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第三十三話 相原健介のステージ

第三十三話 相原健介のステージ


サイド 大川 京太朗



 ええっと?相原君がダンジョンにいるのは、いい。彼も冒険者だ。不思議ではない。このダンジョンを選んだのは、少し意外だが。


 あの雪女……?推定雪女のミチルさんは、彼の使い魔の様だ。で、雪女は近づいてきた人間の『好みの姿』に……この場合、契約者の好む姿になる。


 相原君???


 いや、今はそんな事どうでもいい。問題は、こうしてクラスのAグループ。それも中心人物であるイケメン野郎と遭遇してしまった事こそ懸念すべき事だ。


 幸い、自分の兜はフルフェイスタイプ。顔がバレる事はない。


 いや、そもそも相原君が自分の事を覚えているわけがない、か。住む世界が違う。ここは適当に誤魔化して――。


「あれ、もしかして大川?」


 なんでぇ!?


 自分でも分かりやすい程に肩が跳ねる。なんでおどれが儂の事知っとるんじゃい!忘れろぉ!


「やっぱり大川だよな。声がそんな感じだったし」


「な、なんの事やら」


「いや、あの自己紹介はかなり印象残ったから。そりゃわかるって」


「 」


 一番忘れてほしい記憶覚えてやがるぅ……。


 ど、どうしよう。いっそもう、記憶が飛ぶぐらい殴るしか。いやそれは普通に犯罪だよちくしょう!


「まさかお前が同じ覚醒者だったとはな……そして、そうか。見られちまったか」


 面倒そうに後頭部を掻く相原君。え、何を?


「そこのはお前の守護精霊と使い魔だろ?まあ随分と真っ当なご趣味だこって」


「は、はあ」


 微妙に棘を感じる声音に、びくびくしながら答える。


 恐い。Aグループ恐い。そもそも顔がいい奴がすごむとそれだけでなんか迫力ある。


「まあ、お前も引くよな。俺の趣味に」


「……?」


「デブ専ってのは、最近だと『表向きは』認められてきても、実際は色物扱いだ」


 何を言っているんだろう、彼は。


 やけに不機嫌そうな、それでいて少し悲しそうな目でこちらを睨みつけてくる。


「お前、学校では覚醒者な事秘密にしたいんだろ?なら取引だ。俺の『特殊性癖』について、黙ってろ」


「特殊ではなくない?」


「んん?」


 一瞬の沈黙。やべぇ、あまりに不思議な事を言われたものだから、つい咄嗟に。


「ご、ごめん。わかった。秘密にする。それじゃまた、学校で」


「待った」


「ひぃん!?」


 ガシリと肩を掴まれそうになり、慌てて回避。なんだ、何か怒るのか?何かしら怒りだして僕に因縁つける感じか!?


 れ、レイラや雪音に被害が及ぶ感じだったら断固として戦ってやる!とりあえず土下座するんで帰してください!


「今の言葉、本心ぽかったよな。どういう意味だよ」


「どうって……別に、ふくよかな人が好みぐらい、ただ『珍しい』だけでは……?」


 兜の下でだらだらと冷や汗を流しながら答え、そこでようやく脳みそがまともに働きだす。


 なるほど。彼はその性癖を隠したかったのか。


 言われてみれば、相原君の性癖は少し珍しい。だが、まだ普通の範囲だろう。だって。


「『触手に嬲られたい』よりはよっぽど普通では?」


「なんて?」


「あっ」


 すまん、魚山君。つい口が滑った。


「え、いや、え?触手?触手『で』じゃなく、『に』?」


「ごめん。違う。言い間違えた。ただの触手を、えーと……なんか、ただの触手好きな人を知っているだけで」


「……えぇ。いや、ええぇ……世界って広いなぁ」


 何やら遠くを見つめながら理解したらしい相原君。


 ……なんかごめんな、魚山君!


「まあ、うん。とりあえずお前が俺の敵にならないのはわかったわ」


「は、はあ」


「……それより、俺はお前を見直したぜ」


「はい?」


 何やら、きらりと目を光らせながら相原君がこちらの両肩を掴んできた。今度は避けきれず、顔が近付けられる。


「お前、才能あるよ」


「なんの?」


「いいか、大川……女ってのは、抱き心地だぞ?」


「最低だなおい」


 すげぇ真剣な顔で何って言ってんだこいつ。


「乳だ尻だのじゃねぇんだ。母性の真の象徴ってなんだと思う?そう、腹だよ」


 何も言ってねぇよ。なんだよ突然。


「総じて、女体の素晴らしさは全体の丸み。あの体に包まれる安心感。おぎゃりたい。そう思うだろう?」


「ちょっと方向性違うんで。すみません、僕おっぱい信仰なんで」


「まだお前には早かったか……このステージは、な」


 なに悟った様な笑みしてんだよ。ステージってなんだよ。一生あがんねぇよそんな場所。


 よくわからんけど納得した様子でこちらの肩を叩くと、彼は一歩距離をとる。


「今日はこれくらいでいい、か。俺はお前の先で待っているぜ」


「行く予定はないので一人で歩いていてください……」


「いつもつるんでる……たしか魚山と熊井って奴には今日の事を話していい。どうせ同じ穴の狢だろ?」


 なんか脳内で熊井君が凄まじく抗議しているが、そんな事よりも、それだと僕まで変態みたいな扱いでは?


 僕はノーマルだよ?おっぱいは一般性癖だよ?


「おっと。忘れる所だった。京太朗。その手に持っているの、オークの頭蓋骨だろ?」


 いつの間にか名前呼びになってる……陽キャ恐い。


「え、はい」


「さっきドロップした『オークの皮』とトレードしないか?市場にはあんま出回っていないから、中々見つけられなくってな」


 そう言って彼が左手を軽く上げると、黒い四角形は現れた。


 驚いているこちらをよそに相川君が四角形に手を突っ込んだかと思うと、濃い緑色の皮を取り出してくる。


「『アイテムボックス』……?」


「おう。俺は空間魔法が使えるんでな」


『空間魔法』


 白魔法、黒魔法と並ぶ、使い手が少ない事で有名なレア異能の一つ。


 空間を操り転移や転送。そして目の前でやったようにアイテムボックスという物を展開し、重量を無視して物を運ぶ事が出来る異能である。


 その許容量は魔力に依存するとされ、『A』ランクの魔力ならばちょっとした家ぐらいなら入ってしまうとも。


「で、どうよ」


「それは願ってもないけど……いいの?」


「ああ。どうしても必要なんだよ、俺の夢にな」


「夢?」


 力強く頷き、彼は両手を広げる。


「そうだ。俺の夢――『ふくよかバブバブランド』の開園の為にな」


「 」


 なに、その、なに?


「俺の、俺だけの為の楽園。夢の遊園地……その為に俺は『空間魔法』と『召喚魔法』に目覚めたに違いない」


 なんでそんなレア異能を二つもこんな……アレな奴が?


「オークは未だ雌が見つかってねぇ。しかし、召喚魔法で調整すれば、作れるはずだ」


「いや、はぁ……」


「オークの頭蓋骨を集めて、専用の触媒を作る。いつ叶うかもわからねぇ夢だが、俺は止まらねえ。何故なら――夢は諦めない限り、いつか絶対に叶うからな」


 そんな光属性な言葉を性欲で言われましても。


 いやごめん。ちょっと待って。頭がね、整理できんのよ。許容量超えちゃってんだわ。


「トレード成立って事でいいか、京太朗」


「あ、はい。大丈夫です」


「ありがとう。これで開園に向けてまた一歩前進だぜ」


「ヨカッタデスネ」


「それじゃ、ダンジョン内であんまりのんびりするのも不用心すぎる。俺はまだまだオークを探さねぇと。まさかこんな狩場があったなんて……灯台下暗しだぜ。県外ばかり探しちまった」


 オークの『頭蓋骨』が抜き取られた代わりに、『皮』が握らされる。


 そして、彼は踵を返してから笑いかけてきた。


「またな、友よ。いつかお前が俺の領域に立てる事を、願っているぜ」


「一生ねぇよ」


 脊髄で返答したこちらに、『まだまだ若いな』と言って笑うクラスメイト。


「行くぜ、ミチル。第二婦人たちを迎えるための準備を再開だ」


「あれま。もう行くのかい」


 いつの間にか氷の机と椅子を出して奥さん談義とやらをしていた雪音とミチルさんが、少し驚いた顔を向けてくる。


 すみません、驚きたいのこっちなんすよ。もう驚き疲れているけど、なんでダンジョンでそんなくつろいでんの?


「じゃあね雪音ちゃん!また妻同士お話しましょ!」


「はい!その時を楽しみにしております!」


 きゃいきゃいと笑い合って手を振る雪女たち。ミチルさんの腰をさりげなく抱いて歩く相川君。呆然とする自分。


 そんな僕の肩に、レイラが軽く手をのせる。


「主様。とりあえず周辺に敵はいません。落ち着いて深呼吸してください」


「うん……うん……」


 世界って、広いなぁ……。



*  *  *



 レイラの眼を見ながらゆっくり十数える事で、ようやく平静を取り戻す。


 ……なんで僕は初めて人死にを見た時と同じ対処方をしているんだ。いや、いい。もうなんでもいいから帰ろう。


 更にしばらく進んでいくと、川の音が聞こえ始めた。


 さーさーと、聞いているだけで落ち着く水の流れる音。雑草はなりを潜め、木々は視界から離れていく。


 石がごろついた河原にたどり着いた。休日に仲のいい家族がバーベキューでもしていそうな場所だ。ここがダンジョンでなければ、だけど。


 音は静かなのに、しかしその川はかなり深い様に思えた。十メートルはあるだろうか。川幅もかなりあり、対岸の岩や木が小さく見える。


 このダンジョンで川となれば、いるのは『あれら』か。


 槍の様に持っていた剣の柄に手を添え、通常の握り方に。警戒しながら川の中を覗き込んだ。


 そこでは、三人の女性が躍っていた。


 豊かな金髪を水に自由にさせ、霞を集めた様な白い簡素なドレスをはためかせている。そのしなやかな指先や足運びは素人目に見ても素晴らしく、芸事を生業する者が目にすれば嫉妬の念を抱くだろう。


 だが、自分の耳にはバチリと弾けた様な音が一度だけ聞こえた。川のせせらぎでも軽やかに踊る女性達の声でもない。魔力を打ち払った音。


 そもそもの話、水中でああも人が踊れるものか。覚醒者ならできるかもしれないが、このダンジョンでわざわざそんな事をする奴はいない。


 だから、あの『怪物』どもは倒すべき敵である。


 一向に川へと跳び込まない自分に疑問でも抱いたか、女たちは顔をこちらに向けてきた。


 美しい金髪の隙間から覗いたその顔は、緑色の苔で覆われている。目も鼻もなく、苔だけが僕を見つめていた。


『ルサールカ』


 川や湖で出現する魔物。美しい女性の姿をしたそれらは、人を水底へと引きずり込み溺死させる。


 水に潜らない自分に焦れたのか、奴らが凄まじい速さで水面に上がって来た。伸ばされた手が伸びて、こちらを襲う。


 だが、問題ない。そもそも陸に近づいてくれれば、こちらの射程範囲だ。


「『氷牢』!」


 六本の柱が水面に突き刺さり、沈むよりも速く周囲を凍らせる。当然の様にその中央にいたルサールカどもも氷に取り込まれた。


 それでもすぐさま死に至らないのはその『抵抗』の強さか。凍り付いた川に飛び込み、砕けてしまう前に接近。ルサールカどもの頭に剣を突き込んでいく。


 あっという間に仕留め終え、粒子となるのを見ながら河原まで後退。どうも、ドロップはないらしい。


「ナイス雪音」


「いえ、それほどでも」


 それにしても、と。また川の底を覗き込んでみる。そこには石だけが転がっていた。


 このダンジョンで、オークの皮以外に稼げそうなのは『あれ』だけなのだが。流石に欲張り過ぎか。とっとと帰ろ。


 そう思い歩き出す。気分転換ではないが、どうせだからと河原を歩いて。


 進む事十分ほど。このダンジョンの広さに『もう孤島から巨島に改名しろ』と思っていると、黒い影を少し遠くの水面に捉えた。


 強靭な五感をもつ覚醒者だが、その中でも特に高い視力をもつ魔眼もち。その眼でもって、確かにその影の正体を見抜く。


『ヴォジャノーイ』


 ルサールカとセットで語られる魔物。蛙人間、と表すのが最も適切な姿をしている。


 一見二足歩行の蛙で、骨格のみ人間に近い。その体格は人基準でも大柄な部類に入るだろう。見た目通り、その怪力はオークに匹敵するとか。


 だがあいつの一番厄介な所は、その再生能力。手足が千切れようがすぐに生えてきてしまうらしい。


 そんな怪物を見た感想として。


「よっしゃぁ!」


 思わず小声でガッツポーズを決めるのだった。


「え、だ、旦那様?」


「ああ、ごめん。驚かせた?」


「ま、まさかアレも守備範囲に……?」


「ないよ?ないからね?性癖の話から離れようか」


 変態共と僕を一緒にするな。あれで興奮するのは魚山君クラスの異常者である。


「アレのドロップ品で、偶に高価な物が落ちるってだけだよ。とりあえず倒そう」


「あ、そういう事でしたか。安心しました……」


 そんな疑うほど?


「主様。手筈は?」


「ヴォジャノーイも通りがかれば襲ってくるから、僕が前に出る。援護お願い」


「かしこまりました」


 笑顔で頷くレイラにこちらも親指をたてて返し、歩を速める。


 早歩きから駆け足に。剣を構え、視線は水面に向けたまま。


 ヴォジャノーイ達も気づいたのだろう。黒い瞳をこちらに向け、げろげろと髭みたいに生えた苔に覆われた口から声を出す。


 バシャバシャと勢いよく河原に飛び出してきたヴォジャノーイ達。奴らはその鋭い爪で襲いかかって来た。その数、四体。


 それでも、ランク差は数の不利を容易に覆す。


 一体目が右腕を振りかぶった段階で胴を右脇から左肩に両断、そのまま次の個体の首を刎ねる。


「『ファイヤージャベリン』」


「『氷牙』」


 残り二体には炎と氷の槍がそれぞれ突き刺さる。顔面を貫かれたそれらが、ゆっくりと背中から倒れ伏した。


 それらが魔力の粒子に変わるのを見届けていると、うち一体が何か残していったのを視認する。


 まさか!


「おおっ」


 それを拾い上げて声をあげる。すげぇ、『銀の腕輪』だ!


 ただの銀と思うことなかれ。魔力を帯びたこれは、一個五十万で売れるのだ。『Dランク』のドロップ品としてはかなりの額である。


 周囲を確認してから、レイラと雪音に近づいても大丈夫と合図を出す。


 アイテム袋に腕輪をしまいながら、川の中を覗き込んだ。さっき見回した時に、川の底にある『建物』を見たのだ。


 木と石でできた、歪なそれ。屋敷と言えなくもないそれこそ、ヴォジャノーイ達の根城である。


「レイラ。潜るからこのロープを魔法で木か石に固定しといて。雪音はいざとなったら援護を」


「はい、お任せください旦那様」


「構いませんが、私が潜りましょうか?」


「いやいや。それは悪いし」


「私の身など気にしなくても良いのですが……」


 困った様な笑顔のレイラに、アイテム袋から取り出した縄を胴体に巻きつけながら答える。流石に彼女をびしょ濡れにして自分だけそのままというのは、ねぇ。


 ……びしょ濡れ。


 ……家に帰ったら、この前通販で買ったスク水を着てもらおうかな。雪音にも。


 そんな煩悩を今は邪魔だと首を振って打ち払い、ロープの先っぽをレイラに渡して軽く準備運動。


「じゃ、行ってくる」


 兜を一度だけ解除し、大きく息を吸い込んでから再装着。どぼんと川に跳び込めば、不思議な事に水の流れは下に下にと体を引き込んでいった。


 鎧の重さとか関係ない。引きずり込まれているのだ、あの建物に。


 もしもヴォジャノーイ達がまだ残っていたら面倒だし、そうでなくとも他の個体やルサールカが来ても邪魔だ。


『魔力開放』


 全力で剣を振るう。水中で多少威力は減衰しても、まとわりついてくるダンジョンの水を吹き飛ばし建物を破壊するには十分。


 隠れ潜んでいたらしい二体のヴォジャノーイが消えるのを傍目に、壊れて流されていく建物の残骸の中で光る物を見つけた。


 それは宝箱の鍵穴。魔力の放出で近づき、剣をその辺に突き刺して固定。残骸が体に当たるのも無視し、箱を抱えて川底を蹴った。


 同時にロープを軽く引けばレイラと雪音が引っ張り上げてくれる。河原に戻り、小脇に抱えた宝箱を降ろした。


「ありがとう、二人とも」


「それよりお怪我はありませんか?水中は戦いづらいですから」


「戦闘にはなってないから大丈夫」


「あの……浅学で申し訳ございません。わざわざ敵の有利な地形に行ってまで、この宝箱を取りに行く必要があったのですか?」


 不思議そうに首を傾げる雪音に、大きく頷いた。


「ああ。ミミックでなければ、だけど」


 まあ抱えた段階で出てこなかったし魔眼も発動しなかったので、本物である事は間違いない。


 早速、鍵を壊して中身を確認した。


「おっし」


 中に入っていたのは、黄金の水車の模型。


 これは魔道具であり、壺の底に置くと大気中の魔力を変換して水を作り出すとか。


「魔道具ですか。高価な物なんですか?」


「たしか、七十万から八十万で取引されていたはず。今日はついてる……!」


 思わず二度三度とガッツポーズを決めた。


 いやぁ、ヴォジャノーイのドロップなんてそうそうないって聞くし、奴らの住処も見つかりづらいと聞くのに。まさかこうも出てくるとは。


 ちなみに、ヴォジャノーイが他に落とすドロップ品として『石でできたマトリョーシカ』がある。こっちはあんまり高く売れない。ルサールカの方は『銀の指輪』という、売れるには売れるけど伝承を考えるとちょっと気まずい代物が落ちる。


 なんにせよ、思わぬ儲けだ。これはゴーレムの材料をもう少し奮発してもいいかもしれない!全体像はレイラに任せているから、知らんけど!


「やりましたね、旦那様!」


「おめでとうございます!」


「ああ!いやぁ、東郷さんの依頼を受けて良かった良かった!」


 こんな事なら、このダンジョンに通っていいくらいだ。それほどの儲けである。


 ――なお。ここから脱出まで更に二時間かかったあげく、道中で五十以上のヴォジャノーイとルサールカに襲われ、それに匹敵する数のオークとも戦う羽目になった。ついでにドロップ品はゼロである。


 二度と来るかこんなダンジョン。



*  *   *



『やあ、京太朗君。お疲れ様。依頼の達成報告がこちらにも届いたよ。ありがとう』


「いえ……東郷さんにはお世話になっていますから」


 宿泊先のホテルで、東郷さんと電話する。


 実はホテルに修学旅行や家族旅行以外で泊まるのは初めてなので、ちょっと緊張していた。


 なんというか、こう。特に何かあるわけでもなく落ち着かない。東郷さん、結構いい部屋取ってくれていたんだな。


 ちょっと申し訳ない。絶対に汚さない様にしよ。


「ただ、流石に疲れたのであのダンジョンにはもう行きたくないですけどね」


 苦笑いしながらそうこぼす。


 いや本当に。儲け自体はかなりの物となったが、それはそれ。長時間ダンジョンにいるというのは、精神衛生上よくない。講習でも四時間以上の探索は推奨しないと言われているのだ。


『おや、そうなのか……またあのダンジョンの間引きが必要になったら、お願いしようかとも思ったんだが。特にオークが増えやすくて困ってしまうものでね』


 少し冗談めかしに言う彼に、電話越しだが肩をすくめる。


「その心配はないと思います。あのダンジョン、暫くはオークが乱獲されると思うので」


『は?』


 頭に浮かぶイケメンの無駄にいい笑顔に、遠い目をした。





読んで頂きありがとうございます。

感想、評価、ブックマーク。いつも励みにさせて頂いております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。


相原健介ノ 好感度ガ 上ガッタ。

大川京太朗ハ 世界ノ広サヲ 知ッタ。

魚山健吾ハ クシャミヲ シタ。

東郷美代吉ハ 混乱シテイル。


Q.影の薄いはずの京太朗をどうして相川は覚えていたの?

A.相原

「俺のスケベソウルがあいつのスケベ度を察したんでしょうね」




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