目に楽し、思うて深し、舌に好し。
【用語】
『日本国民法第162条』
:20年間所有の意思をもって平穏に、かつ公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
「お前の者は俺の者」
『日本国民法第126条』
:取消権は追認をすることができる時から5年間行使しないとき時効によって消滅する。
「もう逃げられないぞ♪︎」
『国際連合軍事参謀委員会通達8号』
:国際連合管理域内に置いては米軍軍法と日本国法を準用する。
「作戦上の必要があればこの限りではない」
まず香る。
次に聴く。
更に聞く。
後に知る。
しかして含みて舌に転がす。
〈餌に有らざる料理〉
――――――――――「食事は産業に非ず」なフランス人の一般常識。
【異世界大陸東北部/占領地域/軍政主府/軍政司令部/軍政司令官私室/青龍の貴族】
俺はツイてる、ってことは
――――――――――ツキを実感するほどにツイてない。
そら、殺される機会が無けりゃ、ツイてる必要ないもんな。
山あり谷あり
・・・・・・・・・・よく言ったもんだ。
平面なら起伏を感じまい。
なにごともない人生!
そんな素晴らしい生活ならば、幸運を意識しない。
ツイて無いと殺されてます。
ラッキーだから殺されてない。
それはアンラッキーだろう。
「ドSの上司に殺されるほど可愛がられている件
・・・・・・・・・・アリ!」
ねーよ。
なにごともない人生が夢。
まだ叶ってません。
不思議だな。
「楽しそうですよ♪︎」
もっと愉しくなるべき。
「報われてるじゃん」
ハイリスク・ハイリターン?
そんな馬鹿な夢は観ない。
リスクとリターンは無関係!
努力と成功みたいなもん。
「等価な交換が出来ると思えるとっても幸せなじゃない、とは不幸ですね♪︎」
幸運。
不運。
成功。
失敗。
理由など無い。
ツキがあるかないか。
偶々、ドSに目を付けられ。
徒労の代わりに増える経験。
何故だか異世界に転移して。
故を創って始まる侵略戦争。
運良く最前線送りを逃れて。
運悪く敵地に放り込まれる。
偶々うちの娘たちを拾った。
「必然の戦争で偶然に貴男が拐わなければいなかった娘たち」
ツイてるって有るもんだろう。
面白きこともなき世を面白く。
いやまあ自分の周りだけだが。
在るところには有るんですよ。
逢う。
「創るか見付けるか」
拾う。
「落ちてるんだよなぁ」
奪う。
「奪い方が足りない訴訟」
盗む。
「解ってれば宜しい」
ツイて無い刻こそツキが要る。
要るから手に入る訳じゃない。
山在り谷在りとはよく言った。
言えるのは、在ったからこそ。
殺されたら何も言えやしない。
ゼロサムゲームってそれかな。
「殺されるに値する宝物を所有出来て良かった善かっためでたしめでたし後はおめでただけですね♪︎」
所有する趣味はない。
必要な刻に必要なだけ。
必要な誰かが居ればいい。
「つまり日に24時間必要だから永久に産まれる前から死後も借りてるだけで所有はしてないジャイアン理論」
「?」
魔女っ娘が困ってるでしょ!
「大丈夫です取得時効の先取り」
頷いてる魔女っ娘。
意味は判らず。
意図を解る。
時効が過ぎて俺の者?
生活必需品。
魔女っ娘と料理。
偶々拾った。
セットって凄くない?
「どちらも味わって」
「「「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」」」
うちの娘らを撫でる。
「「「「「「「♪︎」」」」」」」
うちの方々を魅る。
「「「「「!」」」」」
味わいは口に含む前に始まる。
「「「「「「「「「「「「~」」」」」」」」」」」」
「含まれるのはいつか最後まではいつか繰り返しはいつか気に病ませんな!」
で、肉。
「だいたい合ってる肉の認識」
喰いたい物を。
喰いたい刻に。
喰いたいだけ。
「食前酒マジ一口からのあーんタイム」
魔女っ娘が俺に魅せてる魔女っ娘料理の全体像。
鉄鍋、鉄板、大皿に盛られた今朝は肉料理。
王城だから肉料理が中心。
たんぱく質と言えば肉。
魚は有るがとても少ない。
内陸だしね。
いや大陸全体から視たら沿岸部だけど。
沿岸ではない。
海が観える範囲でしか新鮮な魚は食えない。
大河沿い。
住民の食卓に川魚はある。
河魚はない。
食卓、があまり無いか。
都市住民は露店で食べる。
村落では広場で食べる。
民の竈は辻〃に在るもの。
個々に調理してたら場所燃料材料労力の無駄だからな。
そのコストにメリットが出せるのは特権階級だけだ。
――――――――総人口の5%くらい――――――――
個人の概念が生まれるとしたら五百年以上は先。
定着しなくとも言葉が一部に普及するのに千年。
食卓が先進国に一般化したのが、ここ半世紀か。
まあファンタジーには出てこないし、海外に行っても観て視てないから気がつかない。
自分の見知った人類の例外を当たり前にする辺り、人間にとって全宇宙とは、3m以内なんだと実感したのは海外派遣研修中。
だから食卓の在る王城。
魚が上がる刻もある。
魚も大切な食糧です。
繰り返し河魚はない。
居るけど、使わず。
食えるが食わない。
大河の側には都市がある。
生活排水とともに、だ。
水量が多く流れが速いから、生活用水には問題ない、異世界基準。
とはいえ特権階級は使わない。
俺たちも使わない。
水は湧水井戸水で足りている。
飲めない大河の水。
そんな水中生物を食うものか。
貧困層は別だけど。
俺たちには関係も関心もない。
だから魚は沿岸部、沖合いの釣果。
人里離れた川の上流もアリ。
逆に港街では階級問わずに食べる。
保存技術が普及していないから鮮度こそ命。
魔法に氷結はあるけれど魔法使いがいない。
もともと貴重な魔法使い。
帝国以前も宮仕えが大半。
でも市井にも居たらしい。
帝国が赤い瞳の赤子を収集し始めて、十年。
此処では、だから大陸東部ではもっと前に。
竜と魔法を至上とする帝国の世界征服。
魔法使いを全て支配下に置くのは国是。
帝国以外の魔法使いも尊重された。
反帝国諸国で迫害されるくらいに。
魔法使いが市井にいなくなった訳。
親だか反だかで狩られるんだから。
魔女っ娘の御父さんだって、帝国貴族扱い。
帝国に距離を置いたから浮いていたそうな。
魔女っ娘自身は知らない、エルフっ娘の話。
そりゃ魔法使いの氷売りが無くなる訳だよ。
斯くして魚食のハードルアップ。
生食ばかりの話じゃない。
干物にする為にも鮮度が必要なのだ。
風土も大切だけどね。
風があり。
日差しがあり。
塩が沢山。
やっぱり海辺じゃん。
少しでも水辺を離れたらダメ。
釣り場を離れたら足も早い。
いやマジで、命に関わる。
生以外ならあるけどね。
港街に行っても生では食わんけど。
生から焼くから旨いのである。
煮てるのも旨いよ、醤油がなくても。
代用醤油や代用味噌も、それと知っていれば、好し。
もちろん異世界の塩、マジで文字通りに塩化ナトリウム、も旨い。
ミネラル分は何か知らんが解析中。
それに異世界のなんか香辛料を加える煮焼きも美味しいです。
王都暮らしなのに即興で料理する魔女っ娘オールマイティー説。
つまり王都、内陸に運ばれるのは生け簀か塩漬け干物。
生け簀は珍品。
塩漬けは量産品。
干物は格安品。
普通は量産、格安な庶民の御馳走。
そりゃ侵略された皆々様が侵略者の親玉に観える俺の食卓に、出したいとは思わないわな。
日本列島なら塩漬け魚が通貨を勤めた時代もあるのになぁ。
もちろん生け簀は王城にあるが。
内陸では確立してない料理方法。
使う機会と合わせた経験値不足。
なんでも即興で料理できるのは魔女っ娘くらい。
聖都で食べた蒸し焼きは美味しゅうごさいました。
※第十六章「園遊会」より。
とはいえ、干物は好まない、様子。
新鮮な魚が手に入らない刻は使わず。
生け簀の魚もメインには据えない。
今朝は肉。
郷土料理として、この邦にも肉料理は色々とある。
レシピがなくとも魔女っ娘が居ればどうにでもなるか。
むしろ素材。
鶏や獣は家畜と狩猟が半々です。
狩る肉の方が価値があります。
家畜の品種改良が進んでない。
肉質に拘るどころじゃない。
畜産技術も確立されていない。
飼育の方が狩るより手間です。
野生の方が旨くて簡単なのです。
とはいえ特権階級以外は味より供給の安定=値段重視。
占領軍司令官の場合。
王様より恵まれてる。
ツイてるってことだ。
全てエルフっ娘のお手狩り。
お手製ではなく。
お手軽ではあり。
お手とはあれだ。
今朝の朝食は今朝方、狩ってきた。
買ってではなく。
かつてではなく。
奉公人ではなく。
エルフっ娘が、だ。
異世界に限らないが、この大陸で狩りは生活の一部。
漁師はいても猟師はいない。
魚は売れる。
肉は食う。
肉が欲しければ狩りに行く。
王城なら。
太守府なら。
通常、日々の肉は奉公人たちが狩る。
シフト制。
志願制。
手隙の者。
都市では周りに狩場がない。
だから肉屋が狩りに遠征。
肉を売るが成り立つ。
購買層は狩らない都市住民。
まあ、例外的に。
だから肉屋と呼ばれても、猟師とは見なされないから、それを表す言葉が、ない。
肉屋のギルドは大勢力。
毎日出発。
騎乗や馬車を多用。
毎日帰還。
数日狩りして戻る。
ローテーションで数日過ごして毎日出入り。
生物の保存技術の限界。
あまり挑戦したくない。
だが多少はやむを得ず。
不安定な獲得量。
一定の消費量。
差を埋めるのが家畜。
古いか。
劣るか。
都市の肉。
不味いと同義。
風味と解する向きもあり。
まあ、肉を寝かせる、なんて負け惜しみが発達するのは、この先の時代、かも。
・・・・・・・・・・日本の異世界転移で変わるかも。
ともあれまだ変わってない。
だから王様、太守様は城の近くに狩場を設える。
広い森。
流れる川。
立ち入りは厳禁。
エルフっ娘は出入りする。
狩場も帝国資産。
国際連合が接収した戦利品。
立ち入りは禁止。
だからエルフっ娘が使う。
エルフっ娘の狩りは独りで行う。
IFFが無いと狩場に入れない。
もともと狩場には案内や勢子、狩り手には専門の奉公人が居たが。
以前の森番は逃げた。
前太守の家族を逃がす為に、森のベテランが必要だったのだろう。
※第13話〈 あなたのご子息は我々が殺害いたしました。〉より。
今は地雷と自動機銃がお出迎え。
死体の搬出以外に近付く者はいない。
禁を破るまでは人だった。
エルフっ娘にかられる前は生きていた。
大きな魔獣を狩るエルフっ娘。
殺すのは簡単。
肉を取り出すのも簡単。
だけど余り外出したくない。
「離れてると出し抜かれるから」とかなんとか。
だから殺した獲物の回収だけは、城の奉公人たちに任せる。
国際連合軍属なら相応のIFFを持たせているし。
森の外なら参事会の手配りもあり。
魔獣狩りのエルフっ娘。
エルフは森の民。
狩りは大得意。
自慢しないが長耳ピクピク。
まさに、これこそ、食前の味わい。
エルフっ娘の狩り。
エルフは早い。
エルフっ娘は速い。
早起きして、たっぷり時間をとり閨から離れ、時々戻って来て別れを惜しみ、魔女っ娘や俺に口付けしてから素早く装備を整えてダッシュで行って帰って湯浴みしてまた閨に戻る。
狩りより準備が長いような?
・・・・・・・・・・魔女っ娘が朝食の準備に出る刻とおんなじあたり、よく似た義姉妹だ。
「その記録映像を最初に皆と鑑賞させられたときは元凶の胸に顔を埋めてピクピクしてましたよね」
長い耳はパタパタしていたが。
今も。
「繰り返し〃」




