第九十七話 金剛二式
第九十七話 金剛二式
サイド 大川 京太朗
今回潜るダンジョン。その内部は物語に出てくる西洋の城の中を彷彿とさせた。
赤い絨毯が敷かれた豪華な廊下。等間隔で並べられた燭台が照らし出した壁には染み一つなく、時折豪華な『額縁』が飾られている。
だが蝋燭の火では未だ薄暗いそこはどこか不気味で、壁に掛けられた絵のない空っぽの額縁が非現実感を醸し出していた。まるで一風変わったお化け屋敷の様でもある。
そんな中を進むのは、場の雰囲気に似合わぬ機械的な鎧を着た集団。
『金剛二式』
矢島さんがそう呼んだあの装備は、前に自分が視た物とは随分とその装いを変えていた。
まず、宇宙服の様だった首から下がかなりメカニカルな姿に。それこそSFに出てくるパワードスーツそのものだ。頭部だけ変化らしい物は見られないバケツのままだけど。
そして全員の背部に金属製のランドセルみたいな物が装備されている。そこからサブアームが伸びており、その先にある物は三種。
前衛として立つアルトゥールさんとパウロさんは小型の盾が一対。その後ろを進むジュリアさんは左側に一メートル弱ほどの縦に長い箱で、左側が人頭大の筒。そしてエミリアさんがティッシュ箱ほどの直方体が一対だ。
更にはそれぞれが持っている武器もジュリアさん以外変わっている。どうも戦闘スタイル自体が見直されたらしい。
そんな彼らの少し後ろを進むのは、自分とレイラである。本当はリーンフォースがこういう仕事に一番適任なのだが……自衛隊の記録に残すのは、少し怖いので今は引っ込めていた。
本気は出すが全力は出すつもりはあんまりない。まあ、どうしてもやばいってなったら雪音もリーンフォースも出すけど。
……これでいいのだろうか?凄く不安だ。護衛なんて初めてだから何が正解なのかわからない。もしも自分の判断ミスで彼らを死なせたら嫌だし、かと言って手札はあんまり見せたくない。
普段の探索映像はストアで提出しているが、それでも実際に戦っている映像を見たら何か見抜かれるかもしれない。なんせ自衛隊は戦闘のプロだし、矢島さんは魔道具の研究者だ。
あー……なんかお腹グルグルしてきた。
『ドローン射出』
と、そんな事を考えていたら聞き慣れない女性の声が聞こえてきてすぐに意識をそちらに。
視れば、対物ライフルを持つジュリアさんがサブアームについた筒から有線の小型ドローンを射出した。
なるほど、電波の通じないダンジョン内でも有線ならって事か。
小さいプロペラ音を発しながら曲がり角に向かっていくドローン。それと並行して、縦に長い箱の底から金属製の棒が出てきて床に押し当てられた。
はて、と思っているとアルトゥールさんがハンドサインで静かにする様に示してくる。まさか、ソナー?
とりあえず一分ほどそうしていると、ドローンが戻って来た。それを筒に戻すと、ジュリアさんが一つ頷く。
『周辺に敵影、なし』
『了解』
相変わらず少しカタコトな日本語でそう言う彼女にアルトゥールさんが頷き、一行は銃を手に警戒しながら一列に壁沿いを小走りで移動を再開。
基本的に自分は今回いないものとして扱われる事になっているので、それに無言でついていく。
今のところ接敵はなし。入ったばかりという事もあり順調ではあるが、はたして彼らは『Cランクモンスター』相手にどう戦うのやら。
少しだけダンジョンに入る直前に矢島さんから口頭で彼らの武装について聞いたが、それだけだ。機密ゆえ仕方がないとは言え、そういうのは少し困る。
そんなこんなで更に進む事三分。視界の端で燭台の火が少し揺れた。
瞬間アルトゥールさんのハンドサインで立ち止まる一行。ジュリアさんが鉄棒を床に押し当てた後、すぐに膝立ちで射撃体勢に入った。
自分の眼も薄暗い中こちらに迫る二つの影を捉えている。不定形の黒い霞の様なそれらに、エミリアさんが武器を向けた。
彼女の武装はまさかのグレポン二丁。回転式弾倉のそれを一度回してから、左手の方を発砲。影たちにグレネードが迫り、空中で炸裂した。
放たれたのは銀色の粒子が舞うミスト。それを潜るなり影たちが悶える様に蠢いて減速する。
『ア、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛………!?』
いいや、実際に悶えうめき声をあげていた。
黒い影が形を持っていく。二メートルと少しの巨体を持つ怪人。黒山羊の頭と下半身。上半身は筋骨隆々の人間のそれであり、両手の爪が異様に伸びている。
身体の各所から煙を出し剥き出しの肌に火傷を負いながら、金色に輝く山羊の瞳がこちらを強く睨みつけた。
『レッサーデーモン』
このダンジョンに出現する『Cランクモンスター』。よく言えば魔法戦士の万能型。悪く言えば器用貧乏なモンスターである。
奴らの片方が爪を振りかぶりながら駆けだし、もう一体は右腕を突き出して魔法陣を浮かび上がらせた。
だが、魔法を放とうとした方の顔面に音速を超えて親指大の弾丸が叩き込まれる。
『メェ、アァ!?』
大きく仰け反ったその巨体に、続けて二発三発と弾丸を撃つのはジュリアさんの『金剛』。その狙いは機械の様に……実際機械の補正を受けてか非常に正確だ。
だが、フリーであるもう一体はどんどん距離をつめてきていた。その速度は競走馬並みであり、数十メートルの距離などあっという間になくなるだろう。
それに対応するのは前衛の二人。半身で立つパウロさんとその後ろから狙いを定めるアルトゥールさん。二人が持つショットガンが火を噴き、散弾が発射される。
一部が燭台を壊しながら飛んでいくそれを前に、しかしレッサーデーモンは怯まない。ばら撒かれた鉄球の纏う魔力量に豆鉄砲とでも思ったのだろう。
案の定、散弾を浴びたレッサーデーモンの身体には小さな擦り傷とめり込んだ鉄球がいくつか。モンスターにとっては軽傷だ。
しかし、その足がもつれ片膝をついて転倒する。
『ゴ、ォォォ……!?』
だらだらと口から涎をたらし、小さく体を痙攣させるレッサーデーモン。奴に撃ち込まれた銃弾は『魔力拡散用特殊魔弾』……というらしい。
モンスターの身体は肉の器に視えてその実は魔力の集合体である。であれば、魔力を乱す様にしてやればいい。そんなコンセプトで作られたこの武器は、目の前の怪物には随分と効いた様だ。
それでも立ち上がろうとする敵の顔面にグレネードが着弾。接触と同時に発光。その眩い光はただの目くらましではなく、『白魔法』である。
ドロップ品である魔石の活用法の一つに、魔法を籠めるという物がある。それの応用だとか。
首から上の体毛が焼き尽くされ、絶叫をあげながら転げるレッサーデーモン。その皮膚は焼け爛れ、その姿はいかに倒すべき怪物とは言え視るに堪えない。
だがそんな自分とは違いアルトゥールさん達は容赦なく引き金を引いた。散弾が脆くなった顔面に次々と突き刺さり魔力を乱す。レッサーデーモンはそれから数秒のうちに身体を粒子に変え始めた。
もう一体の方は、先の奴が片膝をついた辺りで五発ほど対物ライフルの弾を受けて絶命している。
『……クリア』
『クリア』
アルトゥールさんとジュリアさんの声が小さく『金剛』のスピーカーから響き、彼らはまた歩き出す。
なんというか、前の時とは戦い方自体が違うな。レイラと小さく目配せして、彼らの後をついていく。
前に戦った時は『冒険者パーティーの各ポジションの延長線上』という戦い方だった。だが、今はより現代戦じみている。
それがいいのか悪いのかは、わからないけど。だが近寄らせず倒すのはある意味理想的な戦い方かもしれない。
更に進んでいく中、定期的に立ち止まってジュリアさんがドローンとソナーで周囲を探査。そして曲がり角まであと二十メートルって所で何やらハンドサインを出した。
あれは……この先に敵がいる?でいいのかな。
アルトゥールさんが頷き、エミリアさんにヘルムを軽く動かした。すると彼女が一列の状態から少し外れグレポンを構える。
弾倉が回され、弾を選んだ後に射出。それは角の壁に着弾して炸裂し、『白魔法』が発動する。
あれ、たしか下級の魔法だな。通常の魔石に籠められるのはその辺が限界とレイラに聞いた事があるし、感じられる魔力量的にもそのぐらいだろう。
だが、レッサーデーモンにはその程度でも有効だ。絶叫が聞こえる中、更にグレネードが放たれる。
合計三発ほどが放たれた後、右の壁沿いに進み左に曲がる。そして二回パウロさんが発砲。レッサーデーモンの小さいうめき声が聞こえてきた。
見てみれば、一体のモンスターが粒子となって消えていく所だ。絶叫の数からもう一体いたはずだが……逃げたか?
ハンドサインの後またアルトゥールさん達が進んでいき、扉に突き当たる。ジュリアさんが鉄棒で音を探った後、パウロさんが小さく開けた扉の隙間にドローンを滑り込ませた。
『……クリア』
『了解』
安全が確認できたのか、両開きのドアを片方だけ開けて入室。念のためかそれぞれに銃を構えて内部をクリアリングし直した。
室内は、なんと言えばいいのか。『貴族の館にある食堂』と言えば一番しっくりくるか?火のついていない暖炉があり、その上に一際大きな額縁。長い机にずらりと椅子が並んでいる。
その椅子を三つある扉につっかえ棒代わりに置いた後、壁際に彼らは移動。扉を全て見張れる位置でパウロさんとエミリアさんが跪いた。
『交換開始』
『了解』
そう言って、アルトゥールさんとジュリアさんが扉を警戒する中二人が腰のポーチからアイテム袋を取り出した。
サブアームにつけた装備を床に置き、その副腕を使って鉄のランドセルみたいな所から直方体の物を取り出した。チラリと見えた文字は、『マギバッテリー』。あれが燃料なのだろうか?
アイテム袋から出した新品と交換後、更にそれぞれ『金剛』の肩から先をパージ。ダイバースーツの様に指先まで覆ったアンダースーツが露わになり、これまたアイテム袋から出した新しい腕パーツを装着。
あらかじめ矢島さんから聞いていたが、こうして見るとやはり少しびっくりする。まさか、部品の劣化に対して『丸ごと代えてしまえ』なんて答えを出すとは。
確かにこれなら現場でもすぐに交換できるだろうが……大丈夫なのか?
銃に弾も装填し、二十秒ほどで二人とも交換が終了。アルトゥールさん達と入れ替わる。
全員が交換を終えた所で、ざわりと魔力の流れに違和感を覚えた。隣のレイラも同じなのか、手に持っていたタクトに力を籠める。
直後、魔眼が発動。肩に担いでいたツヴァイヘンダーを振りかぶろうとする。
天井に突如出現した黒い霧。レッサーデーモン達のそれよりも一回り大きいそれが、彼らに音もなく落ちていきながら姿を変えていった。
ワインレッドの体毛をもった山羊の頭と下半身。人に似た胴体には血の様に赤い模様が刻み込まれている。
レッサーデーモンに瓜二つの外見的特徴。されどその身に纏う魔力の質はモノが違う。
『ノーブルデーモン』
モンスターに階級などあるのか知らないが、そう呼ばれるその悪魔。手に持つ大鎌を振りかぶり、無音にて彼らに迫る。
『っ、エネミー!!』
だがそれが振り下ろされる前にジュリアさんが叫び、ほぼ同時にアルトゥールさん達が散開。自分も間合いを詰めようとしていた足を止めた。
空ぶった大鎌が床を引き裂く。まるで大型獣が木の板につけた爪痕の様なものを、石造りの床に刻み付けた。
床に降り立つノーブルデーモンと、すぐさま再集結して陣形をとったアルトゥールさん達。
数秒沈黙が流れ、デーモンの金色の瞳がこちらに向けられた。
強い警戒心を秘めたその視線に、こちらは答えない。いつでも斬りかかれる様に剣を担いだままだが、今介入するつもりはなかった。
だが、相手はそう思ってくれなかったらしい。最大限の警戒をこちらに向けてきている。
そして、それはあまりにも大きい隙だった。
対物ライフルの弾丸が奴の側頭部に突き刺さり、部屋中に響く銃声。続けて放たれる散弾がデーモンの身体を襲う。
机や椅子、壁に傷跡を作りながら飛んでくる弾丸の数々。それに煩わしそうにデーモンが吠え、ようやく自分ではなくアルトゥールさん達に顔を向けた。
瞬間、地面を蹴って間合いを詰める。速いが、遅い。事前情報では下半身だけ霧に変え高速移動すると聞いていたが、散弾のせいでその辺りが出来なくなっているのか。
それでも猛牛よりも凄まじい突進。エミリアさんが放ったグレネードが直撃し『白魔法』が発動するが、それは分厚い胸筋の表面に小さな火傷を作るだけ。
怯む事無く振り下ろされた大鎌。創作に出てくる物とは違い柄から直線状に伸びた刃が先頭のパウロさんに迫る。
だが、彼は回避行動をとらなかった。
『ッ………!』
伸びる右のサブアーム。それに装着されたシールドが掲げられた。
その盾――魔道具から展開された魔力の壁に大鎌が触れる。だが、あの魔力量では壁の強度などたかが知れている。障子紙の様に引き裂かれるのが予想されるも、しかし魔眼が告げた未来は別のもの。
障壁は大鎌に衝突した瞬間、『弾けた』。壊されたのではない、自分から砕けたのである。
その衝撃で僅かに押し戻される刃。そこへすかさずアルトゥールさんとパウロさんが至近距離から散弾をぶつけ、顔面にジュリアさんの弾丸が叩き込まれる。
これには僅かに怯んだデーモン。だが大小様々な傷を負うも致命傷には至らず、奴は再度大鎌を振るった。
それを彼らは反応できた様子もないのに、パウロさんのサブアームが動く。先ほど使ったのとは別の盾で展開した魔力障壁が弾けた。
リアクティブアーマー……というには些か違和感のあるそれで鎌を防がれたデーモン。奴は苛立ちをこめて咆哮をあげる。
『メ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛――――ッ!!!』
それは精神を揺さぶる魔笛の一種。覚醒者でも『抵抗』の値が低ければ一瞬怯むそれを、しかしアルトゥールさん達は聞き流す。それどころか、エミリアさんが奴の口にグレネードを撃ち込んだ。
口内で炸裂した『白魔法』。とうとうデーモンがよろつきながら後退した。
『ガ、ア、ア……』
そこに次々と放たれる弾丸。『白魔法』の影響で脆くなった頭部に集中するそれらに、デーモンは仰向けに倒れる。
その身体にパウロさんが一発散弾を撃ち込むと、巨体が粒子に変わり始めた。
『Foo!■■■!!』
『■■■■■■!!』
何かのスラングだろうか?アルトゥールさんやジュリアさんが歓声を上げ、パウロさんも少し肩の力を抜きながら消えていくデーモンを警戒。そして、何故かエミリアさんがこちらを見てきた。
違うだろう?
内心でそう呟きながら、駆ける。
『魔力解放』
全力での踏み込みに床が砕けるのを感じながら、接近。彼らの背後に新しく出現したノーブルデーモンの間合いに入った。
下からすくい上げるように振るわれようした大鎌の柄を踏み砕きながら、その脳天にツヴァイヘンダーを叩き込んだ。
ここまで魔力を使ってこなかったし、この先もそこまで使わないだろうと全力で魔力を噴かした一刀。それはあまりにもあっさりとデーモンの命を刈り取る。
『W■■■■!?』
「落ち着いてください。ここはダンジョンです」
驚愕して武器を構えなおすアルトゥールさん達に、努めて優しく声をかける。というか、早口で英語はやめてくれ。マジでわからん。
粒子になって消えていくデーモンに視線を向けながら、剣をまた肩に担いだ。
「勝って兜の緒を締めよ……じゃなくて、ええっと……とりあえず、あまり気を緩めない様にお願いします」
周囲にはもういないな、よし。
あの転移魔法。魔眼持ちや魔法使いなら魔力の流れで前兆を簡単に察知できる。エミリアさんは『金剛』を装備しているせいなのか、わからない様だけど。探知担当のジュリアさんも浮かれて接近に気づけないとは。
油断大敵……とまでは言わないけど、気を付けてほしい。心臓に悪いから。
幸いノーブルデーモンは『C+』ながらレッサーデーモン同様、器用貧乏なモンスターなので比較的弱いものの、慢心していい相手ではない。
そう言外にこめて告げると、アルトゥールさん達は何度も首を縦に振った……のかな?バケツみたいなヘルメットのせいでわかりづらい。
「では、僕とレイラはまた後ろにつきますので。探索を続けてください」
『は、はい。ありがとうございます』
「いえいえ」
前より更に流暢になった日本語で礼を言ってくるアルトゥールさんに軽く会釈し、少し距離をとる。
先の戦闘で消耗したのか、彼らはまた装備の交換を始めた。特にパウロさんはサブアームをジュリアさんに手伝ってもらって丸ごと代えていた。
……やっぱヤバいんじゃないかな、アレ。
いや、自分は『そういうの』に詳しくないし、もしかしたら考えすぎなのかもしれない。何より護衛任務には関係のない疑問である。
* * *
そこからノーブルデーモンに遭遇する事もなく、三十体ほどのレッサーデーモンと交戦。うち二十前後を討伐して帰還用のゲートを発見しストアへと戻って来た。
「おおっ!よく戻って来てくれた!心配していたよ本当に!!」
両手を広げこちらに駆けてくる矢島さん。アルトゥールさん達に軽くハグしていった後、何故か僕にまで抱き着こうとしてきたので謹んでお断りした。
妙に残念そうな彼だが、小さく咳払いして切り替える。
「とにかく!アルトゥール君達は着替えに行ってくれ。整備班が待っている。無事な姿を見せてあげたまえ」
『はい』
疲労の隠しきれない声で応え、アルトゥールさん達が去っていく。
それを見送り、矢島さんがこちらに向き直った。
「それで……君から見てどうだったかね。『金剛二式』は」
「……戦闘能力は、わりと良いと思います」
ぽつぽつと、感想を述べていく。
「先に敵の位置を把握し、間合いを詰めさせずに一方的な銃撃で仕留めるというのはある意味理想的な立ち回りです。接近戦や乱戦になったら、あのサブアームだけじゃ不安ですけど」
「ふむふむ。それで?」
「あとは、短時間とは言え部品の交換や装填で無防備な時間があるのが怖いです。今回はありませんでしたが、四人の内二人が交換中に戦闘になったら危ういかと。ついでにもっと狭いダンジョンだとあの戦闘スタイルは難しいんじゃないですか?」
「ははっ。やはりそう思うか」
「他には……稼働時間、随分と伸びたんですね。部品の交換も腕とか足とか丸ごとやっていたからか、整備とかはいらないみたいでしたし」
「ふははは!そりゃあ筋力アシストに回していた分を稼働時間に振ったからね!中遠距離に絞る分、接近戦は本当に最低限になってしまったが」
そう笑って言った後に、彼は眼鏡を光らせながら首を傾げてきた。
「それで。『一番の問題点』は何だと思う?」
これ、言っていいのだろうか。けど依頼主が求めているし、言い方的に『金剛』を作った彼も自覚があるのだろう。
一拍置いてから、口を開いた。
「あの……今回の探索でいったい『幾らかかったんですか?』」
その問いかけに、矢島さんは笑みを深めた。
読んで頂きありがとうございます。
感想、評価、ブックマーク。いつも励みにさせて頂いております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。




