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第百二十一話 緒方勇祢の前進

少し長めです。


第百二十一話 緒方勇祢の前進


金の少女が両親と観光をしている頃────


サイド 緒方 勇祢



「はぁ……」


 喫茶店でコーヒーを前に、ため息をつく。


「おやおや。ため息をつくと幸せが逃げると言いますよ?」


「マスター……」


 喫茶店のマスターを見上げ、どうにか苦笑を浮かべた。


「すみません。お店の空気、悪くしちゃいますよね」


「構いませんよ。どうせ他にお客様はいませんし」


 朗らかに笑うマスター。確かに彼の言う通り店には私以外客の姿はない。


 ここ、一応駅から近いはずなんだけど……。


「大丈夫なんですか、このお店」


「はっはっは」


 笑いながらカウンターに戻っていくマスター。


 ……もう少し、ここに来る頻度上げようかな。私一人の支払いでどこまで変わるかわからないけど。


 本当は色々注文した方がいいのだが、どうにも食欲がわかない。我ながら迷惑な客だ。


 食事は身体の燃料。それを疎かにするのは警官としていけないのだが、どうにも、な。


 まあ食事の方は一応カロリーバーとビタミン剤でどうとでもなるが、実は睡眠の方も少々厳しい。どれだけ布団で横になっても眠れないのだ。


 よく式典だの地域のイベントだのに呼ばれるせいか、体を動かす機会が減ってしまった。前のように疲労による気絶で眠るという事が難しくなっている。最後に眠ったのは……一週間ほど前か?一カ月も眠らなければ気絶できると思うが。


 ……よそう。この思考は流石に不健康だという自覚がある。


 そもそも、前に出て戦うべき自分が己の体調管理も満足にできていない現状がいけないのだ。今度、また病院に行ってみよう。もしかしたら覚醒者でも眠れる薬が貰えるかもしれない。


 そう結論付けて、別の事を考える。私をここに呼び出した張本人はまだ来ない。その間に、ここ数日のうちにあった事件について考えるとしよう。


 まず、私の両親が襲われた『覚醒者襲撃事件』。便宜上そう呼ばれているが、実際は覚醒者の家族や親覚醒者派とされる人達も狙われた。


 亡くなった人達もいるのに警官の私がこう思うのは不謹慎かもしれないが……両親が無事でよかった。もしも二人になにかあれば、私は……。


 だが、この事件について考えるとどうしても思い出す人物がいる。


『大川京太朗』


 いかに記憶しづらい顔立ちの少年とは言え、こうも縁があれば覚えられる。


 平凡を絵にかいた様な彼だが、『偽りの英雄』である私とは違って『本当の英雄』だ。


 ミノタウロスを倒したのも彼。両親を助けてくれたのも彼。それ以外にも龍を討ち取ったという噂もある。その際に多くの民間人を助けたとも。


 ……間違いなく恩人だ。感謝もしているし、英雄の名を奪ってしまった事への罪悪感もある。


 ただ、どうしても苦手意識があるのだ。これは私の問題である。


 何かしらの形でお礼をすべきなのだが、いったい何を送ればいいのか。あいにくとあの年頃の男性が喜ぶものを自分は知らない。かといって純粋に現金というのも味気ないし、マスコミに知られた場合勘ぐられる。


 参考にと、学生時代の自分を思い出してみる。あの頃の自分が喜ぶ物……牛肉、運動用シューズ、豚肉、ゲーム機、鶏肉、漫画、肉………。



 つまり、焼き肉屋に連れて行けばいいのか?



 なるほど。男子高校生で焼き肉を奢られて喜ばないのは宗教や主義が原因で肉を食べられない人か、あるいは何かしらトラウマを持っている奴だけだろう。


 まあ私は最近肉類を食べようとすると死んでいった人達の顔が浮かぶんだけどね!


「は、ははっ……」


 あー……やめよ。この思考は本当に駄目だ。


 何やら母さんがやけに『こういうのは直接お礼しに行かないと』と言っていたが、申し訳ないけどお礼状と一緒に焼肉セットを送れるだけ送ってそれでいいにしてもらおう。多かったら友達やご家族と一緒に食べてもらえばいい。


 直接頭を下げに行かないのは失礼かもしれないが、肉を食べられない自分と焼き肉屋に行くより万倍マシなはずだ。


 次に起きた事件と言えば、『有川大臣襲撃事件』。


 つい先日発生したコレは、残念ながら私の方には詳しい情報がまわってきていない。一般の人達と同じ程度しか現状をわかっていないのだ。


 たしか、今日の午前中には官房長官が記者会見をして国民に現状を説明するはず。それを見れば、何かわかるだろうか。


 何にせよ、私にできる事は少ない。元々覚醒者が犯した事件とダンジョン関連にしかうちの部署は捜査権がないのだ。やれる事と言ったら、有川大臣を慕っていた覚醒者が暴走した時に被害を抑える様努力するだけ。それこそ、命に代えても。


 実際、もしもその様な事態になったら死ぬ気でいかねばどうにもならないだろう。


 有川ダンジョン対策大臣。彼はずっと親覚醒者派を保ってきた国会議員だ。臨時総理の座を辞してまで冒険者制度の改正を行った有川大臣を、国内の覚醒者達は希望の光として見ている。


 非覚醒者と覚醒者。いずれ、それが大きな差別を生むのは目に見えている。そんな中で『国会』という場で自分達の為に戦ってくれる存在のなんと大きな事か。


 本当に胡散臭い以外は覚醒者視点で欠点のない人である。凄く胡散臭いけど、いい人なのだろう。ありえないぐらい胡散臭いけども。


 ……となると、考えなければならないのは時系列を無視して後回しにした『あの件』か。


 大山警察庁長官と、深山統合幕僚長。彼らから持ち掛けられた自分の今後について。


 抜刀隊の初代隊長とやらになるのは、この際構わない。問題なのはそこから先だ。


 ……個人的な意見として、彼らの意見は正しいと思う。一警察官としては、疑問の声をあげたいが。


 現状、日本は薄氷の上にある。マスコミに政府どころか海外からも圧力がかかって報道規制がされているが、経済も生産もガタガタだ。


 日本は新宿を始め多くの土地を失った。それに加え亡くなった人達も多い。既存の社会を維持するには、とっくに限界を超えている。それは海の向こうの大国とて変わらない。だからこそ、海外も無茶な引き抜きまでして強力な覚醒者を自国の戦力にしようとしているのだ。


 たった一石投じられただけで、この水の表面に浮いているだけの薄氷は割れてしまうだろう。後は日本そのものが沈むだけだ。それに連鎖して、他の国々も沈み始めるだろう。


 それを回避するには、彼らの言う方法しかないのかもしれない。だが、その役目を『私にやれ』というのが問題なのだ。


 できるわけがない。私は偽物だ。本物の英雄ではない。『大川京太朗』ではないのだ。


 己の体調すら維持できず、私生活はボロボロ。仕事だって言われた事をやっているだけ。そんな人間に『あの大役』が務まるはずがないじゃないか。


 きっと他に適任がいる。無理だよ、私には……絶対……。


 コーヒーが一口もつけられず残ったままのカップを前に俯いていれば、カランコロンとドアに提げられたベルが鳴る。


「いらっしゃいませ」


「すみません、人と待ち合わせして……ああ、いたいた」


 こちらに歩いてくる人物に顔を上げ、ほとんど無意識に椅子から立ち上がり姿勢を正す。


「お久しぶりです、佐藤先輩」


「久しぶり。お堅いのは相変わらずね、勇祢」


 そう言って肩をすくめる女性。佐藤妙子先輩。


 セミロングの黒髪にぱっちりとした気の強そうな瞳。整った顔立ちはそばかすさえもチャームポイントにして、黒のセーターとハイウエストな白のタイトスカート姿で自信満々に立っている。


 私の中学高校の先輩であり、時折相談にのってくれる姉の様な存在でもあった人だ。


 と言っても、この人が地元を離れて東京に行ってからはあんまり交流がないけど。今回突然親経由で呼び出された時はびっくりした。


「悪いわね、待たせちゃって。ちょっと偶然出会った『お嬢様』に身バレ……い、いや。何でもないわ」


「お嬢様?」


 首を傾げる私に彼女は口元を引き攣らせながら椅子に座る。


「ほ、ほら!何か注文するわよ!ここは私が奢るから!マスター、メニューお願い!」


「はいはい」


 ニコニコと笑うマスターからメニューを受け取りながら、露骨に佐藤先輩が話題を変える。


「それよりもあんた。髪の毛ぼさぼさじゃない?覚醒者なのは知っているけど、ちゃんとケアしないとダメよ?というか、なんでスーツ姿なのよ。今日って休みなんでしょ?」


「え、ああ。いえ、これは仕事用じゃなくって私用のスーツだしいいかなって」


「駄目に決まってんでしょ。んっとに昔からそういうのに無頓着なんだから……いいわ。この後付き合いなさい。私があんたを『大人の女』にしてあげる」


「いえ、結構です」


「なんでよ!!」


 全力で感情を露にする彼女に、つい笑ってしまう。この人、本当に変わっていないな。


「……その、聞かないんですか?」


「は?ああ、その左目と左手の事?べつに。ニュースや雑誌でさんざん見たわよ、『クレタの英雄』とかその話でしょ?喋りたいなら聴くけど?」


「いえ……大丈夫です」


「あっそ」


 本気で興味ないとばかりに、彼女はマスターに紅茶とチーズケーキを注文してこちらに向き直る。


「それで、最近どうなのよ」


「どう、とは?」


「ちゃんと食べてるのか、部屋は綺麗にしてるのか、洗濯はしているのか、眠っているのか。そんな感じよ」


「え、えっと。洗濯は勿論。部屋も綺麗にしています。食事もちゃんと」


「今朝と昨晩食べた物を言ってみなさい」


 あ、駄目だ。この眼は嘘を許さないやつだ。


「さ、昨晩は何も……け、今朝はゼリー飲料とビタミン剤を」


「このお馬鹿っ!」


「い゛っ!?」


 がっちりと彼女の拳が私の側頭部を挟み、そのままぐりぐりと動かしてきた。


 い、痛い!?この痛みは間違いなく学生時代ウインドウショッピングなる物に連れていかれた時、楽だからとジャージとTシャツで行った時やられたのと同じ!!


 ……え、痛い?


「あ・ん・た・は!一人前のレディのはずでしょうが!人前に出る仕事をしているのなら、生活ぐらいちゃんとしなさいこのおぉばぁかぁああああ!」


「ま、先輩!ギブ!ギブです!」


「ふんっ」


「あうっ」


 乱暴に解放された頭を押さえ、軽い眩暈を覚えながらも先輩に焦点を合わせる。


「せ、先輩。一つお聞きしても」


「なによ。美貌の秘訣ならあんたの服を選びながらいくらでも聞かせてやるわ」


「いえ、そうではなく」


「あぁん?」


「その……先輩も覚醒者なんですか?」


「ああ、そっちね」


 注文の品を置きに来たマスターに軽く会釈してから、先輩がつまらなそうに背もたれに体を預ける。


「まあね。これでも結構強い方よ。それでも上には上がいるし、私より若いのにやたら強そうな子もいたけど。地味な顔なのに」


「最後のいります?」


「いる。良い子だけどそれ以外に評する言葉がなかったし」


 相変わらずだな、この先輩……そんなだから色々誤解されるのに。


 ちゃんと社会人としてやっていけているのだろうか。とても不安だ。


「今は私よりあんたについてよ。ほら、聞いてやるから語りなさい」


「え、ええ?呼び出したのは先輩じゃないですか」


「はぁん?いいのかしら。私が自分の事を語ったら二十四時間じゃ足りないわよ」


 そ、そうだった。この人、自画自賛だけで文字通り丸一日話せる人だった……承認欲求の怪物だったのを失念していた。


「で、どうなの」


「…………」


 どこまで、喋っていいのだろうか。


 この人が私からの話をマスコミに売るとは思えない。それでも警官として守秘義務を破るわけにも……。


 言葉を選びながら、ゆっくりと口を開く。


「あ、あの」


「うん」


「私、テレビとか、雑誌で言う様な活躍、全然してないんです……」


 そうして口をついて出たのは、最初から本来なら話してはいけない内容だった。


 自覚しているのに止まれない。ポロポロと思った事があふれ出てくる。


 思い出す。学生時代もこうして、佐藤先輩に相談を持ち掛けていた事を。


「………」


 そんな私を、先輩は黙って見ているだけだ。否定も肯定もせず、ただ続きを促す様な瞳を向けてくる。


 本当に、こういう所が相変わらずだ。


「私が無謀な事を言ったから、たくさん死んで……なのに、誰も私を責めてくれなくって。それどころか、本当に英雄と呼ばれる人まで、私を称えてきて」


 そうだ。私が大川君を苦手とするのは罪悪感だけではない。


 彼が自分に向ける、心からの敬意があるから。素朴な少年だからこそ、その眼は口よりもよほど雄弁だった。


 だからこそ、私の心を容赦なく抉ってくる。


「本当は、罪人なんです。私。今すぐこの事を世間に公表すべきなのに、それができないでいる。上に止められているとか、そんな言い訳して……本気で罪を償いたいならそんな事気にせずぶちまければいいのに」


 言葉が止まらない。理性を無視して口が動き、喉が震える。


「自分で自分を裁く事すらできない!そんな、そんな弱虫な私が、いったい何を成せるって言うんですかっ」


 そうだ。私には何もできない。何も成し遂げられない。


「それなのに功績だけ押し付けられて、期待と羨望の眼を向けられて、違う。確かに昔は、その視線を向けられる存在に憧れた!けど、今は、今は……!」


 気が付けば、右目から涙がこぼれ落ちる。


「私を、殺してほしいんです。佐藤先輩……」


 視線を向けられた先輩は、こちらをじっと見つめたままだ。


 紅茶を一口含んでから、彼女はようやく喋り出す。


「言いたい事は、それで全部?」


「……いえ。でも、今喋れるのはこれぐらいです」


 守秘義務もあるが、それ以上に自分で自分の感情が整理できていない。


 先ほどまでもなんの脈絡もなく喋っていたのに、これ以上はそもそも文として成立しない事だろう。


「なら、私からも言わせてもらうわ」


 紅茶のカップを置いて、佐藤先輩が突然私の胸倉を掴んできた。


 至近距離で彼女の栗色の瞳がこちらを睨みつけてくる。


「あんたは最低の屑よ」


「……はい」


「何を被害者みたいに語ってんの?ええ、確かに部分的にならあんたは被害者よ。どうせ、英雄だのなんだのという肩書は誰かに勝手に背負わされて、そのまま歩かされてる。違う?」


「それ、は……」


「けどね。あんたは引き返せた。立ち止まって吐き出す事もできた。それなのにしなかった。それはなんで?」


「なんでって……私が、弱虫だったから」


「あんたがそう思うのは勝手だけど、私には違って見えるわ」


「ええ……?」


 何を言っているんだこの人。


 そんな勝手に私について語られても困る。佐藤先輩は私に変な幻想を抱いていないと思っていたのに。


 だが、そんな失望を杞憂とばかりに彼女は切って捨てた。


「あんた、昔なんて言って警察を目指したか言ってみなさい」


「え?」


「あんたのスタートラインは、原点は何って聞いてんのよ」


『原点を忘れてはなりませんよ?』


 前に、花園加恋から言われた事を思い出す。


 そうだ。あの時も同じ事を言われて、けどそれどころじゃないって目を逸らして。


「何のためにその道を選んだ。あたしに言ってみなさいよ、勇祢」


 ずっと忘れていた。大切な記憶のはずなのに、それでも今の私には眩しすぎる過去で。遠い過去になってしまった思い出で。


 だけど、今目の前で『過去の私』を覚えてくれている人に、ようやく唇が動いた。



「誰かの笑顔を、守れる人になりたい」



 小さい頃、道に迷って泣いていた私をお巡りさんが助けてくれた事がある。


散々探してくれたのか、よれよれの背中だったあの人。その姿が綺麗で、憧れて。ああなりたいって、思ったから。


 私は、警察官になったんだ。


「なら、今あんたができる事はなに?いじけて自分を悲劇のヒロインにする事?それとも全部ぶちまけて投げ出す事?どれでもいいわよ、あんたの人生だもの」


「……いいえ」


 そっと、こちらの胸倉を掴む彼女の手に触れる。


 ずっとズレていたピースが嵌る様な感覚。ぶれていた何かが、ようやく定まった。


「私がやるべき事は、別にあります」


「へぇ。それは何?言ってみなさい」


「それは――」


 しっかりと、『今の私』を見てくれた人を見つめ返す。


「たくさんご飯を食べて、しっかり眠る事です。あと、腕を治してもらう事」


「ふぅん……そう」


 するりと手を離して、佐藤先輩が椅子に座り直す。


「いいんじゃない。及第点をあげる」


「ははっ、手厳しいですね」


「当たり前でしょ?あんた、甘くすると勝手に自分で自分を追い込むタイプじゃない」


 そっと顔を逸らすと、頭を掴まれて戻された。痛い。


「あんたねぇ。どうせ『眠れないなら気絶するまで体を動かせばいい』とか思っているでしょ」


「な、なぜそれを」


「そういう所が学習してないのよ本当に。脳みそにまで筋肉が詰まってんの?」


 心底呆れたという先輩に、ただ恥じ入るばかりである。


 そうだ。何をするにしろ身体が第一。思い返せば栄養のあるご飯を食べてたっぷり寝て、そして動く。これができれば、とりあえず人生なんとかなると母も言っていた。


 難しい事は後回しだ。まずは食事にしよう。


「マスター!!特盛鉄板ナポリタンと、フレンチトースト!あとギガ盛りDXパフェをお願いします!」


「はいはい。それほど大きな声でなくとも、聞こえていますよ」


「ちょ、あんた奢りだからって。いやそれ以前に入るのそんなに」


「はい!突然お腹が空き始めました!」


「くっ、そう言えばこういう奴だった……!」


 座ったまま敬礼する私に佐藤先輩が大きく舌打ちする。


 まあ、流石にこれだけ頼んだから自分の分ぐらいは支払うつもりだが。問題はこの人、プライドすっごく高いからなぁ。最初に奢るって言った事気にしそうではある。


「そう言えば先輩。そっちこそ最近どうなんですか?」


「はん!あんたと違って三食栄養バランスを考えて食べているわよ。これでも栄養士と調理師免許持っているんだから」


「相変わらず無駄に高スペックですね」


「あんた今無駄にって言った?」


「そんな事より、『あたしは東京を踏み台に世界へ羽ばたく大女優になるのよ』って言って地元を出たじゃないですか。どうなんです、そっちの方は」


「ぎくっっ!!??」


 そう。この人は故郷の村で蝶よ花よと可愛がられていたらしく、街に移り住んで中学や高校に行ってもマドンナ的な存在となりそれはもう常に天狗の鼻を伸ばしていた。


 で、本当に高校卒業後は東京に出て行ったのである。


「私、テレビとかには疎いですけど……先輩の名前聞いた事ありませんよ?」


「うっさいわね!これからよこれから!まだ私の輝かしいトップ女優への道は終わっていないわ!」


「けど先輩。もう二十――」


「それ以上言ったら戦争よ」


「YESマム!!」


 いけない。今ミノタウロスなみの殺気がぶつけられた気がする。


「ふん、今に見てなさい。既に動画投稿者としてはかぁなぁりっ売れているんだから!ここに来たのだってねぇ、物凄い大企業からCMへのオファーがあってそのついでなんだから!」


「え、CM?どんなですか」


「それは私が地元に錦を飾ってから教えてあげるわ。もう凄いんだから。正直三回ぐらいドッキリじゃないか確認したわ」


 もの凄いドヤ顔で髪を『ファサァッ……』させてくる先輩。うーん、シャンプーの宣伝だろうか。


「お待たせしました。こちら特盛鉄板ナポリタンです」


「あ、ありがとうございます!」


「フレンチトーストとパフェは後からお持ちしますね」


「どうも!頂きます!!」


 まあこの先輩なら何だかんだ上手くやるだろう。今はたくさん食べなければ。


 少し前まではケチャップソースが血に見えていたのに、今はとても食欲をそそる。


 ナポリタンを前に両手を合わせてから、早速フォークで口に放り込んでいった。


「ちょ、食べ方が汚い。もっと優雅かつ気品をもって食べなさい」


「むぐ……いえ。警官としては早寝早食い早トイレは基本ですし」


「やかましいわ。あと次ここでトイレの話をしたらどつくわよ」


「あ、トイレと言えば先輩って中学の頃下校中に」


「有言実行!」


「目ガア゛ア゛ア゛―――ッ!?」





読んで頂きありがとうございます。

感想、評価、ブックマーク。いつも励みにさせて頂いております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。



Q.作中世界ってどれぐらいやばいの?

A.超スーパーすげぇどすばい。

 経済も人材も土地も既存の考えだとどうにもならないです。新しい仕組みを作らないと、国家崩壊からの群雄割拠不可避。

 なお、作中世界の古い方の『神代』は世界各地がそれぞれダンジョンに飲み込まれ、その中で人が生活している感じでした。まあ、当然その外で生活している人もいたのですが。

 各地に伝わる神話とはそれぞれのダンジョン内の出来事であり、英雄たちは今で言う覚醒者となります。神格はモンスターだったり強力な覚醒者だったり色々。デミゴッドは大抵が普通に覚醒者の子供でした。

 そこから世界の魔力濃度が人口やらなんやらで減少。ダンジョンも閉じていった結果、モンスターも覚醒者も消えていきました。

 そんな世界に作中だともう一度なり始めています。ついでに、人間が多い分大気中の魔力も多いので今度の神代が終わるのがいつになるのかわかりません。


 まとめ。通信機器全滅からの街の外でドラゴンとかに会うのが当たり前だし、なんなら街中にも表れる日常へと直進中。とってもやばい。


Q.ダンジョン内で生活していたって、じゃあ過去は覚醒者が多かったの?

A.過去の神代では人口がとっても少ない。つまり覚醒していないと生き残れなかった環境が多数だっただけです。まあ非覚醒者でも強い覚醒者が保護していたりそもそもダンジョンの外で暮らしていたケースもありますが。







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― 新着の感想 ―
[一言] 佐藤さん駄騎士ルートで大女優ってセクシーな方の大女優になるルート乗ってない?大丈夫?w
[気になる点] 個人的に緒方さんに強い拒否感があったのは、喋りはしないが行動を以て全力で言い訳して逃げてるのが胸糞だったからかも。眼と手を治さないのも言い訳に使えるからだったろうし(本人認めんでしょう…
[良い点] 所謂、取りこぼした方にばかり目を向けている状態だったから余計にネガティブに傾いてたんだよな。 いい先輩してるじゃないか駄騎士(推定)さん。 しかし承認欲求の怪物の割りに活動そのものはまだ…
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