるのも、僕のは無駄にでかい玉になってしまうのに対し彼女は一口で綺麗におさまるサイズに纏めている。


 やっぱりと言うか、どう考えてもレイラが自分の一部とは思えない。いや、いなかったら違和感と不安で一杯になるという意味で『生活の一部』とは言えるが。


「こちら、私からのサービスです」


「え?」


 ちょうどナポリタンを食べ終わったタイミングで、彼女と僕の間に大きめのグラスが置かれた。


 普通のより上のサイズのそれにはメロンソーダが入っており、ピンク色のハート型ストローまである。どう見てもアニメでしか見ない、アレだ。


「先ほどの失礼に、と」


「い、いえ。そんな。気にしてませんし」


「まあまあ。これも新たな常連さんを獲得したい店側の努力という事で」


 軽くウインクして空になったナポリタンの皿を手に去っていくマスターに、さてはあの人も東郷さんの同類だなと思いながら見送る。人を極度の子供舌と思っている感じの。


 甘いな。僕は確かに甘いのが好きだが、炭酸はちょっと苦手である。どうしよう……。


「主様。辛いようでしたら私だけで飲みましょうか?」


「……い、いや。せっかくだし」


 だがここで『炭酸無理』と言うのは恰好がつかない。なによりこういうハート型ストローで彼女と飲んでみるの……ちょっとだけ憧れるし……。


 一回だけ深呼吸してから、ストローに口をつける。そして、ほぼ同時にレイラも反対側のストローを咥えた。


 思ったより顔の距離が近い。さらりと流れる銀の髪が窓から差し込む日の光でキラリと輝き、長いまつげに彩られたオッドアイはまるで宝石のようだ。


 こちらの視線に気づいたのか、ニコリほほ笑む彼女。


 炭酸の辛みとかそういうのは、完全に消し飛んでいた。



*  *  *



サイド 東郷 美代吉――西園寺 康夫



 スーツではなくポロシャツとジーンズというラフな格好ながら、やっている事はいつもの仕事である。人手が無いというのは、本当にきついものだ。


 休日の自然公園を散歩しながら、先ほどまでそれとなく住宅地で集めた情報を頭の中で整理する。


『賢者の会』


 あそこが件の『ゲート隠し』の魔道具を闇サイトで売りさばき、それによる危険な覚醒修行を勧めているのは間違いない。さきほど部下から『普通の』警察に捕まった、これらを動画で自慢していた覚醒者からの調書も聞いた。


 だが、自分が集めた方の証拠は裁判で使えないものばかり。かと言っていつも通りの方法を使うには相手の力が強すぎる。


 武力。権力。財力。そして数の暴力。どれをとってもこの短期間で成長したには大きすぎる新興宗教だ。


 覚醒者としての異能で何かをやったのは当然として、それにしてもおかしい。


 何か。それこそ凄まじいカリスマと知能ないし知識を持った存在がいる。教祖の小山ではない。別の誰か。


 だがそれがわからない。他の幹部連中も覚醒者としては一級品ながらも、それ以外の面では盆暗ばかり。


 困った……ここにきて詰まるとはな。ただでさえ別件で忙しいのに。


「ん?」


 内心でため息をついていると、仕事用のスマホに着信がくる。


 これは自分がよく利用する、『事情通のマスター』からだ。いったいどうしたのかと、木陰に入って視線だけで周囲を警戒しながらもすぐに電話に出る。


「はい、こちら東郷です……なんですって?京太朗君が若い外国人女性とデートを?」


 あまりにも想定外な内容に、思わず目をむく。


「………ええ。私も同意見です。京太朗君が歳の近い異性。それも美女と仲良く談笑などできるはずがない」


 断言できる。彼はモテない。


 覚醒者としての能力や冒険者としての財産はともかく、それ以外の要素に異性から恋愛的に好かれる要素など皆無である。


 京太朗君は異性と話す際、胸や足を見ない様に気を付けすぎて相手の目をガン見して気味悪がられるし、言葉を選び過ぎてどもる上に何を言っているかもわからない。


 更には共通の話題など絶無であり、曖昧な顔で『そ、そうですねー』しか言えないはずだ。偶に自分のテリトリーの話題になった途端早口で持論をさも正論の様にまくしたて、相手から距離をとられるのは確実。


 そんな彼が、外国人と思しき年頃の女性と仲良くデート?天地がひっくり返ってもありえない。


「『ハニートラップ』……まさか侵入をそこまで許していたとは。不覚です」


 ならば、これしか考えられない。


 くっ、十分に警戒していたはずだが……京太朗君の性格なら下手な美人局は警戒して逃げ出すと踏んでいたのか仇となったか。


 彼の性欲をなめていた……!


「それで、対象の特徴は?……長い銀の髪、蒼と金のオッドアイの白人……んん?」


 自分の頭に叩き込んだ、京太朗君が市役所に出した覚醒者としてのデータを思い起こす。


 ………異能とやらに詳しくはないが、それでも知識としてはある程度知っている。


「『レイラ』と、確かに呼んでいたのですね?ならば大丈夫です。はい。彼の守護精霊という異能の産物です」


 電話越しに戸惑った様子のマスターに、内心で同意する。


 守護精霊とは、確か覚醒者の魂から一部分離した、いわば分身の様なもののはずである。それと、デートかぁ……。


「はい……ではそのように。ええ。失礼します」


 通話を終え、木にもたれかかりながらため息を一つ。


「最近の子は、わからないなー……」


 彼の性欲を、なめていたかぁ……。



*  *  *



サイド 大川 京太朗



「はっくしょんっ」


「どうなされました、主様」


 彼女がさし出してくれたティッシュで鼻をかみ、丸めてポケットに押し込む。


「ありがと。いや、誰か噂してたのかな……風邪とかはありえないし」


 おおかた、あの美女を連れた謎の男は誰だといった感じだろう。


 現在は大回りして家に帰る為バスに乗っている。それにしても、今日のデートは上手くいった。なんせ途中モンスターにもダンジョンの氾濫にも変質者にも遭遇しなかったのだから。


 これはお祓いの効果が出ているに違いない。神職のお爺さんの様子に不安を覚えていたが、なんだ。ちゃんと効果が出ているじゃないか。今度彼の神社に賽銭でも入れに行こう。


 これならもう今後ダンジョンの氾濫に巻き込まれる心配はないな!二度とミノタウロスやドラゴンの様な化け物と戦う事はあるまい!


 これからはのんびりかつ淡々とダンジョンで稼ぎながら学校生活を送る、スローライフの始まりである。


 グッバイ、冒険!フォーエバー、平穏!!


 レイラの肩を抱いて天井を見上げ、幸せを噛みしめるのだった。





読んで頂きありがとうございます。

感想、評価、ブックマーク。いつも励みにさせて頂いております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。


Q.守護精霊ってものを食べられるの?

A.一応食べられます。と言っても人間と同じように消化して栄養にするというより、体内で分解して魔力に変える感じですね。変換効率も悪いですしスピードも遅いですが。


Q.デートの描写微妙じゃない?

A.デートという単語から縁遠い作者の限界がこれです。どうかこれで勘弁してください。


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― 新着の感想 ―
[一言] 守護精霊と『セッ…』するのって実質近親相●では?
[一言] >守護精霊は他人なのか自分自身なのか モブ太朗自身が魔法使いの類だったら、受け取り方も違ったのかなあ。結局は「実感」の問題らしいですしお寿司。 ……でも結局は、「それでもいいんだ!」ルート…
[良い点] ワイ、自信満々の神職がお祓いに来て急に焦りだすテンプレすこ
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