表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星斬りの剣士  作者: アルト/遥月@【アニメ】補助魔法 10/4配信スタート!
一章 星斬りの憧憬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/76

三十話

 ぴくり、と。

 言葉が言い放たれるが早いか、事切れていた筈の魔物(化け物)の屍骸が微かに震える。


 程なく、真っ二つに斬り裂いた筈の断面から、糸のような細長の何かが一斉に噴き出すように飛び出して瞬く間に、縫合(・・)。凄惨に死臭を振り撒いていた屍骸が元の形へと程なく変貌を遂げる。


「なぁにそんな驚いてるの? 〝屍骸人形(マリオネット)〟だよ? もしかして、人形と糸は切り離せない存在って知らなかった?」


 ……聞くと実際に見るとでは天と地ほどの差があるとはよく言ったもので。

 何も無いところから剣を創造する魔法も大概ではあったけれど、今、俺の目の前で行われている出来事に対する驚愕はその時の数段は上であった。


「じゃ、今からキミは〝ピィちゃん〟って事で」


 びし、とギョロリと虚な瞳を動かす魔物(化け物)だったものに向けて、指差しながらフィオレは命名する。恐らく、ピィと鳴いていたから〝ピィちゃん〟なんだろうが、残念過ぎるネーミングセンスについては触れないで置くことにした。


「それじゃあえっと……」

「ユリウス」

「はい、じゃあユリウス君! 流石に魔物の大群を二人で相手するわけにもいかないし、此処から逃げるんだけど、その右手、ちゃんと使える(・・・・・・・)?」


 どうして、あえてそう尋ねてくるのかと疑問に思うも、それを捨て置いてぐー。ぱー。と手を動かす。

 多少の痺れはあったが十分に使える範疇。


「お。割と元気そう。その様子だと、わたしの心配も杞憂だったみたいだねえ」


 大丈夫だと俺が言う前に、その動作を見詰めていたフィオレが勝手に判断。


 言うが早いか、すっかり修復を終えていた魔物(化け物)の身体へ軽い身のこなしでスタタとフィオレが飛び乗った。


「ほら、時間ないから早く!」


 言われるがまま、彼女に倣うように俺も飛び乗る。魔物(化け物)の背には何重にも束ねられた糸で出来た手綱のようなものが存在しており、どうして手が使えるのか尋ねてきた理由が判明する。


 要するにフィオレは手綱を掴めるかと確認したかったのだろう。


「ちゃんと掴んだ?」

「掴んだ。……あぁ、いや、掴みました」


 最早今更でしかなかったけれど、彼女はフィオレ・アイルバークと名乗っていた。

 つまり————貴族。


「別に敬語とかいいよ。〝ミナウラ(此処)〟じゃ、そんなものクソの役にも立たないし」


 そもそもわたし、そういう堅っ苦しいの嫌いだからね。

 と、口にしてから彼女は「飛んで」と一言。


「さ、しっかり握ってないと振り落とされても知らないよっ!!」


 ばさりばさりと羽ばたきを魔物(化け物)が開始した後————ぐおん、と身体が一気に持っていかれる。


「ま、じか……っ」


 まさかのいきなりの垂直九十度に飛行。

 その勢いによって思わぬ負担が手にかかり、ずきんと痛みが走る。けれど、離せば落下。

 泣き言を溢す余裕すらもない。


「逃げるとは言ったけど、殺せる魔物(ヤツ)は殺せる時に殺しとくってのがわたしの座右の銘でね!!」


 十数秒に渡る垂直の上昇飛行。

 風に負ける事なくフィオレの叫び声が聞こえてくるや否や、続け様「降下!!」と一言。

 直後、ぐるりと上空にて、宙返り。


 そして今度は勢いを乗せた上での降下。

 何処からともなくキィン、と聞き覚えのある独特の音が俺の鼓膜を揺らす。


 それを耳にし、俺はまさかと思ってしまう。


 とはいえ、ギリギリだったのだろう。

 地上には多くの魔物で既に埋め尽くされており、その数は増す一方。

 蠢くその様子に、身の毛がよだつ。


「さ、〝ピィちゃん〟やっちゃって————」


 言葉に従うようにパカリと開かれる魔物(化け物)の顎門。

 刻々と上昇してゆく周囲の温度。


 〝屍骸人形(マリオネット)〟とは聞いていたけれど、そんな事までも出来るのかと。

 驚愕に目を見開かざるを得なかった。


 そしてやって来る————


「————〝火炎纏う咆哮(ファイアブレス)〟」


 ————火炎の奔流。



 視界いっぱいに、ぶわりと一気に紅蓮が広がった。


 程なく聞こえてくる悲鳴。

 なれど、不快さを伴う焼け焦げた臭い共に、その悲鳴は呆気なく消えてゆく。


 ……よく競り勝てたな俺。


 眼前に広がる大火力を前に、思わず今更ながらな感想が胸中にて湧き上がった。


 やがて数秒に渡り、燃やすだけ燃やし尽くしてから二度目の方向転換。


 全てを狩り尽くせてはいなかったが、大部分を殺せたという事でどうやら満足らしい。

 気にした様子は見受けられなかった。


「ところで、ユリウス君はなんで〝ミナウラ〟に?」


 背を向けたまま、フィオレが問い掛けてくる。


「強くなれると思ったから」


 その問いに、俺は即答した。

 言い淀む理由は何処にもなかったから。


「俺にとって、丁度いい壁になってくれると思ったから。俺を更に高次へと押し上げる為の糧が此処には溢れてると思ったから」


 だから、〝ミナウラ〟にやって来たんだと俺は告げる。


 こうして助けて貰ったのだから、そのくらいは言って然るべきだと思った。たとえそれで頭がおかしいなどと笑われる羽目になろうとも。


 ……いや、それでなくとも、笑われて然るべきだろう。実際、たった一体の変異種相手にこのザマなのだから。フィオレがいなかったら今頃どうなってたか。


 ……だというのに。


「へぇ。キミもそう言うんだ(・・・・・・)。面白いね」


 腹を抱えて笑うどころか、まるで俺でない他の誰かも同じような事を言っていたかのようなフィオレの言い草に、少しだけ引っ掛かりを覚える。


「強さに貪欲なのは良いと思うよ。確かに、ユリウス君の言う通り、力を求めるなら〝ミナウラ(此処)〟はうってつけ。強い魔物なんてゴロゴロいるし、それこそ、死闘ってやつが何度も味わえる。キミ達みたいな存在からすれば天国とも言える場所だからねえ」


 〝瘴気〟の濃度が特別濃いとされる〝ミナウラ〟の街の領主だからこそ、か。口にされるその言葉には確かな説得力が伴っていた。


「……実際に、ユリウス君と同類だろう人間がわたしにそう言ってくれたんだ。わたしの妹で、ビエラちゃんって言うんだけどね」


 恐らくそれはビエラ・アイルバークの事だろう。あの冷ややかさを感じさせる態度の裏に、そんな熱を隠していたのかと少しだけ驚いた。


 そんな折。


「ま、今はそれは置いておいて。そんな戦闘狂気質なユリウス君に一つ、提案があるんだけれど」


 力が欲しいと願う。

 星を斬りたいと、俺の記憶の中にのみ存在する技を、一人の男の生涯をカタチとして世に知らしめたい。俺としてはそう願っているだけなので、戦闘狂気質と呼ばれる事について少しだけ納得がいかない部分があった。


 だから、眉根を微かに寄せる。


「わたし達と肩を並べて戦う気はない?」


 そんな歪んだ俺の表情は、その言葉を耳にした瞬間に、一層険しいものへと変わった。


 ……一体どういう事なんだろうかと。


「わたしがユリウス君を助けた理由は、キミには生かす価値があると思ったから。ここで生かしておけば、まだ魔物を殺してくれると思ったから。それは紛れもなく、わたし達の益となる」


 〝ミナウラ〟の領主としては、そこら中に蔓延る魔物を排除するために戦ってくれる存在であれば、誰であれ歓迎であると彼女は言う。


「ただ、キミがビエラちゃんと同類なら、こっち(・・・)の方がそそられるんじゃないかなあと思ってね。あの一撃————〝流れ星〟、だっけ。あれ程の威力を誇る技を持つキミなら、申し分ないしね」


 何より、わたしも死にたくないし、ビエラちゃんを死なせたくはない。だから、戦力は可能な限り増やしておきたいのだと付け加えられる。


「————〝ジャバウォック〟」


 名前が、一つ。


「それが今回、〝ミナウラ〟に出現した魔物の頭の名前なんだけどね、これがまた今までよりも厄介そうなヤツでさあ。ちょっと手こずりそうなんだよね」


 生憎と、フィオレの表情は見えないが、今の彼女の表情ばかりは何となくだが予想はついた。


「だから————、〝ピィちゃん〟を単身で倒したその腕を見込んで頼みがあるんだ。わたし達に交ざって、〝ジャバウォック〟を倒す気はない? ユリウス君」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼2月2日書籍発売ですー!!よろしくお願いします!! ▼


味方が弱すぎて補助魔法に徹していた宮廷魔法師、追放されて最強を目指す2
▼以下、連載中のコミカライズリンクとなりますー!お時間ありましたらぜひ!! ▼


星斬りの剣士
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ